どこかの誰かのダンスに役に立つことを願い、拙書「社交ダンスがもっと好きになる魔法の言葉」を公開中。今回は最終章「知って得するあんな話こんな話10話」です。
MA62 第6章 知って得するあんな話こんな話10話
(第9話)足型で踊れないは本当か?
「足型をやっても踊れないよ」
そんなことを言われたり聞いたりしたことはありませんか? でも、本当でしょうか?
私たち夫婦が最初に手にしたダンスの本に、アレックス・ムーアの「ボールルーム・ダンシング」があります。この本には素晴らしい足型図が入っていて、ステップの説明と照らし合わせると非常によく動きを理解することができました。1936年の初版以来、増刷と改訂を繰り返し、80年を経て今なお愛読されて続けている背景に、足型図の存在があることを無視することはできないでしょう。
私たちに「足型図」はとても役立ったのに、「足型で上手くなれない」と言う人がいるのはなぜでしょう?
そこで、実験用の足型図を右に用意しましたので、その通りに動いてみてください。
① ライズ&フォールやスウェイはありません。
② 1~4歩はヒールから出ます。
動いてみましたか?
では、動いていたときのことを思い出してみましょう。
あなたが動いていたときの形は図のA、Bどちらでしたか?
どちらの形も間違いではありません。でも、最初はBのように、少々へっぴり腰で歩き始めた人も、一歩ずつ踏み出しているうちに、
「なーんだ、ただ歩くだけじゃないか」
そう気づいた瞬間から、Aのようにススッと歩くことができたのではないでしょうか。
どちらの形で動いても、足を置く場所は同じです。移動もできています。それなのに、二人を比較した場合、Aの方が遥かにナチュラルで美しく見えませんか?
それはなぜでしょう。
その答えの中にこそ、足型で「上手くなれない」原因と、「上手くなれる」理由が隠されています。
「ただ足を出す」のは動作でしかありません。
Bの場合、出した足の上になかなか体重が乗っていきません。ある種のノッキングを起こしていて、昔のロボットのような動きに見えます。
一方、Aの動きがナチュラルで美しく見えるのは、今体重が乗っている足から次の足までの「間の動き」が自然だからです。
これはダンスでも同じです。
本当に上手な人の踊りを見ると、自然で簡単そうに見えるのはそのためです。ですから私たちは、足型図から足を置く位置を理解したなら、「この足から次の足へもっとも無理のない自然な形で移動するにはどうしたらいいか」それを考えなくてはなりません。
この考え方を知っていると、足型図はあなたに多くのメリットをもたらしてくれることでしょう。
スタンダードのみならずラテンでも同じです。
いつも、一歩と一歩の間を考えて練習してください。
そこに足を置きにいっても踊りになりません。
踊りとは「一歩と一歩の間」に存在するからです。
(「第6章 知って得するあんな話こんな話10話(第9話)足型で踊れないは本当か?」おわり)
ハッピー・ダンシング!