質問53 ノー・フット・ライズが分かりません

投稿者: | 2020年6月10日

恥ずかしいのですが、いまだにノー・フット・ライズが分かりません。またこの動作にどういった意味、役割があるのですか? (東京都 女性 )

 

今まで個人的に、あるいはダンスファン誌を通じて多くの質問を頂きました。中にはとても初級レベルのものもありましたが、初心者にしてみると切実な疑問や質問に違いありません。そこで、頂いた質問のレベルで選別することなく記録に残します。お役に立てばうれしいです。なお、回答には現時点の考えに書き直していることもあります。

 

 

❶ワルツでは…

「サークルで上達するボールルーム・ダンス」から「グレードアップするために(その2) (内回りの)ノー・フット・ライズはどう踊るの?」に足型図を入れて再投稿します。

 

◇ ◇ ◇

 

女性はワルツにおけるナチュラル・ターン最初の3歩を、男性の足型図と比較してみると大きな違いに気づかれることでしょう。

 

その違いは、第1に、2歩目がLODの方向に向いてしまっていることです。従って、男性のようには1歩目と2歩目が平行になっていません。この点は「グレードアップするために(その1) 回転量の得方」で触れていますので省略します。

 

第2に、1歩目の所に何やら☆印が付けられていますが何のことでしょう? 実はこれこそ、「もっと上手になりたい」と切望しているあなたが絶対に身につけねばならない基礎技術のひとつです。☆印は足型図の中で「NFR(ノー・フット・ライズ)」の場所に付けました。

 

ノー・フット・ライズは直訳すると「足のライズはない」と言うことで、言い換えると「トウに上がってのライズはしません」と言うことです。そして内回りにおける回転では、ヒールで送ることもありません。

 

ワルツの女性のナチュラル・ターン前半を例に取ると、踊り方は次のようになります。

①1歩目をトウ、ヒールの順に使って普通に後退します。

②1歩目の状態(トウもヒールも床に着いた)のままで2歩目を振り出し、まずポイントします。体重はまだ1歩目に残っています。この時の開いた足の形は足型図を見てください。

③それからポイントした2歩目に徐々にライズして行きながら1歩目を寄せてきます。その時、1歩目トウで床を押してライズしようとしたり、ヒールで送ったりせず、《トウを床の上を滑らせながら寄せる》ようにします。

 

これが内回りにおけるノー・フット・ライズの踊り方です。この処理をすることにより、二人の回転軸をずらすことなく、かつ、外回りの人と丁度良いタイミングで回転を終わらせることができます。ここをきちんと処理できる人とできない人とでは踊りの質に雲泥の差が出て来ますから、「上手になりたい人」はこの研究を怠らないでください。

 

ちなみに、ノー・フット・ライズを使わないとどうなるかと言うと:

・内回りの人は、ヒールで送ってから2歩目をポイントする。 (その結果、外回りの人は希望の2歩目の位置より遠くに飛ばされます。)

・内回りの人は、2歩目をポイントしてからヒールで送る。(その結果、外回りの人はポイントした2歩目に立とうとしても、更に外側に流されてしまいます。)

・内回りの人は、トウでライズしながら2歩目をポイントする。(その結果、外回りの人は2歩目に出る運動を妨げられてしまいます。)

 

男性の内回り回転にもノー・フット・ライズは当然ありますよ! (注)回転を伴わないNFR(男性のアウトサイド・チェンジ1歩目やスローに於けるNFR)ではボディー・ライズして行く中で次の足へとヒールで送ります。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

❷実験が大切

上に「ノー・フット・ライズを使わないとどうなるか」を書きましたが、この「使わない」ケースを意図的に試し、踊りにくいと感じることが大切です。決まったパートナーがいれば、「ヒールやトウで送る」実験をし、お互いにどう感じたかを話し合うと良いでしょう。パートナーがいない人や「実験させて」と言いずらい環境にある人は、フリーでワルツを踊りながら、密かに

  1. 「ヒールで送ってから2歩目をポイントする」
  2. 「2歩目をポイントしてからヒールで送る」
  3. 「トウでライズしながら2歩目をポイントする」

の3通りを試し、自分がどのように踊りにくいかを観察しましょう。同時に、相手がどのように感じているかも探ってみましょう。

 

その実験をした上で、

  • 「ポイントした2歩目に徐々にライズして行きながら、1歩目トウを床の上を滑らせながら2歩目に寄せる」

踊り方をし、自分がどのように踊りやすくなったかを観察します。もちろん、相手のことも観察しましょう。きっと、「さっきまでより、踊りやすくなっている」と思っていることが感じられるでしょう。

ワルツのナチュラル・ターンやリバース・ターンで練習すると、他の回転運動の場所でも自然にできるようになっていくでしょう。

 

 

❷足型図でチェック!

因みに、拙書「サークルで上達するボールルーム・ダンス」と「足型図でうまくなるダンス」では、ノー・フット・ライズの場所に(☆マーク)を入れてあります。いろんな足型図を見て、(☆マーク)がついている個所を調べてみるのも勉強になるでしょう。

 

 

❸ノー・フット・ライズの意味・役割

最後になりましたが、ノー・フット・ライズは意味は、「ライズしてくる相手の動きを邪魔することなく、そのライズに自分を合わせる」ことではないかと思います。そこで、踊りながらこう考えてはどうでしょう?

 

  • 「相手はライズ(フット・ライズ)してくるから、ボディの縦ずれを起こさないようにしよう」
  • → 「でも、自分もフット・ライズをすると相手の動きを止めてしまう。どうしよう…。」
  • → 「そうだ。体重を乗せている足の上で上体と膝のライズをして対応しよう」。

 

ハッピー・ダンシング!