この章はオリバーに大きな影響を与えた俳優、歌手、作曲家の話です。次回からFRED ASTAIRE、GENE KELLY、FRANK SINATRA、DEAN MARTIN、SAMMY DAVIS, JR.、MICHAEL JACKSON、ELVIS PRESLEY、UDO JURGENSの話を複数回に分けて紹介していきます。
【目次紹介】
“Music Was My First Love”
初恋は音楽
8. パフォーマーたち
The Performers
私の育った音楽環境の話に戻りますが、私にはいつでも水平線の向こうを見たがる癖があり、その水平線の向こうには、期待を裏切ることなく、学ぶに値する別の形の芸術がありました。一般的なダンスを考えると、バレエやステージ・ダンス、あるいはハリウッドのミュージカルといったものがとっさに私の頭に浮かんできます。
そうしたダンスと並行して、ボーカルのことや、ミュージシャンのことも浮かんできます。彼らはものすごい練習を重ねることで、素晴らしい歌声を披露する歌手や体を意のままに使いこなす偉大なバレエ・ダンサーたち、あるいは、本物の演技をする俳優などに一分の引けも取りません。私たちは、つい、背筋を伸ばしてしまいます。そこで私がいろいろ調べてみると、そこには私をゾクゾクさせるアイドルたちがいました。エンターテイメントの世界に。
私は自分の人生の要所、要所で、どうして世界のトップ・スターたちはその分野でトップになれたのか、どうやって自分だけの独自のスタイルを創り上げることができたのかということに興味を持ちました。私はいつでもスターに憧れ、そうした人たちの後を追いかけていました。私のちいさな書庫には、私が憧れた偉大な才能を持ったタレントたちの伝記文学、サイン、分析記事などが数えきれないほど収まっています。私のダンスの素晴らしいお手本であったフレッド・アステアの本なら何冊もあります。
サミー・デイヴィス・ジュニア（Sammy Davis Jr.）は、間違いなく時代を超えた偉大なアーティストですし、「２０世紀の声」と評されたフランク・シナトラ（Frank Sinatra）。ディーン・マーティン（Dean Martin）はクールな代表とされましたし、ウード・ユルゲンス（Udo Jurgens）は作曲家であり歌う詩人と評され、マイケル・ジャクソン（Michael Jackson）は現代のダンサーでミュージシャンですし、バーバラ・ストライザンド（Barbra Streisand）は世界で最も素晴らしいポップ歌手です。マリオ・ランザ（Mario Lanza）は私が知る限り、若い恋人役を実に見事にこなすオペラのテナー歌手で、私の感情を揺さぶる唯一の人です。
それゆえに、クラッシック音楽専門家の間では論議が起きてしまうのですが、彼の音楽に触れると、私はいつも鳥肌まみれになってしまいました。彼の音楽は、前述のピーター・マクスウェルが印象的な振り付けをしたことがありますが、それは私のボールルーム・ショーのベースとして役に立ちました。
そこで私は、二つの共通点があることに気づきました。ひとつは、他の人が持っていない何かを彼らが提供していること。そしてもう一つは、全員がお豊かな環境になかったことです。それどころか、全く逆で、かなり貧しい家庭環境の中で育っていました。彼らは全員、自分の才能と自分の総てを捧げて夢を実現し、社会的地位を手にしました。こうした人たちや他のスーパースターと呼ばれる人たちの経歴などは、ボールルーム・ダンス競技会の中にも容易に見ることができます。
それでは、私の人生にとても大きな影響を及ぼした人たちのことを、簡潔に書いて行きたいと思います。
原書の中の写真を持ってきました。
（上左）著者50歳の記念日にユーゴ・ストラッサーと。
（上右）ダンスバンドでピアノを弾くオットー（父方の祖父）
（下）祖父が作曲した夕べの祈り
7. 音楽なしじゃどうにもならない ⬅ ➡ 8-1. フレッド・アステアとジーン・ケリー