IL03 第1章 まっすぐ立ちましょう

投稿者: | 2020年4月22日

「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」(白夜書房/神元誠・久子翻訳/2011年)を公開します。原書は2009年に英国のDSI社から出版された”THE IRVINE LEGACY” (Oliver Wessel-Therhorn)です。

 

目次

書籍「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」

 

 

 

 

第1章 まっすぐ立ちましょう
Stand Straight

ダンスに関する限り、どんな事をするにおいても、私達は自分の体を可能な限り完璧な形にしておかなければなりません。それは、正確にはどういう事を意味しているのでしょう? 完璧な形とは、最小限の筋肉を使いつつ安定していられる垂直な形の事です。では、安定はどうやって得られるのでしょう? 正しいポスチャーの基本の形は骨格から得られます。脊椎を少し伸ばすことで、脊椎を支える筋肉の働きを向上させ、かつ、最小の動きにすることができます。脊椎をできるだけ垂直にすると、筋肉に余計な仕事をさせないで済みます。すると、自動的に訓練を受けている筋肉組織が体を支えようとする機能を引き継いでくれます。勿論、その時すでに使われている筋肉を使うことはできませんが。

 

良いダンスをしようと思ったなら、最低限の努力でポスチャーを作り、いつでも自分がしたい動きのために必要な筋肉を自由に使えるようにしておくことが絶対条件となります。そうしておけば、多少バランスを崩しても自動的にバランスを取り直せるからです。体がバランスを保つための(正確には倒れないようにです!)助けを求めると、脳は他の筋肉に助けるよう指示するようになっているからです。

 

それでは、この正しい形の感覚を得るために、ビル&ボビーが行なっていた練習法とイメージの使い方を紹介しましょう。きっと皆さんのお役に立つことでしょう。

 

 

 

 

― 正しいポスチャーの作り方 ―

正しいポスチャーの基本では、骨盤と脊椎(図1参照)が足の上にきます。この形になると、お尻の筋肉がリラックスして、お尻のウェイトがボールの上にきます。また、この形にいると、骨盤から仙骨が解放されて下にさがり、脊椎がストレッチされます。

膝はリラックスしたまま、関節は解放されます。これを別の形で表現すれば、ボディの下に両脚部が“長く”ぶらさがる感じで(膝は伸びきりませんが!)、上半身を支えつつ、胴体の下に垂直に保たれるのです。

 

「基本的に、重心はいつもサポート・ベースの上に!」

 

この骨盤のポジションを保つには特定の一連の筋肉が必要とされています。その一連の筋肉とは足の親指から始まって、足の裏を通り、ふくらはぎを抜け、膝裏を登り、丁度お尻の下で終わります。このひとつながりの筋肉は、足の親指がフロアをプレスすると活性化されます。ですから、私達がポスチャーを作る際、基本的な垂直な形が足の親指の上にきた時、既にダンサー自身の体重を通して、この一連の筋肉が活性化されていることになります。

 

 

 

 

― 骨盤・胸椎・頸椎 ― 

骨盤の位置を正しくする方法として、ビルは、下の写真が示すように両手でしっかり下腹部を挟み、矢印の方向へ持っていきました。脊椎をまっすぐにする際、最も重要なのは胸椎の上半分です。

 

この練習をやってみましょう。深く息を吸い込んで、ブラジャーのベルトの高さ位(見当つきますね)、即ち、少し前の少し上の方に胸椎を上げると、すかさず、肩の筋肉がリラックスするのが感じられるでしょう。続いて、胸椎の下半分のためには、これを試してください。胃の下の部分の感覚を上にあげて行き背中と結び付けます。その感覚の上に、まっすぐにした胸椎の上の部分を乗せ、更にその上に頸椎を乗せます。 

 

骨盤と腰椎の関係、および、胸椎と骨盤の関係は次のようにイメージすれば良いでしょう。輪ゴムの一端を胸骨の高さ付近にあるシャツのボタンに留め、もう一端をベルトのバックルに留めると、ダンサーは胸骨と骨盤の間の距離の変化を感じることができるでしょう。実際に、頸椎が縮んでしまっては困りますけどね! 胸椎をまっすぐにすると、頸椎もまっすぐになり、首の筋肉の緊張を解くことができます。

 

多くの女性は強い回転の最中に首のポジションがずれる経験をするでしょうが、それは首の筋肉が回転の勢いに耐えられないからです。首の筋肉を完全に解き放ち、ちょうどアザラシの鼻の上に乗ったビーチボールの感じで脊椎の上に載せておけば良いのです。この時、頭のポジションが正しければ、自分のトウの上少し前方に頬骨があるのが感じられることでしょう。

