前回は「筋肉の動きに関する科学」で、筋肉は筋繊維という小さな筋細胞からできており、疲れやすい白い筋肉と疲れ知らずの赤い筋肉の二種類がある話まで読みました。さっそくその続きを読んでみましょう。最初は7つの原理と7つの古典的な誤りのおさらいから。
私とダンスとアレクサンダー・テクニークと
AT22 背骨の可動範囲
ボディ・チャンスの7つの原理 1. すべての動きは相互依存の関係にある。 7つの古典的な誤り 誤1.悩みの部分のみを考え、全体を見ない。 |
ダンス――遥かにうまくなるための秘訣(Dance Wing 55,5回目記事より)
背骨の可動範囲
今回の記事は楽しかった3月のワークショップが元になっています。参加者一人ひとりのレベルと情熱に大変感動しましたが、こんなに熱心で、こんなに楽しみ方をよく知っている人達と一緒に仕ことができるのは滅多にないことです!
では締めくくりに、もうひとつ気づいた事をお話ししましょう。それは、皆さんが知っておくべき背骨の運動範囲です。ダンスで女性が後ろに体を反らしたりしますが、そうした動きのことです。
図は背骨の可動範囲を示していますが、中央が真っ直ぐに立った形、左は体を反らしたとき、右は体を縮めたときです。現実を見てみると、胸椎(肋骨の一番上から一番下までのこと)の後方への可動域は、イラストが示すように非常に限られており、後ろに反ったつもりでもかなり真っ直ぐのままなのです。
つまり、体の反りの殆どは首の部分で行われ、次いで肋骨の一番下と腰椎の一番上のつなぎ目とその下の第5腰椎までで行われています。
これを理解していないと、胸を上げようとした場合、胸付近の背骨を曲げるイメージを持ってしまいます。体はなんとかあなたの希望に応えようとしますが、解剖学的に無理なので、それに近い形にしようとします。つまり、背中の反りの方に腕全体を引く――という形で。
腕は体の前で動くようデザインされている
胸部の皮膚と筋肉が引っ張られるので胸を上げたと思うかもしれませんが、それは勘違いに過ぎません。胸は上がっておらず、腕を後ろに引いているだけです。腕は、構造学的に体の前で動くようにデザインされています。
例えば、スタンダードのホールドで腕を後ろに引いてしまうと、腕が持つ素晴らしい動きの質を殺すことになります。ワークショップに参加された皆さんは、「あら、(ホールドを大きくしようと)肘を引いていたけど関係なかったわ」と気づき、その結果、もっと楽に、もっと自由に、自分の身体が遥かにコントロールしやすくなりましたね。きっと、今までにない満足できる踊りになったのではないでしょうか!
再び背骨の可動範囲
写真(下)から、背中の可動域がよくわかると思います。反ったと思っていても、背骨がほとんど真っ直ぐのままであることを知っておくことは、体を使う人には重要なことです。

Model/Yoshie Photo by Hanta Arita
(「ダンス――遥かに上手くなるための秘訣」第5回記事から)
これはベリーダンサーの Yoshie さんの写真です。ジェレミーさんの原稿と一緒に送られてきた写真の著作権の問題がはっきりしなかったため、急遽ダンスウイング54号に登場していただいた彼女にお願いしました。
こうして見てみると、背中は丸く反らないことが良く分かり、それが驚きでした。
- Dance Wing Vol. 55に掲載されたこの記事をPDFで通して読むことができます。
- 英語の原文も紹介しています。読まれる方はPDF最後のページから逆読みしてください。
- English text is also available in PDF attached herewith. Read from the last page in reverse way.
(つづく)