どこかの誰かのダンスに役に立つことを願い、拙書「社交ダンスがもっと好きになる魔法の言葉」を公開中です。今回は第3章「スタンダード・ダンスの悩みを解決する11の話」の最終話、「それもダンス……」です。
MA33 第3章 スタンダード・ダンスの悩みを解決する11の話
(第11話)それもダンス……
「ワルツにしか見えないスローを踊っている人が多い」と嘆く声が聞こえます。
皆さんの周りはどうでしょう?
さて、私も「ワルツにしか見えないスローを踊っている人が多い」とは思いますが、だからといって、「それはダメ!」と思いません。むしろ、「それはそれでいいじゃないか」とも思うのです。
その人がいつダンスを始めたのか、今何才か、どのくらいの頻度でレッスンを受け、どれだけ身体能力が高いのか・・・・・・。そうした背景がまったく分からないですし、現在の自分の踊りだって、上手な人が見たら何から何までできていないのでしょうから・・・・・・。
そうしたことすべてをチャラにして、他人の踊りをとやかく言えないと思うのです。
ダンスを始めて間もない頃のこと、日本チャンピオンだった中川勲先生にカップル・レッスンを受ける機会がありました。ある日、何かの機会で先生が次のようにおっしゃいました――――。
「あれもダンス、これもダンス。いろんなダンスがある」。
そして、こう続けたのです。
「だけど、それは僕の目指すダンスではない」。
そのときの話を思い出す度に、次の言葉が後をついて浮かんできます。
「人は直せない。自分は直せる」
他の人は自分が望むようになかなか変わってくれません。
それは、あなたも私も、他の人が望むように変わらないのと同じです。
自分だってなかなか変わらないのに、それを人に求めるのは酷というものです。
だから、誰かがワルツみたいなスローを踊っていても、それはそれです。
しかもその人は、その人の環境が許す限りで最善を尽くしているのかも知れないのですから。
その人も、許された環境の中で努力しています。
人を指摘しても、自分の上達とは無縁です。
(「第3章 スタンダード・ダンスの悩みを解決する11の話(第11話)それもダンス…」おわり)
ハッピー・ダンシング!