G067 頑張らないでうまくなる方法

投稿者: | 2020年10月17日

私たちは小さいときから「頑張る」ことを教わってきているので、ダンスが上手くなるにも、当然、「頑張らなければならない」と思ってしまいます。頑張って上手くなる部分がたくさんあるのは違いないでしょうが、世界のトップ・ダンサーや体の専門家によると、頑張らないで「最小限の筋肉を使う」とか「筋肉を軟らかく使う」ことを考える方がより効果的なようです。そうした話を幾つか紹介しましょう。

 

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❶最初に紹介するのは、「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」(オリバー・ヴェッセル・テルホーン著)からの一文です。

 

良いダンスをしようと思ったなら、最低限の努力でポスチャーを作り、いつでも自分がしたい動きのために必要な筋肉を自由に使えるようにしておくことが絶対条件となります。そうしておけば、多少バランスを崩しても自動的にバランスを取り直せるからです。体がバランスを保つための(正確には倒れないようにです!)助けを求めると、脳は他の筋肉に助けるよう指示するようになっているからです。

 

これを、崩れない程度の最小限の筋肉を使っていると、余った筋肉を「自分がやりたい動きのために使える」と言い換えることができるかも知れません。確かに、体中に力を入れていると動けません。そして、本当に上手な人たちを観察すると、余分な力が入っていないのが見えてきます。

オリバーさんの解説を詳しく読む → IL03 第1章 まっすぐ立ちましょう

 

 

 

❷「ダンサーのためのメンタル・トレーニング」(マッシモ・ジョルジアンニ著)の中から、マッシモさんのアドバイスをピックアップします。これらも筋肉と大いに関係しています。

 

  •  重いという感じで動くと、力強さを表わす効果があります。
  •  軽いという感じで動くと、浮いた感じを与えます。
  •  筋肉の力を使わずして、パートナーと踊りなさい。体の質量を通して動かすのです。

 

こうした、実に効果的な彼の考え方のマジックは「第2章ニーズの項」に出ています。

マッシモさんの解説を更に読む → 第9章 パートナリング/④体重/⑤呼吸

 

 

 

 

❸1932年発行の「モダン社交ダンス」(ビクター・シルベスター著/玉置真吉訳補/四六書院)から、次の一文を抜き出してみました。玉置真吉氏は昭和4年(1929年)発足した「JATD日本舞踏教師協会」の初代会長に就任しています。

 

「ダンスをよく踊ることは、善く動くことである。バランスと姿容を保ち、脚を正しく用い、踵と爪先を正しい場所に置き、筋肉の統御を続け、筋肉を誇張させず弛めて、脚部は足の付け根から時計の振り子の如く真直ぐに搖動し、骨折った様子を見せず、容易に見えるように動く、之がダンスなのである」。(P4)

 

この時代から筋肉を弛めて使うことを唱えていることを知りました。凄いですね!

 

 

 

❸最後は「ダンス――遥かに上手くなるための秘訣」(ジェレミー・チャンス氏寄稿/ダンスウイング誌全6回)の中の言葉です。アレクサンダー・テクニークからくるジェレミーさんのお話は説得力に溢れ、どんどん引き込まれていきます。

 

動きは緊張を増やしてではなく減らすことで変わります。動きは健康や精神状態に大きな影響を与え、有害な動きは、おおむね気づかない間に行なわれています。また、動きの質の違いが消化、呼吸、心臓の動きに影響を与えます。

 

緊張を増やすことで緊張をなくすことは出来ません。これはお分かりいただけると思います。ゆったり動きたいなら、当然、より少ない労力で動かねばなりませんから、頑張ってゆったり動くことなどできはしません。でも周囲を見回すと、どれ程多くの人がこの矛盾を行っていることでしょう。

「ダンス――遥かに上手くなるための秘訣」を読む → 「私とダンスとアレクサンダー・テクニークと」

 

新しいステップを習うときは誰でも緊張するものです。緊張しているところに「その緊張が習得の邪魔をします」と言われても、更に緊張して負のスパイラルに陥るかも知れません。そんなときは、深く呼吸をして、無理にでも笑顔を作ってみて下さい。案外、効果的です。(完全に自分を棚に上げた話ですが…)

 

ハッピー・ダンシング!