 

 

 

― ヘッドの正しい位置 ― 

頭の位置を正しくする、驚くほど効果のある方法をビルは使っていました。それは、ダンサーの背後に回り、頭蓋骨の後ろの下に親指を置き、中指を頬骨の下に当てます。このように押さえながら、ダンサーの首から、首の安定に必要なだけの緊張があり、なおかつ必要以上の緊張が感じられなくなる所まで調整すると、頭は最適のポジションになります。

 

もう一つ、ビルに教わった方法を紹介しましょう。それは、頭の上約3cmの所に帽子を持っていると想像し、その想像した帽子の中に頭を入れる方法です。この時、脚部を動かしてはいけません。

 

頭のポジションに関して、更に理解しておいて欲しい重要なことがあります。それは、目の見る方向と角度は頭の位置に影響を与えるという事です。

 

「私の2つの目だけが物を見ているのではありません。

私は額の中央に第三の目があるとイメージします。

その目はいつも前を向いていて、私のバランスを助けてくれます。」

 

 

脊椎全体をまっすぐにする方法として、ビルは次のようは方法を教えてくれました。

①最初に、上半身をフロアと平行になるまで倒します。そう、ちょうどテーブルのように。

②その形から頭部と頸椎が下に垂れ下がるようにします。

③下から起き上がる時は、脊椎の一番下からゆっくりと持ち上げて行くと、最後にまっすぐになります。

 

 

 

― 最適なボディ・ポジション ― 

二つの角度から最適なボディ・ポジションを見てみましょう。 両足を閉じてみると、両足の占有面積が非常に小さいことが見て取れます。右足親指から垂線を引くと、その線は股間を通り、吊りバンドのように右鎖骨までまっすぐ通り抜けて行きます。そこから片足に体重を乗せると、親指の線上に鎖骨の内側(体の中央寄り)が来ます。更にその延長線上には頭がきます。頭の重さはいつでも軸足の上にあるようにします。

 

横から見ると、骨盤の位置が足の前の方にあり、両足 → 骨盤 → 胴体 → 両肩 → 頭の順にボディ・パーツが垂直の線をなしているのが良く見えることでしょう。フロアに対する自分のボディ・ウェイトの関わり方は、動きのコントロールと切り離すことはできません。とはいえ、それぞれのボディ・パーツには異なる役割があります。


1.お尻をリラックスし、お尻の重さは立っている足の上にゆったりとぶら下げておきます。脚部の筋肉は正しい位置にあればリラックスしていますから、体重を運ぶための筋肉が自然に使われるだけです。

   ✔下のほうに意識しなさい!

 

2. 脊椎はまっすぐです。通常この姿勢は、上に向けて作られがちですが、ビルの説明はこうでした。

「脊椎を伸ばすとき、頭部から下に離れて行くようにしてみなさい。そうすると、体重がフロアから浮いてしまうリスクを防げます!」

このようにストレッチすると、自然に体が前後左右の4方向にもストレッチします。

   ✔ 下に伸びれば上にも伸びます!

 

3.まっすぐ起こした胴体の上に上肢帯全体がくるようにします。いかなる時も両肩を下に押し下げる事はしません。そのような行為は理想の筋肉の使い方に反します。

   ✔ ただ、ぶら下げておきなさい!

 

4. 頭は、あたかも王冠をかぶっているかのように、自信とプライドを持って使います。ビルが良く言っていました。

「プールで泳いでいると思いなさい。頭は水の上、体は水の中」

   ✔ 顔を起こしなさい!

 

これで、二つの力が重力に従って働き、別の二つの力が重力に反して働いている事になります。

 

 

 

― 女性のバランス ― 

女性の基本的な形では、僅かに左への曲線を作ります。では、どのようにしてバランスを崩すことなくこの曲線を作ることができるのでしょう?

 

女性の形は基本的には男性と同じですが、そこから少しだけ左膝をリラックスさせ、右足を僅かに開きます。更に、左のお尻が左足ボールの上にくるようにし、その延長線上に頭がくるようにすると、女性の形は自然とでき上がり、後頭部と左足ヒールとのつながりが感じられるようになるでしょう。女性の身体能力によっては、この形を更に大きくすることも可能です。

 

「辛抱強く姿勢の原則を練習しなさい。

そうすれば完璧な体が約束されます」

 

 

 

ブラックプールの審査委員長を務めるビル

 


(第1章 まっすぐ立ちましょう)