MT48 第12章 理解することが初めの一歩

投稿者: | 2020年3月26日

「ダンサーのためのメンタル・トレーニング」(マッシモ・ジョルジアンニ著/神元誠・久子翻訳/白夜書房 原書名:DANCING BEYOND THE PHYSICALITY)を紹介します。

■目次

 

MT48 第12章 理解することが初めの一歩
Understanding … The First Step

 

最後になりますが、皆さんがダンスという登山の途中で遭遇する困難を乗り越えられることを願いつつ、少々書いておこうと思うことがあります。なぜなら人間の動きには、内在する価値観や信念、希望などが現れるため、そうしたものが変わると、ダンサーの場合ならムーブメントも変わってくるからです。

 

ダンサーはしばしば、ダンスを肉体で表現することができるだけの合理的な知識があれば十分ではないか、との考えをします。そのことに気づいたとき、私の脳裏にこの章のタイトルが浮かんできました。知っていることと動くことは別物なのですから。

 

まず、知ることが最初の仕事で、基本のステップは学ばなければなりません。しかし、得た知識を使って実際に動く前に、次のようなことを気に留めておく必要があります。

 

ダンスをするという強い意志

何かを犠牲にするという心構え、そして

継続する忍耐力、などがそうです。

 

 

最初に、自分がどれほど理性的に物事を理解しているかに注意を払わなければなりません。もし、そうした理解に体験が伴わないとしたなら、むしろ、知らないでいる方が良いでしょう。

何事を学ぶ上でも、大切な目標に到達するには、次のような段階を経なければならないと私は考えます。それは、理解、体験、反復、実践です。

 

― 理解していることと体が動くことは、別々な要素です。

― 考え・着想を主張すること。

― 理解することが初めの一歩です。

― 献身すること、犠牲を払うこと、反復すること、こうしたことは物事を習う上で重要な意味を持ちます。

 

芸術界には、その分野特有の表現手段があります。例えば、画家は絵筆を使い、歌手は声を使い、彫刻家はのみを用いるように、私たちダンサーは体を使います。

 

そうした表現手段は、単に自分を表現する必要性を満たすだけではなく、別の機能も備えています。それは、鑑賞する側の五感を養い、様々な感動を体験できるようにすることです。歌手は私たちの耳に喜びを運び、画家も彫刻家も見る者の目に喜びを運んできます。そして、ダンサーは見る者の目にも耳にも喜びを運んでくるのです。

 

あなたの体は、あなたの中にあるものを伝えることを可能にするツールなのです。観る人たちに、あなたの考えていることや信じていることを体を通して伝え、まるでそれが見えるかのように感じさせるのです。この工程が重要なのです。それまでは、単に理に叶った考えでしかなかったものを → 肉体を通して → 見える形に変えることが重要なので
す。

 

― ダンサーの体は彼の芸術のツールである。

― ダンサーは観る者の五感を育まなくてはならない。

― ダンスは私たちの目に、耳に、そして心に喜びを与える。

 

 

私たちは、「知っている」ことと「やり方を知っている」ことが同じという誤った幻想を打ち破らなければなりません。「やり方を知っている」のは重要と考えるかもしれませんが、そうした「やり方」すべてが重要な体験から生まれたものとは限らないため、よくよく探っていくと「何もない」ときもあります。考えが形となるには通常時間がかかりますが、そのために費やした時間の投資は踊りのクオリティとなって報われます。すると、パフォーマンスをしていても、自信が持て、その自信はあなたの目にはっきりと現われます。なぜなら、やるべきことをやってきたので、あらゆる不安が消滅するからです。

 

こんな経験はありませんか? あまりにも多くのことを知り過ぎて、何をして良いか分からなくなったこととか、知っていることを全部使おうとしたりとか、理由も分からずに練習したりといった経験が。

 

最初に「なぜ」と考えることが重要です。あなたはパートナーやコーチャーと一緒に、今、向上を図らなければならないのはどこかを考え、その練習に集中する意義と方向性を見出すことが重要なのです。「なぜ」と考えることが習慣化すれば、あなたのパフォーマンスそのものが大きく変化します。練習をするときは一度に多くをしようとせず、少なめのことに集中し、考えていることをきちんと形にするようにしなければなりません。さもないと、それがいくら素晴らしい考えであっても、吸収できずに終わってしまうでしょう。

 


(「MT48 第12章 理解することが初めの一歩」つづく)