第3章 再びフォーメーション? 第1話 元旦の千葉家
第1話 元旦の千葉家
1年の始まりと言うのに二人して少し朝寝坊しました。でも、全然気にしなくて良いのは、年老いた二人だけの生活の良い所です。
寿 美: この町で迎える初めての新年ね。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
千 葉: こちらこそ、よろしくお願いします。一緒に黒池町に来てくれてありがとうね。去年は面白かったね。
寿 美: ほんと。なんか、楽しんだわね…
などと言う会話を数時間前に交わし、今、のんびりしている所にドアフォンが鳴りました。寿美が出ると、ドアフォンから「俺です」の声。
寿 美: 合言葉を言え。「鶴は煎餅!」
ドアフォン:「かめませんねん」
寿 美: よし、入れ!
これが初笑いとなりました。千葉がニマニマしながらドアを開けにいきました。
千 葉: おお、ミッチ。どうした?
さとし: 俺もいます。
美 和: 私もいますよ。
佳 純:私もね。
千 葉: 見えてるって。どうした、元旦から。なんかあったのか?
ミッチ: いやいや、きっと、あんたら退屈してんじゃないかって、みんな話しててさ。
千 葉: 全然してないけど…
さとし: きっと、俺たちの顔、見たいに違いないって。な?
美 和: それなら、行っちゃるかって。
千 葉: それは、気、遣わしちゃったね。まあ、上がってくれ。
皆が上がりこむと、一応礼儀正しく正座して新年の挨拶を交わしました。
寿 美: ごめんなさいね。二人だけと思っていたから、御節も殆どないのよ。
ミッチ: チャミちゃん先生、心配いりません。
さとし: 実は、新年会やろうって話になりましてね。
千 葉: ちょっと待て。この間、打ち上げやったばかりじゃん。忘年会兼ねて。
ミッチ: 内地は分からんけど、ここでは、忘年会と新年会は別物なんですよ。
寿 美: あらら…
さとし: そんな訳で、4日に新年会をやることになりまして、これが招待状です。
と、なにもない招待状を渡す振りするさとしちゃんと、それを拒む千葉ちゃん。
さとし: この町では拒否できない「しきたり」になってますんで。
千 葉: じゃ、しぶしぶ受け取らせてもらいます。
と、千葉ちゃんが受け取る振りをしました。
先ほどから「クッ、クッ」と笑っていた寿美ちゃんでしたが、ここにきて本格的に吹き出してしまいました。
寿 美: あなたたち、本当に仲がいいのね。
美 和: 3年F組だからねー。チャミちゃん先生だって東京にいるでしょ?
寿 美: いるけど、「ここまでのは」いないわー。
と、一人、意味ありげに大笑いです。
佳 純: その笑い、どういう意味ですか?
元旦の昼時、外は小雪。
外まで広がる笑い声に、小雪が踊って見えます。
「北国ダンサー物語」(作:神元 誠)