KD22 北国ダンサー物語 3章第5話 1月末の様子

投稿者: | 2023年12月5日

 

3章第5話 1月末の様子

 

 新年会が終わり、「今日も寒いね」、「なまら、しばれるね」と会話を交わしているうちに1月も終わりとなりました。この間、サークルではブルース、ワルツ、タンゴ、ルンバ、チャチャチャなどの、パーティーで楽しめる程度の基本のステップをしてきましたが、所詮、本格的に習い始めてから、まだ半年ちょいなので、みんなフーフーしています。

 そんな1月最後の練習日に、玲子ちゃんがお友達を連れて来てくれました。

 

玲 子: みなさんも知っている中川良子さんです。あれ? 良子ちゃんはG組だったよね。

良 子: そうよ。

 

玲 子: ま、それはどうでもいいっか。良子ちゃんが、サークルに入って一緒にイギリスに連れてって欲しいんですって。彼女、ハンドボール部だったので運動神経いいのは保証します。

寿 美: あらー、参加して下さって、ありがとうございます。運動神経のいい人、大歓迎よ。

 

良 子: ありがとうございます!社交ダンスはやったことありませんが、必死に覚えますのでよろしくお願いします!

 

  全員が拍手で入会を歓迎。これで男性8名、女性9名になったと思ったら、そうは問屋が卸しませんでした。

 

恵 美: あのー、すみません。家の旦那、行かれません。ほら、あんたも説明しな。

佐 藤: あのー、息子たちの店の手伝いがあるもので、自分としてはとても残念ですが、行かれません。けど、恵美には行ってもらいますので,彼女のこと、よろしくお願いします。

 

千 葉: 了解しました。家庭や仕事が優先です。他に無理な人いませんか?文ちゃんは仕事だから無理でしょ?

文 次: そんなことありません! 俺、絶対有休取ります。悠里も連れてけって言ってるし。な。

悠 里: 人生初めての海外旅行になるし、それを皆と行けるなんて、こんな素敵なチャンスは二度とないと思うので、絶対有給取らせます!

 

  笑いが起きたところで、もう一人、発言しました。

 

幸 子: 私、行かれなくて…

ミッチ: えええー! なんでさー!

 

 ミッチの驚きの大きさで、事前に何も知らされていなかったことが分かります。やはり、ミッチの片思いなのでしょうか…?

 

幸 子: 私も行きたいんですけど、丁度フランスの市民マラソンにぶつかっているんです。

全 員: ええええー! なにそれ!!

 

美 和: 幸ちゃん、走ってるって言ってたけど、ジョギングじゃなかったの? どの位、走るの?

幸 子: フルマラソン。

 

 再び、あっちからもこっちからも驚きの声が上がりました。今日もしっかり見学を決めている公民館長さんは、思わず椅子から立ち上がって驚いています。

 

幸 子: いつか海外で走るのが夢だったし、学校時代からフランスには行ってみたいと思っていたんです。走ってる仲間と去年から、貯金して行こうって決めていたんです。それで、来年の5月中頃からヨーロッパ旅行して、それからフランスに入り、走ってきます!でもそれまでは、フォーメーションの練習には参加させてください。誰か休んだ所に入りますから。

 

                幸ちゃんの歳を忘れて若く描いてしまいました(汗)。

 

 

寿 美: 勿論、フォーメーションの練習は一緒にしましょう! フランスの市民マラソンは夢なんだから是非実現してね。応援するわ! 道明さん、心からお悔やみ申し上げます。

ミッチ: ぼく…、僕、泣かないで幸ちゃんの分も頑張ります。

寿 美: まずは自分のパートを宜しくね。

 

 容赦ないこの一言に笑いが起き、ミッチの涙が引っ込んでしまいました。すると、今度は、昭ちゃんが話し出しました。

 

昭 二: 俺も、親父が死んじゃって、お袋が心配だから、だめなんだ…。

千 葉: そっか、そうだよね…。昭ちゃんは暮れのフォーメーションに出られなかったから一緒に行きたかったけど、お母さんのことがあるから仕方ないよね。

 

寿 美: 家族や仕事が一番。私たちのダンスは所詮遊びですから。でも、昭ちゃんも一緒にフォーメーションを覚えてね。日本で披露する機会を絶対見つけるから、そこで踊りましょうね!

 行かれない佐藤さんも、幸ちゃんも、昭ちゃんも明るく頷くと、他の人たちから「3人の分楽しんでくるね。お土産買ってくるからね!」との声が上がりました。

 

千 葉: じゃあ確認するけど、行けるのは男性6名、女性8名だね。

 

男性:①藤井聡 ②樋山文次 ③内山康夫 ④加藤政明 ⑤山辺道夫 ⑥河合義昭

女性:①藤井佳純 ②佐藤恵美 ③樋山悠里 ④内山玲子 ⑤渋沢美和 ⑥竹本美樹 ⑦上杉純子 ⑧中川良子

 

さとし: 前みたく8組にならないけど、大丈夫か?

千 葉: ん? この人数で変形フォーメーション考えるさ。

千葉ちゃんは真剣な顔で答えました。

 

寿 美: 振り付けがかなり重要になるわねー。よーし、頼んだわよ!

千 葉: おいおい、一緒に考えるでしょうに。

 

寿 美: 私はビシビシ教える役。振り付けはあんたに任せた!

千 葉: ゲゲゲの鬼太郎だな。

 

文 次: そしたら、今後の予定はどうなるんですか?

 

千 葉: 飛行機代、ホテル代などおおまかな旅費を調べて知らせるね。飛行機の予約はもう少し先でいいけど、その前にパスポートの準備は必要だね。予約に必要な筈だから。それから、ブラックプールのホテルは1年前から埋まり始めるので、もう少ししたら僕が仮予約します。マンチェスターからブラックプールまでは電車で移動も可能だけど、バンを予約して迎えに来てもらうのが安心かなと思っています。

 

ヤ ス: 宜しく頼むな。肝心のフォーメーションの方は?

千 葉: フォーメーションの音楽は、頑張ってひと月くらいで作るようにするけど、それをするにも、漠然とでもフォーメーションのアイディアがないとできないので ―― まあ、とにかく頑張るわ。そして、アイディアの湧いたところから部分練習することになると思うので、よろしくお願い致します。

 

玲 子: フォーメーションの全体像が見えたら、みんなで衣装を探すなり作るなりしましょう。作る場合は任せて!

寿 美: うわっ、玲子ちゃん洋裁できるの?頼もしいわ!

玲 子: いえ、私はからっきし。でも良子ちゃんができるから大丈夫!

 

 大笑いが起きたところで、レッスンに移りました。館長さんもニマニマしながら座り直したところを見ると、もう少し偵察をしていくようです。

 

「北国ダンサー物語」(作:神元 誠)

 

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