IL14 第8章 踊りのヒント(後半)

投稿者: | 2020年5月1日

「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」(白夜書房/神元誠・久子翻訳/2011年)を公開します。原書は2009年に英国のDSI社から出版された”THE IRVINE LEGACY” (Oliver Wessel-Therhorn)です。

 

目次

書籍「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」

 

 

第8章 踊りのヒント
Dancespecific Tips and Tricks

 

 

 

 ◆ヴィニーズ・ワルツのヒント◆

ヴィニーズ・ワルツの素晴らしい所は、他のダンス同様、やはり音楽と言えましょう。単に3/4拍子で1分間に60小節の曲と言うのではなく、本当の意味でのヴィニーズ・ワルツの曲を耳にすると、宙に舞い上がりたくなる衝動に駆られると思います。ヴィニーズ・ワルツはそうした、純粋な感情を表現する踊りなのです。もちろん、この踊りにも必要な技術的要素が入ってきます。まず、重心の位置はほんの少ししか低くなりません。これは音楽のスピードが速いためです。次に、ライズ・アンド・フォールも他のダンスとは異なり、ロアーは僅かしかしませんし、ライズもロアーから“レベル0”に戻って来る程度です。

 

― 後退の仕方 ― 

ヴィニーズ・ワルツで難しいのは、後退から回転する所です。後退の1歩目、すなわち、女性の1歩目と男性の4歩目を置く位置は「後ろ少し横」になります。これは明らかに後退のステップです。もし横へのステップなら、「横少し後ろ」という書き方になります。この後退の足に体重が乗ったとき、ボディが後退の動きを継続していてはいけません! 

 

実際には、これと全く反対のことが行われてしまっています。それをナチュラル・ターンの例で説明しましょう。

 

LODに背面して後退1歩目の左足に体重を乗せたなら、その左足を固定した所で、右足はポインティング・ステップを使います。この右足は左足と同じライン上にきて中央斜めにポイントし、ボディは中央に向けておきます。その時、左ヒップを少し低くすると正しいスウェイが作られます。そうすると横方向へのスイングができ、両足を揃えることができます。

 

“ヴィニーズ・ワルツはサイドに踊る!”

 

こうしたルールを女性が厳守すると、男性に道を開けることができますし、反対に、男性が後半で同じ事をすれば、女性に道を開けることができるのです。

 

 

― 前進の仕方 ―

次は前進の仕方です。前進のステップは3段階で考えます。足の上 → 足の中 → 足から離れて行く、です。このように行うことで、前進の3歩で、最大限に進むことができるでしょう。勿論この3段階の考え方は、他のスイング・ダンスにも応用できます。

 

 

― リバース・ターンの注意 ―

次はリバース・ターンについてですが、リバース・ターン後半で、実に妙な省いた動きをする男性を見かけますが、5歩目はれっきとした横へのステップですから、横への動きをしてください。

 

― フレッカール ―

左回転でコーナーを回る時、回転量は大きくなりますが、これはフレッカールの練習に最適です。どういう事かと言うと、コーナーを回る要領で徐々に円を小さくして行くと、フレッカールになるからです。このフレッカールという言葉はドイツ語のフレックから派生し、意味はスポット(その場)ですから、フレッカールはスポットで踊らなくてはなりません。フレッカールを踊るとき、各小節の1拍目で体重が乗り切りますが、2歩目はパート・ウェイトのみです。言うまでもありませんが、フレッカールにライズ・アンド・フォールはありません。

 

― 音楽について ― 

最後に音楽について少し触れておきましょう。ヴィニーズ・ワルツの殆どは8小節単位のメロディーで、2小節が1セットになっています。1小節目は上り調子のメロディーで2小節目は下り調子のメロディー。別の表現をすれば「問い」と「答え」のセットともいえます。ヴィニーズ・ワルツを上手く踊るには、音楽をボディの中に吸収し、ダンスを楽しむことです!

