質問28:タンゴの「らしさ」は、レッグ・アクションとネック・アクションにあると思っております。このネック・アクションについては、いつ・どこで・どのようにしたら良いのか分かりません。何かルールがあれば教えてください。(KKさん 男性)
回答:ネック・アクションに関して、「こうしなさい」と決められたルールは見たことがありません。ある意味、それは「いつでも・どこでも・どのようにしても良い」と、踊り手に与えられものと思います。ただ、二人で踊っているのですから、それによってバランスを崩すことがあってはいけませんし、不自然に見えるようなことも避けた方が良いでしょう。バランスを崩さず自然に見えるようにするには、幾つかのことが考えられます。それを見ていきましょう。
❶短い時間の中でネックを返すと、当然ながらシャープに見えます。つまり(S)カウントより(Q)カウントのステップで行うのがより効果的です(例:ファイブ・ステップの1歩目)。
❷(S)カウントのステップでも、カウントを(&S)のように分割し、後ろの(S)部分でネック・アクションを使います(例:両足を閉じたから、その場でPPになる)。
❸右回転するフィガーでは、(Q)カウントの右足の上でネックを返すと効果的(例:プログレッシブ・リンクの2歩目やチェイスの4歩目)。
❹左左回転するフィガーでは(Q)カウントの左足の上でネックを返すと効果的(例:オープン・リバース・ターンの1歩目)
❺首の芯が鳩尾まで入っているとイメージしつつ、ネックの力を抜いてスッとしておくとシャープなアクションができるでしょう。
一般的にネックはシャープに返しますが、表現方法によっては、例えば、コントラ・チェックからゆっくり女性を起こし、ゆっくりゆっくりPPになることもできます。それも、音楽がどうなっているかを考えて行います。激しいネック・アクションを多用は、逆にタンゴらしさが失われてしまいかねませんので気をつけましょう。
音楽が流れている場合、踊り手は音楽を無視してアクションだけを追いかけることはできないと思います。ですから、今、流れている曲が何を表現しようとしているのか、何を語らんとしているうかと考えながら、音楽と対話するような気持ちで自分を表現しようとすると、「音楽と合う」とか「しっくりいく」という風になるのだと思います。踊りの前に音楽があるのです。
現代は様々なビデオやDVDが出ていますので、自分の好みのダンサーのデモ映像を入手して「タンゴらしさ」の研究をしてはどうでしょう? そのときは、音楽と動きの関係も、よくご覧になってください。
最後に参考までにウォークの基本ルールを記載します。
① 左足前進はCBMPにステップする。
② 右足前進は右サイド・リードを使う。
③ 右足後退はCBMPにステップする。
④ 左足後退は左サイド・リードを使う。
④に関しては、「男性が左足後退で左サイド・リードを使うとき、前足のボールのIEが床に残る」というのがあります。通常の後退では前足のトウが床から離れますので、この「ボールが床に残る形」はかなり特殊です。表現を変えれば、タンゴの特徴のひとつといえます。この特殊な男性の足の使い方は前回のロック・ターンの4歩目に、そして今回のバック・コルテ1歩目に出てきます。
では、なぜそう踊るのでしょう? IDTAのテキストにはその理由を、「前がかりのポイズのため」としています。ポイズとは「いつでも動き出せるバランス」のことですから、「右足ボールにプレスを感じたまま、左足と左サイドが動いていく」と考えてみてください。でも、男性が左サイド・リードを使わないと判断したときや使えない状況にあったときは、前述のルールは適用しません。また、女性が左足後退で左サイド・リードを使うときの前の足は、通常の後退と同じ、即ちボールが床から離れヒール」になります。理由は、男性とは異なり、ヒールが高いからです。
ハッピー・ダンシング!