どこかの誰かのダンスに役に立つことを願い、拙書「社交ダンスがもっと好きになる魔法の言葉」を公開中。今回は最終章「知って得するあんな話こんな話10話」です。
MA60 第6章 知って得するあんな話こんな話10話
(第7話)ふきん絞りの理論
本で読んだことやビデオで見たことをトライして、上手くできたと喜ぶことがあります。でも、その日上手くできたからといって、次回も、ひと月後も上手くできる保証はありませんから、もう一度やってみる、繰り返しやってみることが大切です。
話は少し逸れますが、私は、布巾や雑巾を絞る度に、驚き、そして、感心することがあります。
それは、力いっぱいギューッと絞り、もう水は出ないと思っても、一度、力を抜いてから絞りなおすと、必ず、もう少し水が出てくることです。
「さっき、きつく絞ったじゃないか、どこに隠れていたんだ?」――――と、驚く訳です。
同じようなことが知識や体験に対しても、言えるかもしれません。「納得した! 分かった!」と思っても、いったん力を抜き、再び何度か繰り返さなくてはいけないのだと。ダンスのテキストや本、ビデオ、DVDも同じで、「分かった」と思ってから暫くして、再び読み返したり見直したりすると、違うものが見えてきます。
私はこれを一人誇らしげに「ふきん絞りの理論」と名付けていましたが、100年前にドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウス(Hermann Ebbinghaus)に先を越されていたと知りました(笑)。
彼は、人間の脳は覚えた直後から忘れ始めるが、「間をおいた反復」をすると記憶しやすいことを実験で証明していたようです。
惜しかったです(笑)。
話が逸れましたが、ダンス・テキストの奥深さと面白さは、始めの頃に読んで理解したと思ったところでも、後に読み返すと違うことが見えてくることです。
ビル・アービン(Bill Irvine)が「私はテキストブックを窓から放り投げたりはしない」と話していたのは、そのためかもしれません。また彼は、オリバーにこうも話していたそうです。
「オリー、これは私のバイブルだ。しかし大切なことはそこに書かれていることじゃない。大切なのは、なぜそのように書かれているかということを知ることなのだ」――――と。
読み返してみよう。
分かったと思っていたことがより深く分かります。
(「第6章 知って得するあんな話こんな話10話(第7話)ふきん絞りの理論」おわり)
ハッピー・ダンシング!