#036 「未来につながるビジョン」フランコ・フォーミカ

投稿者: | 2020年11月18日

2010年Dance Wing53号の「海外選手レポート」からフランコの寄稿を紹介します。

 

‘未来につながるビジョン’

ダンスウイングに競技選手の記事を掲載する機会を設けて下さったことを大変嬉しく思います。

 

私がダンスを始めたばかりの頃、もう20年以上前のことですが、私にはダンスという道がどういう未来につながるのかわかりませんでした。子供の私にとって“踊る”ということは、単に音楽に合わせて好きなように動いたり、踊りを見てもらうことで、それが楽しかったのです。

 

1988年の初めての競技会。私は会場に向かいながら、観客の前でダンスを披露するという初めての体験に、それまでに感じた事が無い程、 すっかり緊張していたことを覚えています。でも、踊りを終えた後の私は、どうしてもフロアを離れたくないとさえ思っていました。

 

ダンス人生を歩むにつれ、成功、名声、責任が付いてくるようになりました。それに加えて“期待”というものも。この期待というのは、 自分に対する期待です。私の経験上、自分の期待は周囲からの期待よりも大きいものです。これの良い点は、“私はこういう風に踊るんだ”というビジョンを強く動機づけていくことができる点です。 一方、欠点としては、期待が大きすぎるが故に力が及ばず、自分自身が最悪のライバルになってしまうこともあるかもしれません。

 

あなたのダンスがこうあるべきだ、という理想のビジョンはいつもあなたの中から生まれるのです。 1988年の初めての競技会の時を振り返ってみても、既にぼんやりながらも持っていた当時のビジョンが今の私のビジョンにつながっているのだと思います。

 

 ― 基本的な理解、技術、動き方、 音楽、メンタル等のそれぞれのスキル、演技をする際に必要とされる自信や競技上の技量 ― 私たちが長年の経験や練習によって培ってきたこれらの要素がビジョンなのではありません。これらは、ビジョンを支えているものなのです。私が考えるビジョンとは、とても個人的なもので、それは上手さとかスキルとかではありません。ビジョンは、あなたがダンスを通じて伝えたい、あなたの中に秘められている何かなのです。

 

し素晴らしいダンサーになりたいのならば、ビジョンを持つことはとても重要です。それは将来を見通すことができる人間になることです。つまり、自分の人生の軌跡に何かを残したい、という強い意志を持つことを意味しているのです。いかなる人生にも浮き沈みがあるように、ダンサーとしてのキャリアを築くのは決して簡単なことではありませんが、私はダンス人生を歩むという素晴らしい特権に恵まれたことに感謝しています。

 

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ここをクリックするとフランコの記事と、この号で一緒に掲載されたドーメン・クラペッツ&モニカ・ニグロの記事をPDFで読むことができます(日本と英語)。

■トップページ「About → 歩み」には、この記事以外にも多数の記事が収録されています。

 

ハッピー・ダンシング!