IL07 第3章「君の足は大丈夫?」を更に詳しく

投稿者: | 2020年4月26日

「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」(白夜書房/神元誠・久子翻訳/2011年)を公開します。原書は2009年に英国のDSI社から出版された”THE IRVINE LEGACY” (Oliver Wessel-Therhorn)です。

 

目次

書籍「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」

 

 

 

第3章「君の足は大丈夫?」を更に詳しく
How the Feet Work

 

 

 

― 足関節の構造 ― 

構造上の見地から見てみましょう。膝から下にある脛骨(Ti)と腓骨(F)は下の方に行くと、ある種フォークのような形になっており、このフォークが距骨(Ta)を両脇から挟んでいます。先に、足首には二つの関節があると書きましたが、これら3つの骨が、二つの足関節の内の上の方にある関節をなし、つま先が曲がること(背屈)や足裏が曲がること(底屈)を可能にしています。背屈とは、膝の向いている方向につま先を持っていく動きで、ダンスでは足を曲げるという表現になります。

 

 

足裏の底屈は、ダンスではつま先を伸ばすという表現になりますが、これは、フロアに対してつま先をおろす背屈とは反対の動きになります。この時の動きの軸(A)は足首の外側から内側へと移動します。

 

大雑把に言うと、距骨(Ta)は二つの大きな骨(踵骨と踵骨滑車)の上に乗っていて、この距骨と後ろに突き出て踵をなしている踵骨(Ca)とで下の足関節(1)をなしています。この足関節の前方では、距骨(Ta)と舟状骨(N)の結合部(2)と、踵骨(Ca)と立方骨(Cu)の結合部(3)が合わさっています。

 

そうした結合部における軸の動きは、上の方の足関節よりもずっと複雑です。下の方の足関節の動きは外側から始まり、僅かに上の方へ移動しながら親指の方に抜けて行きます。軸の周りで起こる動きの始まりを見てみると、足のインサイド・エッジが持ち上がると同時に、足のアウトサイド・エッジがおりる(回外)というアクションが起きています。当然ながら、その反対運動は、足のインサイド・エッジがおりるとヒールのアウトサイド・エッジが上がる(回内)アクションです。

 

 

 

 

 

― 足関節の動きの軸 ― 

これまで述べてきたことに付け加えたいことがあります。それは、足の全体像としてはねじれた格好になっていると言うことです。立って、右足を自分の前に出しましょう。その右足を内側からみると、足の親指は自分の方にあります。その親指を上から左手で、そして、ヒールを右手で捕まえてください。ヒールからつま先に抜けていく縦軸を見るには、左手で足を反時計回り(自分の方に)に回し、右手で反時計回り(自分から遠ざけるように)に回すと、典型的な足の甲の丸みが出てきます。(図16)

 

この非常に複雑なシステムのどの部分を、ダンサーは最大限に活用すべきだと思いますか?

 

上下の足関節を動かすすべての筋肉は、二つの関節を覆っていますので、足にある二つの回転軸の機能は、その筋肉を使う順番で決定づけられます。そこには自然な動きが伴うのですが、もし足を底屈すると(即ち、足を伸ばしてトウをフロアの方に向けること。)、その時には必ず回外が起きます。つまり、足のインサイド・エッジが持ち上がるのです。その理由は、足裏の底屈に関わる下肢の強い筋肉が働くからなのですが、あいにくそれは、下の足関節も回外させます。

 

もしこれを “フリーな状態” の足とするなら、皆さんご存知の、バナナ足(足裏がしっかりアーチを描く形)になってしまいます。しかし、これは私たちがダンスでやりたい形ではありません。そこで私たちがしなければいけないことは、上の方の足関節の底屈に関わり、同時に下の足関節の回内(足のアウトサイド・エッジが上がる)に関わっている筋肉の総てを目一杯に使って、望ましくない足の動きにならないよう帳消しを図るわけです。

 

 

 

 

 

― 足の底屈と背屈 ― 

では、スタンディング・レッグのように、フロアについている足を観察してみましょう。スタンディング・レッグの足裏の後ろから前の方につくられる底屈が原因で、体重はアウトサイド・エッジにかかります。しかし、これもダンスではやりたくないことなので、筋肉(腿にある内転筋)を使って、体重を足のインサイド・エッジ側に戻すようにしなければなりません。すなわち、前進運動では親指を十分に使いこなさなければならないことが分かります。

 

よりよく理解するには、底屈の反対の動き、すなわち、背屈も見ていく必要があります。もし足を背屈させると(つま先が膝の方に向けて上がること)、回内(足のアウトサイド・エッジが持ち上がる)の動きも起こります。ですが、この背屈と回内の組み合わせは、スタンディング・フットでしっかりフロアにいようとする際には役に立ちません。なぜなら、なにもしなくても、体重を通して底屈が起きますから、あまり考える必要はありません。スタンディング・フットではない自由な方の足も大した問題ではありません。なぜなら、ボールルーム・ダンスでもラテン・ダンスでも、足首を曲げた形を作りたいということはありませんから。

 

要約すると、私たちが希望するような動きや見せ方をするためには、ボールルームであれラテン・アメリカンであれ、特別な筋肉を強化して足や脚部が備える自然な機能を抑制しなくてはならない訳ですが、足や脚部の構造を学ぶことでそういう事が分かってきます。特別な筋肉とは正確には、腿にある内転筋と腓骨筋群を指します。

 

 

 

 

― ボディ・ウェイトの流れ ― 

 

足の構造に関して、もう一つダンサーが知っておくべき大切なことがあります。それは前進運動する際の、足の上を通過するバランス・ラインのことです。

 

前進の1歩を踏み出したとき、バランス・ラインは、図19に示すように、ヒールのアウトサイド・エッジ(1)からスタートし、足中ほどのアウトサイド・エッジ(2)へ移ります。そして図に示すように斜めの軌道を描いて、土踏まずに沿って親指の拇指球の内側(3)へと移動し、最終的には親指と中指の間(4)に抜けて行きます。

 

こうしたバランス・ラインの流れがきちんと起こるようにするには、絶対条件として、足に着いている複数の小さな筋肉をリラックスさせることが必要です。そうすると、脂肪と土踏まずのクッションを伴いながら、足の機能が積極的に使われ、上に述べたバランス・ライン上をボディ・ウェイトが通過して行くことができるのです。

 

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