「ダンサーのためのメンタル・トレーニング」(マッシモ・ジョルジアンニ著/神元誠・久子翻訳/白夜書房 原書名:DANCING BEYOND THE PHYSICALITY)を紹介します。
MT29 第5章 言葉の力/③ダンサーに耳を傾けると
Listening to Dancers
教える側としての私の経験からお話しすると、どこに教えに行っても、皆さん同じような態度を取っているのが分かります。何を言いたいかというと、大多数のダンサーたちは意味のあるコミュニケーションを上手にとろうとしていないのです。
実際、練習している場面でも、競技会場でも、レッスン中でも、90%の人たちはやる気をなくすような言葉を使い、自分たちを悪い方へと追いやっています。驚くほど否定的な表現を使ったり、ジャッジを非難したり、挑発的な言葉を使ったり、いったいどの方向に進んで行きたいのか分からない程です。
どんな言葉を使っているか、典型的な例をお見せしましょう。
「重い!」
「どうしてきちんとフォローしない!」
「なぜ言うことが分からない!」
「ダメだ、ジョンとローラたちを見てみろよ、なのに君は…」
「君には無理だ」
「急げよ!」
「ひねくれ者!」
「曲がってるよ!」
「不器用!」
などなど、キリがありません。
言葉だけではなく、目が「ダメ――!」と叫んでいる場合もあり、そうした言葉や態度に、お互いに不信感を増すばかりです。
こうした例は、ほんの一例でしかありませんが、もし、あなたに思い当たるところがありましたら、そろそろ改めてはどうでしょう? どうやって?
練習の成果や競技会の結果のことを、今までとは違う言葉や違う表現で話してみるのです。そのとき、最も大切なことは、お互いに相手を尊重して話すということです。
それでは、たった今から、あなたは今までパートナーに使っていた言葉を変えましょう。使うのは、相手の気持ちを高揚させるような言葉です。
うまく踊れないときにだけ会話をするのはやめましょう。うまく踊れないときこそ柔らかな言葉で伝えましょう。
上達できるという信念を言葉で相手に伝えましょう。
自分はやる気をなくしたり絶望的になったりしていないということを伝えなさい。あらゆる面で進歩することを信じていると伝えなさい。
そのためには、こうした言葉を口にしてみると良いでしょう。
「素晴らしいね!」
「それ、いいんじゃない」
「もうちょっとだね、そしたら僕たちはパーフェクトだよ!」
このような、ちょっとした言葉を使うだけでも、コミュニケーションを交わすうちに、相手に対する信用・信頼がじわじわと浸み込んでいくのです。そうすると、次回、パートナーはそれを思い出し、とても元気になって、気持ち良くなって、もっともっと素晴らしい踊りをするようになります。
そうなっていくと、今まで抱いていた、「間違ったらどうしよう」とか、「自分たちにはできないかも…」など、自分の踊りに制限をかけていた不安が取り除かれていくことでしょう。
もしかすると一部の人たちは、こうしたコミュニケーションの取り方を難しいと思っているかもしれませんが、やってみると、その効果に驚かれることでしょう。
以前、本でこのような言葉を見たことがあります。
「思っているのと違う結果を得るには、違った行動を取ればよい」
「MT29 第5章 言葉の力 /③ダンサーに耳を傾けると」
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