FL22 初恋は音楽 13-3.ライブコンサート/ウード・ユンゲルス

投稿者: | 2023年3月10日

音楽の専門家ウード・ユンゲルスがオリバーに「ブリトニー・スピアーズの音楽でタンゴを踊るカップルは、音楽と一体になることができるのだろうか」と質問しました。はたして、ダンスの専門家オリバーの答えはいかに?

 

目次紹介

“Music Was My First Love”
初恋は音楽

 

13-3.ライブコンサート/ウード・ユンゲルス
 Live in Concert 

 

UDO JURGENS (*30.9.1934)

異なる状況下ではありましたが、私は何度か適切な言葉と音楽による慰めを緊急に必要とする時がありました。そうした時、なんら、迷うことなく、この条件を見事に満たしてくれるミュージシャンに辿り着くことができました。私はすでにウード・ユルゲンスのLPを所有していましたが、どうやらそれまで十分注意を払っていなかったようです。私の記憶では、ウードは50歳の誕生日に合わせてリリースされた最新アルバムの宣伝で、定期的にテレビ出演をしていました。そのアルバムのタイトルは” Hautnah(ハウトナ)” で、英語では “Close Contact” とか “Skin to Skin” の意味です。

そこで、もっと深く聞くようにしました。そして、ウードのレコードを収集し始め、彼がこれまでに録音したほぼすべてが揃うと、私の次の興味は、出来る限り早く、彼のコンサートを見ることに向けられました。たくさん買たウードのカセット・アルバムはウード専用のケースに入れて車の後部座席に置いておきました。それをそのまま、炎天下の駐車場に数時間も放置するとどうなるか、それはすぐに学習しました。全部溶けてしまったからです。それで、レコードで入手できるものをすべて買い、レコードがCDに変わると、CDを買い集めました。それでも買えなかったものは、インターネット出現のお陰で、eBayで買い揃えることができました。

彼がツアーに出ると、私は少なくとも2度は観に行きました。私は仕事関係で日に追われることがしばしばあり、この原稿を書いている2010 年 7 月は、8 月 20 日に兄夫婦と一緒にウードの野外コンサートツアー初演に行くのを楽しみに頑張って書いているところです。それはウードがピアノ伴奏する新しい形のコンサートで、時折ギタリストのフランシス・コレッタ(Francis Coletta)がパートナーを務めます。

 

米国のTV番組 “Dancing with the stars” のドイツ版に”Strictly come dance” があり、その最終回でウード・ユルゲンスがゲスト出演しました。この番組のシリーズを通して演奏担当しているのはペペ・リエンハルト・オーケストラ(Pepe Lienhard Orchestra)で、ウードはその常設伴奏者でしたので、彼の出演は場違いというものではありませんでした。その最終回の夜、私たちはたまたま観客として最前列にいました。

技術的な理由でウードの演奏部分は事前録画し、生放送中に再生する必要がありました。コマーシャル中に、グランドピアノを持ち込み、演奏後に運び出すには十分な時間がなかったからです。ウードがスタジオに現れたとき、彼は単に自分の仕事をして帰るのではなく、彼は聴衆に自己紹介してから、なぜ、事前録音しなければならなかったか、その理由を説明しました。同時に、ペペ・リエンハルト・オーケストラと彼自身の演奏は生であり、録画のプレイバックではないと聴衆に伝えました。こうした彼の個人的なメッセージは人々にとても好感を与えました。彼が演奏したのはヒット曲 ”Ich war noch niemals in New York“(私はニューヨークに行ったことがない)でしたが、”Strictly come dance” シリーズで唯一のスタンディング・オベーションを受けました。

 

アフター・ショーのパーティーでは、会場の両側にビュッフェテーブルが並び、同じ料理が乗っていました。私がゆっくりと左のテーブルの方に移動していると、なんとなく、右側のテーブルに誘導されるのを感じました。それは妻でした。彼女は「右側のテーブルでウードが食べ物をとっているから、そっちの方が良いかも知れないわ」と囁きました。そこに行ったお陰で、私たちは彼に正式に紹介されることになりました。彼は妻の手にキスをして挨拶をしたので、私たちはストレートに感動しました。

 

彼は私たちのダンススポーツにとても興味を持っているようでした。また、この番組の選曲が一部間違っていたのではないかと話したので、そのことについて話し合いました。それは、あるカップルのタンゴ用に使われたブリトニー・スピアーズ(Britney Spears)の音楽とヴィニーズ・ワルツに使われたルーナ(Loona)の魅力的な曲 “Hijo de la Luna“(ヒホ・デ・ラ・ルナ/スペイン語で「月の子」の意味)のことでした。オーケストラの演奏のクオリティには疑いの余地はありませんでしたが、テレビ局の若い重役たちは自分たちが何をしているのかをまったく知らずに、不適切な選曲をしたのです。通常、なんら知識のない人の方が最も賑やかな講義をするようです。ウードはミュージシャンの観点から、そうした選曲に対する懸念を説明してくれたのですが、それは本当に的を得たものでした!

ダンスとしてのタンゴは、伝統音楽から発展しましたし、ヴィニーズ・ワルツのメロディーには、私たちがダンスで見たい大きくスイングを内在している必要があります。彼らが番組で使ったスペインの曲はとても聴き心地が良かったのですが、第一に6/8拍子でしたし、第二に、そこには圧倒する旋律リードがありませんでした。私もウードと同じ考えでしたので、とても楽しく話が出来ました。もうひとつ、彼がしてきた質問は、私には良く理解できました。彼は「ブリトニー・スピアーズの音楽でタンゴを踊るカップルは、音楽と一体になることができるのだろうか」と聞いてきたのです。私の答えは明白です。「なれません!」

 

私がプライベート・ライフで深刻な健康状態にあるときも、仕事面でとても困難な状況にあるときも、ウード・ユルゲンスの音楽は私を慰めてくれました。何を言いたいかと言うと、私のナショナルコーチとしての専門的なアドバイスではうまくいかない状況が幾つもありましたが、そうしたとき、ウードの音楽は思いもよらない道を示してくれたのです。

 

親愛なるウード・ユルゲルス様、
あなたの音楽はどれほど頻繁に私の言葉を補ってくれたことでしょう。”Noch drei Minuten” (意味:あと3 分)は、スポーツマンなら誰でも知っているパフォーマンス最後の瞬間を完璧に表現しています。しかも、これだけでなく、その後リリースされたタイトルも同じです。”Was Dich nicht umbringt gibt Dir neue Kraft zum Leben” (意味:あなたを殺さないものは、あなたに新しい生命力を与える)、“Never give up“、”Was wichtigist” (意味:何が重要か)、”Nurdie Sieger steh’n im Licht” (勝者だけが脚光を浴びる)など、こうした曲のお陰で、私はエネルギーを蓄積したり、感情を解放したり鼓舞したりすることができました。ダンサーたちも私も、感情がこみ上げたくさん泣きました。こうしたことができたのは他の誰でもありません、あなただけです!

あなたはスーパースターとファンではなく、高学歴で素晴らしい意見を持つ男としてでもなく、一人の人間として私に話しかけてくださいました。親愛なるウード・ユルゲンス、もう一度ありがとう

 

  

 


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