 

 

 

 

 ◆クイックステップのヒント◆

クイックステップには主として二つの進行方向があります。それは横方向と回転です! では、クイックステップを構成する要素の中から、踊りの起源から来ているスイングとスウェイについてお話ししましょう。

 

1.スイングとスウェイ

クイックステップのすべてのベーシック・フィガーはスイングとスウェイをする仲間です。また、クイックステップで最も重要な要素はシャッセです。シャッセは一見、簡単そうに見えますが、実は、正確な知識を持っていないときちんと踊る事はできません。シャッセが含まれるフィガーには、例えば、次のようなものがあります。

a)  クオーター・ターン・トゥ・R
b)  プログレッシブ・シャッセ
c)  シャッセ・リバース・ターン
d)  プログレッシブ・シャッセ・トゥ・R
e)  ティプル・シャッセ・トゥ・R
f)  ティプシー・トゥ・R
g)  ティプシー・トゥ・L
h)  クロス・シャッセ

こうしたフィガーが元になり、そこから数々のフィガーが創り出されて行ったのです。

 

2.バウンス・ムーブメント

このカテゴリーにはシャッセやロック、あるいは、その両方の要素を合わせた物などの発展系が含まれます。ベーシック・フィガーと異なり、このカテゴリーのフィガーはホップやバウンスを使って踊られ、違うリズムを作り出しています。動きの主たる仕事はトウと足首で行なわれ、膝は体重を吸収するために補佐的に使われます。そのようにして、スイング・ムーブメントと対照的な新しい動きができあがります。ステップ・ホップ、スキャター・シャッセ、そして、ペパーポットには異なるリズムがあります。

 

― ステップ・ホップ ― 

ステップ・ホップについて、ビルには、ホップに入る前のステップはトウでなければならないという、揺るがない意見を持っていいました。軽やかさが出せるからです。それだけではなく、女性にはホップに入る合図となりますが、ヒールから出るステップではホップのリードにつながらない、と(正確には、技術的にはトウでなければならないことはありません。しかし、これはビルからの素晴らしいアドバイスだと思います)。

 

― スキャター・シャッセ ― 

スキャター・シャッセのリズムは、一般的には“Q & Q &” です。これを“S a S &” (スロー・ア・スロー・&)で踊るときは、膝での体重吸収が特色となります。そして、僅かなライズ・アンド・フォールが起こります。

 

― ペパーポット ― 

ペパーポットは別名、「ダブル・ロック」、または、「シャッセ・ロック・コンビネーション」と呼ばれ、使われるリズムは“Q & Q Q Q S”です。ペパーポットの名前の由来は、この時の“Q&Q”のリズムからきています。

 

3.トリッキーなステップ

このカテゴリーに分類されるのは、ペンジュラム・ステップ、ウッドペッカー、チャールストン等のような、リズミカルで巧妙な足技があるトリッキー(巧妙・いたずらっぽい)なステップです。

 

クイックステップでの優れた振り付けでは、こうした3つのカテゴリーに含まれるフィガーをうまく使いこなしています。その配分量はカップルの技量により人それぞれで、自分達に合ったものを使います。優れた振り付けとは、そうした個々の能力を取り入れたものが音楽の特性とうまく絡み合っているという意味です。しかし、何と言ってもクイックステップの最大の特長は軽やかなムーブメントにあります。そうした「軽やかさ」は脚部の筋肉がリラックスしていないと創り出されません。また、主にトウと足首を使って踊ります。トウと足首を駆使することで、ちょうど、ばねの上で踊っているかのような、殆ど音の立たない踊りに到達できるのです。

 

“クイックステップの踊りは、ぬいぐるみ人形の脚だ!”

 

ボクサーのモハメド・アリを思い浮かべると、クイックステップでは色々な所で彼の動きと共通するのが分かります。ボクサーというのは、足首と膝を使って動きを吸収することをしっかり学んでいるからです。スキップはとても良い練習方法で、できるだけ軽やかに、音を立てずにできるようになると、それは足首がうまく使えるようになった証拠です。言うまでもありませんが、ボクサーも同じ練習をしています。

 

“クイックステップはフレッド・アステアのスタイルだ!”

 

ビルは、このハリウッドの伝説的人物が踊った軽やかなタップダンスを好んで引き合いに出しました。ダップで刻まれる音の一つひとつに注がれる重さを想像してみてください。それが音楽と巧みにマッチしているのです。

 

今日見るクイックステップで、音がしない踊りを見られたらラッキーです。うるさいといったらありません! そうならないためには、ボディをひとつにまとめ、ベースを小さくして踊ることがとても大切で、そうすると、注意深くなり、素早いリアクションで踊れるようになります。そのための、お薦めする練習法があります。

 

ゴムバンドを用意します。それを両脚に巻いて、脚部を固定して踊る練習をします。ゴムバンドを巻いているので動きは窮屈になりますが、両脚が協調して動くようになる、最高の練習方法です。

 

ビル&ボビーの軽やかなクイックステップ

 


(「第8章 踊りのヒント」おわり)