IL06 第3章 君の足は大丈夫?

投稿者: | 2020年4月25日

「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」(白夜書房/神元誠・久子翻訳/2011年)を公開します。原書は2009年に英国のDSI社から出版された”THE IRVINE LEGACY” (Oliver Wessel-Therhorn)です。

 

目次

書籍「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」

 

 

 

第3章 君の足は大丈夫?
Any Good With Your Feet?

 

足を使っていないダンサーはタイヤのない車のようなものです。どういうフットワークをどう使うかという事はそれ程大切なことですから、かなり真剣に取り組まなければなりません。フットワークとは、体の垂直ライン上のウェイトが足の大きさの上を通過して行くときの足の使い方のことです。フットワークをきちんと使えるようにするには、足の裏を完全にリラックスさせておく必要があります。足裏の筋肉が緊張しているようだと、体重を吸収することができず、あなたのために機能してくれないことになります。換言すれば、

 

“リラックスした足でのみ、良いフットワークが可能である!”

 

 

 

― 歩き方を学ぶ ― 

ボールルーム・ダンスは踊るような形で歩くことから成り立っていますので、ダンスが上手になるには歩きかたを学ばなくてはなりません。では、どうすれば良い歩き方ができるようになるのでしょう。

 

まず、スタンディング・レッグに立ち、ボディの下に長くぶらさがっているムービング・レッグを前後に振る練習をしましょう。この練習をすると、後ろから来る足がどのような順序でフロアに着くかが分かります。最初にトウがフロアに触れ、ボールになり、次に足裏全体がフロアに着いて、その状態はムービング・レッグがスタンディング・レッグを通過するまで続きます。

 

“親指を後ろへ振り上げろ。そうしたら、振り上げた親指を下ろせ!”

 

 

スタンディング・レッグを通り過ぎた足はそのまま前方に行き、最後にヒールのみがフロアに触れています。まさにこの瞬間にスタンディング・レッグのヒールがフロアから離れ、そしてムービング・レッグのボールがフロアに着きます。このルールを次のように覚えておきましょう。

 

“ムービング・フットはできる限り長くフラットでフロアに接し続けている事”

 

その間、スタンディング・フットの親指はフロアに対してずっとプレスし続けています! 更に、その親指をできる限り長く使ってボディを前進させます。そうすることで、音楽を目一杯使うことができ、美しいリズムを表現するためのコントロールの効いた、最大の動きが生み出されます。

 

1歩とは、両足が揃った所からスタートし、片足が前進、あるいは、後退して体重移動が行なわれ、もう片方の足が再び揃う所までと考えましょう。この1歩をある程度のスピードで行なうと、スタンディング・フットのボールやトウに大きなプレッシャーが掛かりますが、それはバランスを崩さずに止まるために必要なことです。そうした正しい歩き方のテクニックが使えるようになると、それは、次のスイングに入る段階に来たことを意味しています。スロー・フォックストロットを上手に踊るには、連続したウォークの中で自然な体重移動が感じられるようになることです。それができるようになると、それがスロー・フォックストロットに欠かせないベルベットのようなソフトな動きを創りだすのです。

 

当然ながら、この練習法は後退にも使えます。ムービング・レッグは最大限に後ろに伸ばして使います。フラットの形からスタートし、ボールがフロアを擦りながら後ろに動いて行き、最後にトウになります。このボールからトウに変わるとき、フリック・アクションを使って足首を“クッ”と伸ばして使うと、より安定したウェイトの移動を行うことができます。もう一つ大切な事があります。それば、ムービング・レッグは骨盤の下を通過するということです。骨盤を外れた所で行なうと安定を失い、バランスを崩してしまうからですが、そうなると、何とかしようと筋肉が頑張る結果、効率的な動きができなくなってしまいます。

 

 

フットワークがトウからトウのステップの場合は、体重移動を行なう前にムービング・フットの足首を伸ばします。そうするとソフトな体重移動が可能になります。このとき、ムービング・フットの足首の方がスタンディング・フットの足首よりも少し高い位置にあります。こうしたトウから出て行くステップでは足の親指がフロアをポイントしながら出て行きます。アウトサイドに出るステップでは、膝から下を伸ばしてアウトサイドに出て行き、フロアをポイントしている足で歩幅が決まります。この歩くテクニックの重要性を決して見くびってはなりません。パワーのある高級車にはそれに相応しいタイヤが必要で、そうしたタイヤでなければ、車に集結された技術のクオリティーを路面に伝えることができないからです。

 

“足を使わずしてフライトはない!”

