日本のどこかで「より良い、より質の高いダンスを自分の中に見つけたい」と模索している人たちがきっといるに違いありません。そうした人たちにこの「私とダンスとアレクサンダー・テクニークと」が役に立つことを願いつつ、話を進めていこうと思います。
私とダンスとアレクサンダー・テクニークと
AT01 不思議な出会い
近年の私たち夫婦のダンス活動におけるアレクサンダー・テクニーク(AT)の存在はとても大きなものとなっています。自分たちが踊る上で役立っているのは勿論ですが、教える側に立ったときにも大きな力を発揮しており、生徒さんが抱える問題の原因を探っていくと、目の前の現象からかけ離れた所で原因が見つかる場合が多々あります。そうした時、私たちはアレクサンダー・テクニークと出逢ったことに心から感謝します。
私がアレクサンダー・テクニークという言葉を知ったのは、2007年のことです。その年の冬、娘が ―― 「面白いから行ってみて。その人もお父さんに会いたがっているよ。お金は払ってあるからね」と、占い師(←最適の表現ではない)にアポを入れてプレゼントしてくれました。そこで、ひょいひょいと表参道の Healing Beauty Salon へ出かけて行き、チャメリさんという人にお会いしました。そして最初に交わした言葉がこれです。
チャメリさん:今日はどのようなご相談ですか?
私:いやいや、私の相談ではありません。娘が、あなたが私に会いたいと言っていたというので、会いに来たのです。(笑)
チャメリさん:そうなんです。お嬢さんが来てくださったとき、私はお父さんにある本をお薦めしようと思っていました。
そうして教えてくれたのが「アレクサンダー・テクニーク」という本のことでした。どんな本か全く見当もつきませんでしたが、「きっと役に立つと思います」と勧められ、また、私も何かを感じたので、その夜のうちにアマゾンで2冊ほど注文しました。
しかし、届いた本を手にしてみると、残念ながら私には読みにくく感じたのでそのまま放っておくと、妻が読み始めたのです。何かを感じたのは妻だったかもしれません(汗)。何はともあれ、アレクサンダー・テクニークとの出会いのきっかけは、全く知らない一人の占い師さん、正確にはスピリチュアル・カウンセラーさんからだったのです。
アレクサンダー・テクニークの本を買って暫くしたある日、ダンスファン編集部の人が、「先日アレクサンダー・テクニークのことを話されてましたよね。実は、その体験の招待状が編集部に届いているのですが興味ありますか?」と尋ねてきました。「はい、あります!」とすかさず答えたのは、勿論、妻でした。
そのときのレポートは2008年ダンスファン4月号 に掲載されました。その中には、主催者のジェレミー・チャンス(Jeremy Chance)氏から別途ダンスファン読者へ向けて頂いたコメントも含まれています。その部分を抜粋すると ――
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綺麗にスピーデイに踊れるようになりたいと考えたことはありませんか? そんなとき、私たちのアレクサンダー・テクニークを役立ててみてはどうでしょう。安定感を得る秘訣は脊椎と頭の関係にあります。
安定性とは中心軸(頭、背骨、肋骨)の脊椎に備わった機能なのです。身体の動きとは背骨と四肢の機能ですから、安定性と柔軟性を保ちながら踊りたい人は、背骨と四肢の動き方を研究する必要があるのです。そのため、ヨガや様々な格闘技の中で研究されてきましたが、ダンスにも、このアレクサンダーテクニークを実践応用することは可能です。
アレクサンダーは人の動きに関する実にシンプルで深遠な真実を発見した人です。それは、頭の内部に背骨の動きを支配する要素があり、そして背骨の動きが四肢の動きの質を決定するということです。これを理解するとダンスが上達します。では、どうして頭と背骨の関係はそれほど重要なのでしょう? わたしたちの頭の動きは背骨に2通りの影響(背骨を伸ばす、縮める)を与え、背骨が長くなるとバランスがよくなります。それは身体の内部で自然にバランスを整えようとする働きが行なわれるからで、これにより手足が自由に素早く動ける空間が作り出されます。
アレクサンダーのもうひとつのすばらしい発見 ―― それは、私たちの動きのひとつひとつは呼吸、血液循環、消化、視覚など身体のあらゆる機能に影響を与えており、身体を自然な方向に伸ばして戻すと、健康状態も向上するということです。(チャンス氏)
■参考:2008年ダンスファン4月号(PDF)
私はこの一連の繋がりを振り返る度、驚くというか感心してしまうのです。
→ 娘のプレゼントでチャメリさんに会いに行く
→ アレクサンダー・テクニークの本を紹介される
→ ダンスファンから招待状を頂く
→ 体験に参加して「ひとりでできるアレクサンダー・テクニーク」の翻訳者片桐ユズル氏のサインまで頂いて帰ってくる。
→ チャンス氏が快くダンサーのためのアドバイスをして下さる。
これは深層意識のなせる業なのでしょうか? そうであるにしてもないにしても、この時点で、私たち夫婦はすでに半歩、アレクサンダー・テクニークに近づいていたのでした。
(つづく)
「私とダンスとアレクサンダー・テクニークと」目次
- AT01 不思議な出会い
- AT02 潜入調査開始!
- AT03 ショッキングな体験
- AT04 筋肉を意識的に解放する
- AT05 パートナーは二人必要?
- AT06 動きの原理を知っていますか?
- AT07 あらゆる動きはどこかに影響を与えている
- AT08 原理2と3
- AT09 頭部の動きは脊椎運動を支配する
- AT10 私も魔法を手に入れました!
- AT11 良く出来たときは案外変に感じる
- AT12 頑張らなくていい
- AT13 頑張らなくていい例文
- AT14 当てにならない感覚
- AT15 7つの古典的な誤り
- AT16 自分を世界の中心に置く
- AT17 内なるダンスに向けて
- AT18 協調運動
- AT19 動的な動き
- AT20 力まないダンサー
- AT21 さあ、実験!
- AT22 背骨の可動範囲
- AT23 失われた第6感
- AT24 判断基準が自分にある危険性
- AT25 最終話 難しいのはあなたの古い習慣
- AT26 ダンサーのためのアレクサンダー・テクニーク