MT41 第9章 パートナリング/②タッチ/③スペース

投稿者: | 2020年3月19日

「ダンサーのためのメンタル・トレーニング」(マッシモ・ジョルジアンニ著/神元誠・久子翻訳/白夜書房 原書名:DANCING BEYOND THE PHYSICALITY)を紹介します。

■目次

 

 

MT41 第9章 パートナリング/②タッチ ― 五感の支配者
Touch — The Boss Of The Senses

 

 

今までも、そしてこれからも、私は触れることが、
常に真の変革をもたらすことを知っています。
(N. ジョバンニ*)

■ ニッキ・ジョバンニ(Nikki Cornelia Giovanni):1943- アメリカ生まれの詩人、作家、大学教授。上の言葉は著書 “New Book of Baby and Child Massage”(赤ちゃんと子供のマッサージの新しい本)の中に書かれている言葉。

 

 

ここで、タッチと皮膚について少し詳しくお話します。

 

タッチすることはダンスにおける主要な感覚で、かつ、私の見解では、私たちが他の人に抱く感情の次にくる感覚です。五感のうち、生まれてきたとき、主に発達させるのがこのタッチです。生まれてきたときは、目は見えませんが、触れることを通して母親が誰かを感じ取ります。タッチすることで厚さや薄さ、そして形状を感じ取ることができるのです。

 

皮膚はとても柔軟性に富み、臓器の中で最も繊細な感覚を持っています。基本的に、タッチすることはコミュニケーションの最初の手段なのです。私たちの体はどんなに小さな部位であっても、全身皮膚で被われています。透明な角膜でさえ皮膚の層で覆われています。皮膚は私たちの体で最も広範囲に広がる感覚器であり、最初に発達するのが触覚なのです。実際のところ、この触覚は胎児の段階ですでに発達しています(妊娠から8 週目終わりまで)。

 

時を経るに従い、皮膚の柔軟性、色、そして温度は変化します。人生の経験は、あたかも銀幕のように、皮膚に投影されます。また、皮膚の繊細さは、どのように皮膚を刺激するかによって変わりますし、皮膚の存在をどう意識するかによっても変わります。

 

皮膚の表面には無数のセンサーと受容器があり、熱、寒さ、気圧、湿度、光、動き、圧力の変化などを感知し、そうした刺激に対して皮膚は効果的な反応をします。触覚は皮膚表面全体に広がっていますが、特に、両手と指、足裏、そして唇では密集しています。

 

脳にある運動中枢の1/3 は手のために使われています。両手と両指は特に、身体の他のどの部分と比較しても、遥かに多い神経細胞で脳とつながっているのです。

 

こうした違いがあることが分かると、両手や両指がダンスにもたらす違いを容易に想像できることでしょう。

 

― 例え、タッチすること自体に感情的なものがないにしても、タッチは、肉体上の様式としてのみならず、実際のフィーリングとして感知されるのです。

 

タッチすること、タッチされることは、ムーブメントの中においてあらゆる違いをもたらします。また感情をなくして触れてみると、驚くほどの違いが起こります。ですから、触れるときには、私たちはお互いにコンタクトしているすべての部位に意識を及ばせなければなりません。どこひとつ欠かすことなく。

 

ここで、いくつかの触れ方を挙げてみましょう。

 •はっきりとしたタッチ

 •変形的なタッチ

 •感動的なタッチ

 •音楽的なタッチ

 •断固としたタッチ

 •突き抜けるようなタッチ

 •敏感なタッチ

 •神秘的なタッチ

 

こうしたタッチの仕方のどれかひとつを考えるだけでも、あなたの触れることに対する考えの質は、鮮明、かつ、論理的なものに変わることでしょう。言葉を使ってコミュニケーションするところを、ダンスではタッチで行ないます。つまり、言葉でコミュニケーションするには明確な話し方が重要で、適切なトーン、適切なスピード、そして、その場にふさわしい温かみが要求されますが、全く同じことが、相手の体にタッチするホールドのセンスにも求められるのです。自分に聞いてごらんなさい、

 

「彼女/彼にタッチするのはなぜ?」

「どのように彼女/彼にタッチしている?」と。

 

タッチを意識することはとても重要です。

特に現代は、そうした意識が
ほとんど忘れ去られている時代なので。
(M. ジョルジアンニ)

 

― タッチして、あなたの肌を通して愛情を伝えなさい。

 

 

お勧めのエクササイズ

― 可能ならば裸になって互いにマッサージし合いましょう。そして相手に喜びを与えるセンスを発達させながら、お互いの経験を伝え合いましょう。

― マッサージを通して喜びを与え、相手を理解し、相手が喜ぶマッサージの速さや強さを理解しましょう。

― 自分に触れて自分を認識しましょう。

 

 

 

 

MT41 第9章 パートナリング/③スペース(空間)
Space

 

「自分はパートナーのどこに動いて行きたいのだ?」

「自分は一人じゃない。二人でいることをきちんと理解しよう。誰か見ている人がいるならば、二つの体が見えているのだから。ひとつじゃないのだから」

「これは大きな違いだ。私は一人でスウェイしているのではない。そこには二人いるのだから」

「パートナーに対する自分の頭の位置はどこだ?」

「自分が先に行ってしまったら、パートナーはどこへ行ってしまうだろう?」

「自分は彼女の近くにいるだろうか、それとも離れているのだろうか?」

「私のネックは彼からどのくらい離れているのだろう?」

「彼女は僕を見ている。僕は彼女を見ていないけれど、きちんと感じている。自分は彼女の個人的なスペースの中にいるだろうか?」

「パートナーには触れていないが、きちんと感じている。その距離を、近さを感じている。そして、それは素晴らしいことだと知っている」

 

こうしたことは、なにもダンスをする二人の体に限ったことではありません。私は、いつでも自分の周りのスペースを感じ取っています。ダンスは自分たち二人だけで踊るものではないのです。二人以外に、スペースがあるのです。スペースが感じ取れても取れなくても構いません。

 

あなたがそこにいるように、スペースはそこにあるのですから。しかし、自分たちを取りまく空間を意識することで、私たちの踊りは際立って洗練されていきます。本人もまた、それを感じるようになるでしょう。

 

スペースはいつでも自分たちの周りにあります。そして、スペースの周りには自分たちがいるのです。自分たちの体とスペースを同時に意識すると、ムーブメントはより大きく、より価値あるものに変わります。つい先ほどまで何もなかったのに、スペースを意識すると、そこに腕も鼻も足も感じられて…それは、まさにマジックです!

 

 

エクササイズ

― 形を気にせず自由に動いてみなさい。そして今まで使ったことのない形を造り出しなさい。

― パートナーと一緒に何かの形を即興で作りなさい。二人の形が、必ずしも同じでなくても構いません。

― 自分たちのことを踊りにしてみなさい。

― あなたたちの振り付けを紙に書き出しなさい。

― パートナーがいると思ってシャドーしなさい。

 


(「MT41 第9章 パートナリング」つづく)