 

私たちの足も同じです。きちんとした教育を受け、絶え間なく訓練され続けていなければ、優秀なダンサーに見る質の高い、スムーズなムーブメントは望むべくもありません。たまたま良いムーブメントができて上手なダンサーになるわけではありません。どのようなムーブメントをするか、どのようなスピードで踊るか、そうしたこと総てがダンサーに委ねられているのですから、足の使い方を勉強し、訓練することが絶対不可欠の条件なのです。ビルが私に課した宿題は、「どの練習も必ずウォークから始めること。前進、後退を一人で、そして、それを二人で練習すること」でした。

 

車の話に戻りますが、タイヤはいつでも車体の同じ所に付いています。前に2つと後ろに2つ。右側に2つと左側に2つと言っても構いませんが、ハイウェイを走っているときに、後輪の一つが突然外れて前を走って行ってしまう、そんなドタバタ映画や漫画みたいな事があっては致命的です。しかし、笑ってはいられません。殆どの人達はそのように踊っているのですから。タイヤ(脚部)が先に行ってしまうのです。まるで偵察隊のように、そして、上手くいけばボディが着いて来るだろうと言わんばかりに。自分ではきちんとアウトサイドに出たつもりがパートナーの足に当たり痛い思いをしたり、させたりすることがありますが、それは足の勢いがありすぎるからです。こうした時のボディ・ウェイトは常に両足の間になくてはなりません(通常のステップでの体重移動ではそうではありませんが)。もし、ムーブメントの距離を伸ばしたいなら、できるだけ長い時間スタンディング・フットを使うことです。スイングを起すには、正しい位置に足がなくてはなりません。なぜなら、ボディ・スイングは足の向いている方向にしか行なわれないからです! 1歩目の足がターン・インしていたりターン・アウトしていたりすると、回転は起こるかも知れませんが、スイングのムーブメントを起す事はできません。

 

 

― ライズ・アンド・フォール時の足の順序 ― 

解剖学的に正しい動きの原理を知識として持っておく事はとても重要です。ダンスの基本形としては、脚部はボディの下に長くぶら下げておき、両膝を軽く緩めて両足ヒールをフロアにつけます。この形を便宜上「レベル0」と呼びましょう。ここから両膝が緩んでロアーした所が「レベル -1」で、スタンディング・フットのヒールはフロアに触れています! ここから「レベル +1」になるには、両膝を力まずに伸ばして「レベル0」になり、そこから両足ヒールがフロアから離れて「レベル +1」のライズになります。両膝が緩み、かつ、両足がトウという状態はあり得ないのです! この上なく踊りにくい形ですし、脚部にとっても健全ではありません。

 

 

 

 

― ヒール・プルの方法 ― 

フットワークの極みは、何と言ってもヒール・プルするステップでしょう。では、ビルが残した、この珠玉のステップの攻略法をご紹介しましょう。

 

「左足後退をします。その順序は、最初にボールがフロアを触れながらさがり、次にトウ、それから再びボールになってから左足のヒールがフロアにおります。そこから右回転を始めながら右足を左足にゆっくり引き寄せますが、その時の右足はヒールをフロアに接したまま引き、そこからインサイド・エッジ・オブ・フットになります。両足が(約10センチ離れて)平行になったとき、左足を右に約3/8回転させて回転を完了させます。

 

男性がヒール・プルするとき、女性の回転は始めの2歩間で完了します。この例外的な外回り回転の仕方をする理由は、男性がヒール・プルで女性の左足がLODを越えるようにリードしているからです。そのため、最初の2歩で女性の回転は完了するのです(しかし、クイックステップのヒール・プルでは、音楽が早いためそうなりません)」 

 

 

訳者のノート

例外的な外回り回転の仕方:通常の外回りは1~2歩間と2~3歩間の2回で回転が完了し、内回りは1~2歩間で回転が完了しますが、ヒール・プルでは外回りする女性も内回りする男性と同じ1~2歩間で回転が完了する「例外的な」動きをします。

 

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