2章第3話 新しい仲間が加わった
旭川の帰りも「スピードか死か」のカーブを難なくスピードで切り抜けた連中が夜の公民館に集合しました。
千 葉: 半年限定コースを始めます。先日、突然家の中に郵便配達の人が現れる事件がありましたが、その人が奥さんと参加してくれることになりました。文次さんと悠里さんです。拍手―!
悠 里: こないだ、うちの人が帰ってきたら、ものすごい勢いで話してくれたんです。
千 葉: ダンスの話?
悠 里: それと、恐怖の体験談も。
(爆笑)
悠 里: ダンスはTVで見たことあって、私も踊ってみたいなーって、ずっと思っていたんです。だから、この町で習えるなんて、とてもうれしいです。
寿 美: 恐怖の話は早々に忘れてもらうことにして、文ちゃんがポスター作って貼ってくれました。誰か来てくれるといいですね。
そう話している所に、参加希望者が現れました。
美 和: あっ、美樹ちゃん、純子ちゃん、それに昭ちゃん。
昭 二: よっ!
美 樹: ポスター見たんですけど…。
純 子: 参加させて下さい!
さとし: 勿論だべー! さあ、どうぞ、どうぞ! チャミちゃん先生、これでこの町の同世代に近い人間全員集合です!
寿 美: オーバーな!
河 合:悠里ちゃんはパンを作るのが得意なんです。
寿 美: あら、おいしそう!
ヤ ス:昭ちゃんも元3年F組でーす!
寿 美: あら、いやな予感!(笑)
加 藤: 4年下の美樹ちゃんは、以前、この街で本屋をしていました。同じく4年下の純子ちゃんは病院に勤めていたことがあります。
寿 美: あら、なんだかんだ情報ありがとう! 興信所にいるみたいね。(笑)
寿 美: あら、全員、ダンス靴持ってるのね?
美 樹: 買ってきました。
千 葉: 素晴らしい! では新しい人たちが加わり、今日から半年コースを始めます!
寿 美: みんな、初めてダンス靴を履いた感じはどう?
恵 美: 私、靴下で踊っていたとき、足の裏の使われ方が家の中で歩くのと違うって感じてた。だから靴履くと、足裏がよそ者っていうか、足と靴が別物みたいなの。
美 和: 私もさー!普段の靴を履いているときは、そんなこと考えなかったのに…。
千 葉: 元世界チャンピオンの話なんだけど、靴を履いて練習ばかりしていると、足裏の感覚が養われないという話をしていたよ。テスト期間中、靴は要らないと言ったけど、そんな理由もあったからなんだ。
美 和: どうして、そんな話、知っているの?
千 葉: えっ、いや、どっかで聞いた気がする…。ま、あんまり気にしないで。
ヤ ス: いや、「気にしないで」じゃなくて、確かな話をしてくれよ。ホントによー。
そこに寿美が割り込んで紙を配り出しました。
寿 美: そこにあるように、ブルース、ジルバ、ワルツ、タンゴ、ルンバ、チャチャチャを練習します。毎回、ワルツが入っているのはワルツのフォーメーションの練習をするからです。全 員が参加できれば、男女8組の理想的なフォーメーションができます。そんなわけで、よろしくお願いします。
全 員: おー!!
やる気満々です。
千 葉: これからの半年間、いかに「楽して」上達するかをしていきますので、しっかりついてきてください。
河 合: 千葉ちゃんよー、なんだよ、その「いかに楽して」って。やる気なくすべや。
さとし: 俺たち必死こいてやるに決まってるべさ。
寿 美: そうね。一生懸命はいいことよ。でも、「頑張るぞ」って力むと、かえって体は動かなくなるの。だから、頑張らないでうまくなってしまおうというのが目的です。その一つには、知識を持つことです。知識や理論はどこにでも持ち歩けますからね。それを日ごろから考えていると、効率的にうまくなる筈です。
千 葉: 残りの人生、長くないからね。
全 員: 確かに…。(大笑)
寿 美: これが私たちのいう「楽して」ってこと。さあ、レッスン開始しますよ!
全 員: はーい!!
この日からホワイトボードも利用し、ちょっとした学校の授業風景になったのでした。
「北国ダンサー物語」(作:神元 誠)