5章第3話 幸ちゃん到着!
翌日の午後、東山の幸ちゃんがホテルに到着すると、歓声が上がりました。周囲の人たちは「何事か!」「どんな有名人が来たのか!」という目で驚いたのは無理もありません。なにしろ10数名の団体が騒いでいるのですから。
寿 美: ごめんねえ、大変なお願いしちゃって!
幸 子: なんもさ。こちらこそ、お言葉に甘えてタクシーで来ちゃった。
さとし: いいってことよ。なんぼかかったって心配しないでいいから。
こういう調子になってしまうと、千葉ちゃんが入りこむ余地はありません。
幸 子: みんなは昨日着いたんでしょ? どんな感じ?
美 和: みんな時差ボケで、昨日は一日中ボーっとしてたり、こんな地図を持って近所を探索して過ごしたの。だからまだ会場にも入っていないのよ。
そう話しながら、手書きの地図を見せました。それは千葉ちゃんが雑誌でみつけてコピーしたものでした。
美 和: こういうアバウトな地図の方が分かり易いんだから、不思議よね。
恵 美: ご飯食べるのも大変。レストランの人も一度に10何名も押し寄せるもんだから、席の確保に四苦八苦よ。(笑)
寿 美: あとから、みんなで会場に入ってみましょう。今日は準決勝で盛り上がっていると思うわ。私たちはダンスタイムで踊って、フロアの広さや雰囲気を感じ取ることにしましょう。
幸 子: そして、明日の勝負に掛けるのね。ワクワクするわ。衣装と靴はあるのよね?
美 和: 美樹ちゃんの持ってきている。衣装は合うと思うけど靴はどうかしら?
幸 子: 美樹ちゃんのはちょっと大きかったと思うわ。
寿 美: なんとか足を合わせて!
幸 子: テープで脱げないようにするから大丈夫。
ミッチ: チャミちゃん先生、結構無茶言うタイプなんですね。
幸 子: それにしても、本当にブラックプールにやってきたんですね。
と、感慨深そうにみんなを見ました。2年前、「なんかやりたい」から社交ダンスが始まり、「またフォーメーションをしたい」からブラックプールまで来ることになったのですから。
「北国ダンサー物語」(作:神元 誠)