IL10 第5章 回って、回って!

投稿者: | 2020年4月28日

「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」(白夜書房/神元誠・久子翻訳/2011年)を公開します。原書は2009年に英国のDSI社から出版された”THE IRVINE LEGACY” (Oliver Wessel-Therhorn)です。

 

目次

書籍「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」

 

 

 

第5章 回って、回って!
Round and Round

 

この章の回転に関する説明は、間違いなく最も重要な説明の一つになるでしょう。カップルで踊っていると、殆どいつでも何らかの回転をしている訳ですから、回転運動に関する深い知識は不可欠なのです。

 

実際の回転は主としてボディの筋肉群を通して起こりますが、そこの筋肉群は腿の筋肉群とつながっています。また、ボディの筋肉群は上肢帯にも繋がっています。従って、ボディの内部で起こる回転は腿の筋肉の中に引き継がれると同時に、上肢帯にも伝わっていきますが、上肢帯には、実際に回転する部分はありません。このように回転は最小の運動で起こり、また、男性のセンターから女性のセンターに直接伝わって行きます。

 

回転において、右回転と左回転を同じように行なう事はできません。多くの場合、右回転は“ナチュラル・ターン”と呼ばれ、左回転は“リバース・ターン”と呼ばれています。ダンスにはLODと呼ばれる壁と平行に走る想像上の線があることと、男女が組むポジションの関係から、右回転は進行方向に対する自然な回転となります。

 

 

 

― ナチュラル・ターンの仕方 ― 

右回転の場合、男性は女性に対して回転を始める前に適切なタイミングでそれを知らせなければなりません。その方法は、右回転フィガーの1歩目が始まる前に右回転を起こし始めることです。それから使用するフィガーの右回転に繋げて行きます。ですので男性は、これから踊ろうとするフィガーで、どれだけの回転量が必要かという事を完全に把握しておくことがとても重要で、その回転量を1歩毎に割振って行くのです。

 

“回転の調節をしなさい!”

 

 

 

― リバース・ターンの仕方 ― 

左回転は、左カーブを描く中で行ないます。左回転は右回転とは違い、その前のステップから回転しようとするのは逆効果です。これには二人のポジションが関係しており、前のステップから回転しようとすると、女性が男性の前に動いて来てしまうからです。

では、前のステップでは何もしないのでしょうか? いいえ。男性がすることは、前のステップでスタンディング・レッグの筋肉の緊張を解放することです。すると、女性は受け身になった男性を通り越し、左カーブの中に先に入って行くことができるのです。男性はサイド・リードを使って女性に着いて行き、フリー・サイドを通して1歩目の最後で回転が起こるようにします(後退する人は、フリー・サイドを後方へスイングします)。この通り越す瞬間のことを専門用語で“コントラリー・ボディ・ムーブメント(CBM)”と言います。

女性にとり左回転で特に難しいのは、自分の右サイドが男性の方に入らないようにすることです。いつでも男性と並行にいる意識を持っていなくてはいけません。リバース系フィガーは複雑で難しい作りになっています。実際、“リバース(反対)” は“ナチュラル(自然)”の反対ですしね。ナチュラル系フィガーでは積極的に回転を起すのに対し、リバース系では回転が起きるのを待つ感じです。そのため、ナチュラル系を“アクティブ(積極的な)・ターン”、そしてリバース系“パッシブ(受身の)・ターン”ということができます。

 

 

 

― ポインティング・ステップ ― 

クローズド・ポジションで踊り通すフィガーではナチュラル系でもリバース系でも、前進の3歩と後退の3歩は区別して行なうことが大切です。後退の人は常に回転の内側にいますから、前進する人を通してあげなければなりません。そのため、後退の人は“ポインティング・ステップ”と呼ばれる踊り方をしますが、それをするには次の3つを覚えておきましょう。

 

  1.  後退の1歩目をステップしてから、2歩目のトウを進行方向へ向けますが、ボディの回転は後から起こします。
  2.  2歩目の足に体重が乗るのは、通常のステップの時より後からです。
  3.  ライズも後からです(1の終わりでライズを始め、ノー・フット・ライズです。)

 

ポインティング・ステップ

 

このポインティング・ステップでポイントしている間、サポーティング・フットの膝から下と足の角度が変化します。特に、ヴィニーズ・ワルツで後退するときは絶対です。この角度の変化をつけなければ、写真の場合のポイントしている右足への体重移動が早くなり過ぎ、その結果、サポーティング・フットのヒールを使ってしまうことになるわけですが、これは、ヴィニーズ・ワルツで蔓延して見られるフットワークの誤りです。

 

ポインティング・ステップはワルツやヴィニーズ・ワルツ、それにクイックステップのナチュラル・ターンでもリバース・ターンでも使われる他、スロー・フォックストロットの男性のフェザー・フィニッシュでも使われます。しかし、フェザー・フィニッシュに限っては、他のケースと一つだけ違う点があります。それは、ポイントとしている方向にボディ・ターンを完了させないことです。ボディをアンダーターンしておくことで、次のアウトサイド・パートナーに出られるようにするのです。

