どこかの誰かのダンスに役に立つことを願い、拙書「社交ダンスがもっと好きになる魔法の言葉」を公開中です。今回から、第3章「スタンダード・ダンスの悩みを解決する11の話」に入ります。今回は女性のヒール・ターンの仕方について考えてみました。
MA30 第3章 スタンダード・ダンスの悩みを解決する11の話
(第8話)ヒール・ターンの仕方
【質問】スローのリバース・ターンがスムーズにできません。私のヒール・ターンができていないのか、男性はリバース・ターンの1の終わりでのライズがとてもやりにくいようです。解決策を教えてください。男性にも女性にも問題があるのでしょうね。(女性)
スローのヒール・ターンについては、実に頻繁に質問を受けます。それだけ、ヒール・ターンの美しさがスローに必須であるとの認識が高い証拠なのでしょう。お便りにありますが、「問題は自分にもあるかも」と考えるのは、上達に欠かせない賢明な考え方です。そうした人たちの問題が解決されるよう、そしてまた、再び疑問が湧いたときに、ここに戻ってこられるよう、じっくり腰を据え、私たちの知識をすべて書き出します。では、リバース・ターンの例で話を進めます。
【女性が注意する点】
① 女性にとって、1~2歩目のヒール・ターンは両足を揃える形での内回り回転です。
② 内回りなので自分で積極的にヒール・ターンしよう(=回ろう)とすると、外回りする男性の動きよりスピードが速くなり、ずれて失敗してしまいます。
③ ヒール・ターンに入る前の準備をしっかりしましょう。左脚部を緩めて、相手の前進しようとする動きに合わせながらバックの足を用意します。
④ ヘッド共々、きちんと「バック」する気持ちのまま右足を後退します。この右足のヒールで回転をします。
⑤ そこに左足ヒールを揃えていくと、自然に回転が終わります。右足に左足を揃えてから「一緒に回る」ではありません。それをすると途中で靴同士が引っかかり、スムーズな回転ができません。
⑥ 1歩目右足を「トウ・ターン・インする」と教わることがあります。それは正しいのですが、適切にやらないと失敗するケースが出ます。原因は、前の足に充分長く乗っていないことや、「トウ・ターン・イン」の意識で、体の軸が捻れて右に倒れてしまうことにあります。
体の捻れを感じたり、トウ・ターン・インが上手くできないと思ったりしている人は、「右足トウを少し外に(トウ・ターン・アウト)向けて」踊ってみてください。これを試した人のほとんどが「踊りやすくなった!」と感激しています。これに、前述の「脚部を緩めて」と「バックする気持ちで」が加わると、かなり楽にヒール・ターンができることでしょう。
「トウ・ターン・アウト」を考えていると、女性は素直に真っすぐ後退するので捻れは発生しにくくなり、しかも、左回転は必然的に起こりますから心配はいりません。
⑦ 女性は一人でヒール・ターンができるよう、練習をしましょう。でも、二人で踊っているときは、ヒール・ターンをするかしないかは男性が決めることですから、「次はヒール・ターンね!」と先読みすると、内回りする意識が動きに現れ失敗します。男性には女性にヒール・ターンをさせる技術が求められるので、ヒール・ターンができなかったときは、半分は男性の責任と思って、気楽に構えていましょう。
【一人で踊るとき】
① 女性は一人でヒール・ターンできるようになることは絶対条件です。練習時、気をつけるポイントは、「左回転を強く意識しないこと」。上体と顔の関係を保ったまま1歩目は真っすぐ後退する気持ちを試してみてください。左回転を意識すると上体が捻れたり、顔が体より左を向いたりして失敗するケースが増えるでしょう。
② 1歩目フットワークをチェック。1歩目右足に体重が移動しかかったとき、前にある左足はヒールになっていることも絶対条件です。トウやボールだと体重が前に残り、男性の前進を邪魔してしまうからです。
【組んで踊るとき】
男性とルーティンを決めて踊るときは【一人で踊るとき】を研究してください。普通のパーティーのように、ルーティンのない形で踊るときは、次のように考えてみましょう。
① 女性は「ヒール・ターンしようと思わない」。ヒール・ターンしようと思うと、どこかで積極的に左回転の意識が生まれ、1歩目右足に乗ったとき、積極的に左足を引いてヒール・ターンしようとする動きが起こります。そうすると、男性を引っ張ってしまいます。
また、「なぜ、ヒール・ターンしようと思わないか」と言うと、本当にリバース・ターンに入るかどうか分からないからです。もしかすると男性は、例えば、フォーラウェイ・リバースに入るかもしれません。例えリバース・ターンに入ったとしても、女性がヒール・ターンに入るタイミングや、踊っている最中のタイミングの取り方は男性が考えて行なうことで、それを女性は事前に知ることができないからです。
ですから、先行フィガーの最後、例えばフェザー・ステップなら、3歩目左足の上に下りたら、後退しようと思わず、両脚部の力を抜き、「いつでも次のステップに入れますよ」と言う気持ちで、男性のリードを待ちましょう。男性が出てくる分だけ右足を後退することを心がけ、1歩目右足に乗りながら左足(今、ヒールになっています)の力を抜き、「どうぞお好きなところに私の左足を連れてって」とでも考えながら放っておけば、綺麗なヒール・ターンができます。しかも、女性のリバース・ターン前半は内回りですから、頑張らないのが賢明です。
② 先行フィガー最後の足の向きに注意。例えばフェザー・ステップからリバース・ターンに入る場合、フェザー・ステップの最後の左足トウを外に向ける癖が付いている人がいます。真っすぐに直しましょう。これも、ヒール・ターンを成功させる、かなり重要なポイントです。
③ 再び1歩目の話ですが、1歩目右足後退したときに、左足を早く引こうと思うと男性を引っ張ってしまいます。かといって、前に残っている左足に力が入っていると、やはり、男性の前進を邪魔します。左足の力を抜き、少しのリードでも動ける状態にしておくのが女性の力量になります。
話が前後しますが、女性が右足ヒールに「乗りたくなる」のはどういう場合でしょう? また、そこに「左足を寄せたくなる」のはどういう場合でしょう?
それを観察していくと、「右足ヒールに乗りたくなる」のは、右膝が伸びてヒールの後ろに「倒されそうになるとき」と分かります。この状態になると、「左足も寄せたくなる」けれども、右膝にゆとりがあり、ヒールの後ろに倒されそうにならなければ、「左足も揃えたくない」ことが分かってきます。
ですから男性は女性を、一瞬、ヒールの方へ倒す気持ちで前進し、女性の右膝がそれ以上緩まないよう、すぐに自分のトウにライズしなければならないことが分かります。
一方、女性は、ヒールの方に倒れていくには、首の力を抜いて背骨の左側延長上に頭を乗せていくようにしましょう。ナチュラルなヒール・ターンに入れるでしょう。
やることをやり、余計なことはやらない。
これでヒール・ターンは完全克服!
(「第3章 スタンダード・ダンスの悩みを解決する11の話(第8話)ヒール・ターンの仕方」おわり)
ハッピー・ダンシング!