この遊びで分かったことは、「筋肉の使い方も同じで、使わなくても良い筋肉を無意識のうちに使っている」という驚くべき事実でした。
私とダンスとアレクサンダー・テクニークと
AT04 筋肉を意識的に解放する
■筋肉を意識的に解放する
例えば、私の場合パソコンに向かっているときの姿勢を見てもらうと、肩や肘に力が入っていると指摘されました。
その力を抜くには、まず、肩のあたりを意識的に解放し力を抜こうとしなければなりません。力を入れてしまうのが習慣化されてしまっているからです。肩のあたりの筋肉を意識的に開放するのは、意識的にボールを受け取らないのと同じ作業なのでした。
これは当然ダンスに役立ちます。例えばスタンダードでパートナーとホールドする時、男性は両手を広げてホールドの形を作り、女性は右手を男性の方に出す動作をします。
あなたにもチェックしてもらいたいのですが、ホールドするときに肩も上げていないでしょうか?
「肩も」というより「肩を上げながら」手や腕を上げていませんか? もしそうでしたら、ホールドをするのに、肩を上げる必要はあるでしょうか?
実験をすると、ホールドには「単に手や腕(肘)がホールドの位置に浮かび上がれば良いだけ」と分かります。
そして「肩を上げる必要がない」ことが分かると、意識的にでも「肩を使わない」ようにすることができます。それまで無意識に使ってきた肩の筋肉が解放されると、それまでのホールドとは打って変わって、ナチュラルなホールドが誕生します。
■ダンスを知らない先生がアドバイスできるのか?
ある日、レッスンの中の実験として二人で踊ってみることにしました。その日は狭い部屋だったのでワルツをほんの数小節だけです。
見てくださった先生は社交ダンスをまるで知りませんでしたが予備歩と、続く3歩を踊る間の私の意識の持ち方を質問してきました。
鋭い指摘にドギマギ答えた私に
「次は頭蓋骨を持ち上げ、こんなことを考えて踊ってみては?」
とヒントをくださいました。
社交ダンスをまったく知らないアレクサンダー・テクニークの先生のアドバイスは、ダンスの先生がするようなアドバイスとは全く違うものでしたが、その通りにやってみるとまるで違う踊りになったので、妻と二人、大変驚きました。
しかも、別の機会に別の先生とでも同じことが起こりました。
そうした経験を何度か繰り返す中、
「アレクサンダー・テクニークの先生たちはあれだけ高度なアドバイスができるのだから、ここのトップのジェレミー・チャンスさんなら間違いなく日本のダンサーのために素晴らしいアドバイスができるに違いない」
と確信するようになりました。
3か月間の体験で確信を得た私は、後日、「ボディ・チャンス」主催者のジェレミー・チャンス氏とアポを取り、ダンサーのための記事を書いて欲しいとお願いしたのでした。
私たちはジェレミーさんの個人レッスンは受けていませんでしたし、習った先生に記事をお願いする選択肢はありましたが、日本語を殆ど使わないジェレミーさんに敢えて依頼したのには理由がありました。
私は、関わっていた隔月誌ダンスウイングをバイリンガルな雑誌にして世界に発信したいと思っていましたので、ジェレミーさんの英語の原稿と日本語の翻訳文を併記することを考えていたからです。
(つづく)
「私とダンスとアレクサンダー・テクニークと」目次
- AT01 不思議な出会い
- AT02 潜入調査開始!
- AT03 ショッキングな体験
- AT04 筋肉を意識的に解放する
- AT05 パートナーは二人必要?
- AT06 動きの原理を知っていますか?
- AT07 あらゆる動きはどこかに影響を与えている
- AT08 原理2と3
- AT09 頭部の動きは脊椎運動を支配する
- AT10 私も魔法を手に入れました!
- AT11 良く出来たときは案外変に感じる
- AT12 頑張らなくていい
- AT13 頑張らなくていい例文
- AT14 当てにならない感覚
- AT15 7つの古典的な誤り
- AT16 自分を世界の中心に置く
- AT17 内なるダンスに向けて
- AT18 協調運動
- AT19 動的な動き
- AT20 力まないダンサー
- AT21 さあ、実験!
- AT22 背骨の可動範囲
- AT23 失われた第6感
- AT24 判断基準が自分にある危険性
- AT25 最終話 難しいのはあなたの古い習慣
- AT26 ダンサーのためのアレクサンダー・テクニーク