MA67 更にうまくなる20の話(その4)「肘」は曲者

投稿者: | 2020年11月17日

拙書「社交ダンスがもっと好きになる魔法の言葉」の続編として、「読むだけでダンスが上手くなれば儲けもの」、そんな話を書いていこうと思います。当然、サークルレベルの話です。

 

魔法の言葉 Part 2
MA67 更にうまくなる20の話(その4)
「肘」は曲者

 

◇ ◇ ◇

 

今回は、

 「肘の力を入れないで踊ってみて」

というお話です。スタンダードにもラテンにも共通しますが、この記事ではルンバを例にお話ししていきます。

 

フリーで踊っているときに、相手に「押さないで」などと注文を付ける失礼な人はいないと思いますが、何かの目的に向かって二人、あるいは、仲間と練習している場面なら、「押さないで」とか「押してこないで」の会話が出てくることは十分考えられます。

 

例えば、ルンバのオープン・ヒップ・ツイストを踊り始める場合、女性は予備歩や1歩目で男性に「押される」と感じることがありますし、男性は3歩目で女性が「押してくる」と感じることもあります。ところが、とても踊りやすい人は、同じステップをしていても「押してきません」。どこに違いがあるのでしょう?

 

 

■「押す」と「圧縮」の違いを体感

「押す」は英語で言うところの「プッシュ(Push)」に当たりますが、「押さないで近寄ってくる(あまりうまい表現ではありませんが)」は「圧縮」で、英語では「コンプレス(Compress)」の用語が使われます。その「押す」と「圧縮」の違いを実感できる実験をしてみましょう。

 

 

=実験=

 

1.壁からほんの少し離れたところで立ち、両手の指で軽く壁に触れます。

2.そこから、壁に顔が近づくまで寄り掛かかっていきます(足は動かしません)。

 

この実験をした後で、寄り掛かかっていったときの自分の体の使い方を思い出してください。あなたの体の使い方は、下の二つのパターンのどちらかだったのではないでしょうか?

 

①パターン1:
腕の力が抜けていると顔から壁にぶつかってしまうので、腕に力を入れ、徐々に壁に寄り掛かった。

 

②パターン2:
フワーッと壁に寄り掛かり、鼻先まで近づけた。

 

パターン1の人は、壁にはぶつからないよう、壁を押し、壁に反発しながら寄り掛かっていきませんでしたか? ルンバでこれをやると、相手押すことになります。「相手を押す」は「近づくのを拒否する」と同じことになります。

 

パターン2の人は、腕を上手に使っていたのだと思います。きっと鼻先まで壁に近づいても怖くなかったことでしょう。この方法を使って踊ると、軟らかく弾力性のあるルンバになります。

 

 

■「肘に力を入れない」をやってみよう

私は二つのパターンの大きな違いは「肘」にある考えています(他にも、指、手首、肩の可動部分が考えられますが)。腕を上手に使える人は、肘の使い方が上手なのです。つまり、動きに合わせて肘の角度を柔軟に変化させているのです。

 

「肘」の力を最小限にすることを考えながら壁に寄り掛かっていくと、肘と「体の中」が一体である必要が分かってきます。すなわち、木の幹と枝の関係と同じく、肘を独立したものとしてではなく、体内から生える体の一部として考えると、最小限の力で壁に寄り掛かることができると分かってきます。

 

その結果は「壁を受け入れ、壁とひとつになった」ともいえます。それをルンバで使用すると、相手を受け入れ、相手とひとつの踊りをするのですから、踊っていても、見ていても良い感じになることは間違いありません。

 

肘にかかる力と角度を上手に調整しながら、常に体の中の力と同じであるようにしてみてください。きっと、相手を押すことなく、より軽やかに踊ることができるでしょう。

 

 

「肘」は曲者。
無意識のうちに肘に力が入ります。
「手」をあげるときも、上がるときも、
「肘」の力を抜いてみましょう。

 

 

ハッピー・ダンシング!