 

 

 

― オープン・ターンについて ― 

回転の最後で両足が開くオープン・ターンのフィガーの場合、スタートがクローズド・ポジションかプロムナード・ポジションかで女性が使うテクニックは変わります。こうしたオープン・ターンは一般的にクローズド・ポジションで始まりますが、その場合、女性は回転の内側にいることだけではなく、男性がオープン・ポジションで踊り終えるのを待たなくてはなりません。

 

オープン・ターンがきちんとできるようにするには、男性はまず、2歩目を女性の近くに置くことです。そうすることにより、女性は2歩目を閉じる、つまり、ヒール・ターンすることになります。一方、女性はまず、1歩目での回転を終えてからその足に2歩目をフラットで閉じます。その2歩目でフロアに下りたボディ・ウェイトをトウの上を通過させながら送り、次の3歩目に出て行きます。こうしたテクニックを使うには、男性から事前の情報が必要になりますが、男性の1歩目でのライズが通常より早いのは、そのためのものなのです(第4章参照)。

 

オープン・ナチュラル・ターンをプロムナード・ポジションから始めると、女性のヒール・ターンはなくなります。よって、男性が女性の周りを回転していく間、女性は3歩前進することになります。ところが、今日のダンスで非常に良く見られるケースは、このオープン・ナチュラル・ターンをクローズド・ポジションで始めたにも拘らず、プロムナード・ポジションから始めたときと同じように、女性がヒール・ターンをしていないことです。それでは足が汚くなるばかりか、ターンに入るときのスイングも制限されてしまいます。

 

 

 

― ナチュラル・ピボットについて ― 

もう一つ、回転につきもののナチュラル・ピボット(ナチュラル・スピン・ターン4歩目の男性のステップで、単にピボットともいいます)のお話をしましょう。このピボットでは常に左足ボールで回転をします。左足ヒールがフロアに軽くタッチ(キス)するのは、ボディ・ウェイトが次の足に移る直前です。そうではあっても、回転はボディの中心から起こり、左足はアクションを継続するのです。右足に体重移動するのは、左足の上で必要な回転量を得てからの後になります。

ピボットのように1歩で行なう回転の他に、2歩間で回転を行なうものもあります。例えばナチュラル・スピン・ターンを例にあげると、男性は1歩目右足でメインの回転を起こし、次の左足との2歩間で回転が行われています。この左足は実際の所は横へのステップで、出て行く方向は、使われる回転量により異なります。

 

 

 

― アウトサイド・パートナーとCBM ― 

次に出て来る最も重要なポジションの一つにも、回転を使うとうまく入れるというお話をしましょう。その重要なポジションとはアウトサイド・パートナーです。では、どこに回転が来るのでしょう? それはアウトサイド・パートナーに出ていく前の足の上です。その足の上でサイド・リードというボディの回転を起こすことで、アウトサイド・パートナーに出ていくことが可能になるわけです。

 

“アウトサイド・パートナーに出るには、常に前のステップでサイド・リードを使え!”

 

コントラリー・ボディ・ムーブメント(CBM)は、とても重要な問題ですが、それにも拘わらず、これほど誤った理解のされ方をしている用CBM語はないでしょう。普通に歩いている所を想像すると、スタンディング・フットとは反対の体側が自然に振れて行くのが分かりますが、実は、これがCBMで、実際は大変自然な動きなのです。正しいタイミングで回転ができるようになったら、もはや、CBM についてお話する必要はありませんが、残念なことに、この最も自然に起こるともいうべきCBMをオーバーに使おうとしたり、分割して使おうとしたり、あるいは、そのどちらもやろうとすると、バランスのとれた動きができるどころか、破滅的な結果が待っているだけです。その原因は、ヘッド・ウェイトがスタンディング・フットから外れ、そのために、ヘッド・ウェイトとスタンディング・フットとのコネクションが失われてしまうからなのです。

 

男性がナチュラル・ターンの1~3歩の後の後退のステップで、誤ったCBMの使い方をするのは冒険的ではありますが、二人の形は、全く望ましくないものになってしまいます。

 

“CBMとはヒップから肩にかけてが、スイングして行く脚部の方向に動いて行きながら回転することだ”

 

(左)頭と骨盤が垂線から外れている様子をよく見てください (右)正しいCBM

 

 

 

― 頭の下で回転する ― 

ビル&ボビーにとり、回転とは頭の下で、自分の脊椎の周りを回っていくだけ、という大変シンプルな事でした。もし、頭が回転そのものの一部であるなら、体全体に影響を与えてしまうことでしょう。それを証明するため、ビルはレッスンでちょっとしたネタを使ったものでした。頭の上にレコードとかカップのようなものを乗せてスロー・フォックストロットとかワルツを踊って見せたのです。勿論、いつもと変わらないスイングをして。そのようにして、回転もスウェイも頭の下で起こっている事を見せると同時に、それがバランスを完璧にすることも示したのです。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

アンソニー・ハーレー氏と共に

 


(「第5章 回って、回って!」おわり)