MT44 第10章 情熱(前半)

投稿者: | 2020年3月22日

「ダンサーのためのメンタル・トレーニング」(マッシモ・ジョルジアンニ著/神元誠・久子翻訳/白夜書房 原書名:DANCING BEYOND THE PHYSICALITY)を紹介します。

■目次

 

MT44 第10章 情熱(前半)
Passion

 

自分がしていることに真の情熱を持っていますか? その情熱を感じていますか? 正直に答えなさい。

 

情熱(パッション)を辞書で引くと、「生き生きと関心を持つこと」とあります。そこで思い浮かべることがあります。それは、カップルにしても個人であっても、ダンスで高いレベルに到達する人たちがいる一方、他の人たちは到達しないことです。そこには紛れもなく人々の背中を押してくれる、情熱という素晴らしい感情の原動力の違いがあります。何をするにも情熱は私たちをもう一押ししてくれます。パフォーマンスをするにも、もっともっと上に到達したいというモチベーションを与えてくれます。そのようにして、情熱は優れた領域へとあなたを導き、純粋な意志、純粋な関心を引き起こしてくれるのです。

 

私は先ほど述べた「生き生きと」という表現が好きです。「生き生きと」という言葉には「自分がそこに100%いる」感じがし、エネルギーに満ち溢れ、すべてにオープンな感じがします。一方、「関心を持つこと」の言葉からは、自分がダンサーとして関わっていることや、自己表現・自己啓発する楽しみなどをイメージします。

 

私が考えるには、私たちがしていることの最終目的は純粋に楽しむことなのだと思います。もちろん、世界中を行ったり来たりするのは必ずしも面白いことではありませんが、それでも世界中を訪問することで、多くの人たちとの出会いがあり、様々な機会を持てることを考えると、かなり魅力的と言えますから、どう解釈するかで変わってきます。競技会に出ることは必ずしも素敵とは言えませんが、何の刺激もないつまらない生活を想像してごらんなさい。競技会の素晴らしい点を挙げるなら、常にベストを追求し、向上を目指す自分を後押ししてくれることと言えるでしょう。

 

ダンスを教えていると、時々、ダンスにも運動にも何の情熱も抱いていないと思われる人たちに出会います。ですから、そうした人たちがすることは何をやってもつまらないのです。彼らの情熱の欠如は発するエネルギーからも、お互いを見る様子からも、身体の準備不足からも感じられますが、なによりも、それは、彼らの目からはっきり読み取ることができます。

 

誰もがどんよりと半開きの目をしています。まるで、仕方なくダンスをしているようで、彼らはきっと現実の中にいないに違いないと思ってしまいます。

 

あなたたちは流れる音楽の中にいますが、自分たちにある権利に気づきなさい。踊り始めるのか、踊りを止めるのか。

 

建設的な考えを積み上げ、より大きな目標を抱くことで情熱は日々成長し、あなたが限界と感じているその先へと、あなたの背中を押してくれます。「考えてご覧」と私は言いたい気持ちです。なぜなら、もしかするとあなたが考えているその限界は、もともと存在しなかったのかもしれないからです。もしかすると、自分で勝手に作りだし、それを心の中に住まわせてしまったのかもしれません。自分で限界を作り、勝手に限界を感じていたのなら、自分の力でそれを消滅させることができるはずです。

 

もし、「情熱とは何か」と尋ねられたなら、私はこう答えるでしょう。

「目に見えないけれど、私たちの考え、私たちの創造力、私たちの心も目も占領してしまうもの」と。

 

あなたがどこに行こうとも、どこにいようとも、あらゆることはこの情熱とつながっています。その情熱を育むために、立ち上がって動き出す必要はありません。ただ、それを思うだけでいいのです。なぜなら、あなたはいつもダンスのステップに対して真のインスピレーションを追及しているのですから、情熱に目覚めた瞬間に、完璧かつ落ち着きのある感覚が宿るのです。この感覚は、お金でどうこうできるものではありません。この感覚は、なぜあなたがそのことを行なっているか、その訳を知るところから生まれる平穏な感覚です。あなたが切望していることを大切に育て、好きなことに夢中になっていると、ゴールに到達するのです。

 

私は時々、自分が本当に好きなことをしているのだろうか、本当に好きなことを追い求めているのだろうかと思うことがあります。そんなとき、いくつかのバラバラの答えを用意します。そしてその中に、心の中から聞こえてくる ― すごく楽しくて自分の背中を押してくれることをしている ― という答えに耳を傾けるようにしています。

 

以前には自分で自分を混乱させてしまうこともありました。「お前は~をしなくてはならない」という考えが湧いてきて、とても不安な気持ちになったものです。しかし、「私はこれをしたい」という、自分を突き動かす声に耳を傾け始めてからは、それが間違っていないことだと確信することができたのです。もはや他の考えに惑わされることはありません。

 

ですからあなたも、自分がしたいと思う考えに従って行動すると、何をどうすれば良いか、フィガーをどう解釈するか、どう競技会と向き合うかなどということに対するアイディアは自然に湧き上がってきます。そのときこそ、粘り強く行なうことが非常に重要になり、そうすれば、あなたのアイディアは結果という形になって現われます。

 

この世には、絶対に忘れてならないことがひとつあります。
人はこの世で特定の仕事をするために生まれました。
それは、その人の目標であり、その人だけの特別なものです。
もし、そのことを除き他のすべてを忘れても、
何も心配する必要はありません。
でも、他のすべてをしっかり覚えていても、
その特定の仕事のことを忘れてしまうと
人生で何を成すこともできないでしょう。
(ルミ*)

ルミ・デイズ(Rumi Days):13 世紀のペルシャの詩人。

 


「MT44 第10章 情熱(前半)」

 

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