リバース系のステップが苦手なのでコツを教えてください。(茨城県 男性)
今まで個人的に、あるいはダンスファン誌を通じて多くの質問を頂きました。中にはとても初級レベルのものもありましたが、初心者にしてみると切実な疑問や質問に違いありません。そこで、頂いた質問のレベルで選別することなく記録に残します。お役に立てばうれしいです。なお、回答には現時点の考えに書き直していることもあります。
スタンダードを踊っているとき私たちは、「右回転も左回転も同じ」と無意識に思ってしまい勝ちです。しかも、スクエアに組んだままなのですから。でも、実は全く違うのです。男性は右回転と同じ気持ちで左回転をすると、女性が前に来て自分の前進スペースが塞がれてしまいます。そこで、そうならないためには、左回転では「回転しない」と思って出て行き、行った先で回転するのがコツなのです。
もう少しお喋りを続けましょう。同じようなことを話しますが、お付き合いください。
■それは誤解
例えばワルツのリバース・ターンに入るとき、男性にはこのような心理が働きます。
「自分の右側にいる女性を何とかしなければ、出て行かれない(=女性を回り込めない)……」
そこで男性が取る手段は、
- 女性の方に頭も体もなびいてしまう。あるいは、
- 「体を左にひねって出て行こう!」と考える。
残念ながら左回転におけるその考え方は間違いであり、誤解です。なぜなら、
- 男性が女性の方に頭も体も傾けてしまうと、1歩目の自分の左足にきちんと乗ることができません。
- 体を左にひねりながら出ようとすると、女性を自分の前に持ってくることになり、自分の進路を自ら塞ぐことになります。
よって、女性の方に傾いたり、「女性を何とかしよう」「何とか自分の前に持って来よう」としても失敗することになります。
■左回転の極意
では、どうすれば良いのでしょう? その極意はこうです。
先行フィガーの最終歩で、右足に寄せた左足をまっすぐ出し、その足を乗り越えることを考えるのです。そうすると、女性はついてきてくれます。
■ナチュラル・ターンは右回転でリバース・ターンは左回転
もう少し詳しい説明が必要な気がします。なぜなら、それほど多くの男性が、女性に惑わされている ―― もとへ(汗) ―― 左回転に惑わされているからです。かつての私がそうでしたし、今も時々そうだからです(汗)。
右回転も左回転も同じ「回転」なので、同じように踊ろうとしますが、そこには大きな見落としがあります。それはホールドの形です。
私たちのホールドは相手に対して少し左にずれている形をしています。男性から見て女性は右側にずれているので、男性右側が回転の内側になる右回転は案外自然に起こります。従って、この右回転では男性が「1歩目右足に出ながら」右回転を始めても、始めようとしてもトラブルは起こりません(勿論、進行方向は考慮しなくてはなりませんが)。右回転が「ナチュラル(自然な)・ターン」と呼ばれるのはこのためと考えられます。
これに対する左回転では、男性が「1歩目左足に出ながら」左回転を始めたり、始めようとすると、女性が自分の前に来て進路が塞がれてしまいます。出ていくスペースを失った男性は、何としても2歩目に出なければいけないと思って、更に体を捻じることになります。
お分かり頂けたと思いますが、左回転の極意は「1歩目左足を出した先で回転」なのです。女性がいる男性の右側が回転の外側になるので、まず女性を進行方向に後退させ、その上で、左回転するのです。やってみて下さい!
■「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」
競技をしている人には、より説得力のある世界のトップ・ダンサーの言葉を紹介しましょう。オリバーさんが書いた「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」にある「リバース・ターンの仕方( 第5章 回って、回って! )から)」です。
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左回転は、左カーブを描く中で行ないます。左回転は右回転とは違い、その前のステップから回転しようとするのは逆効果です。これには二人のポジションが関係しており、前のステップから回転しようとすると、女性が男性の前に動いて来てしまうからです。
では、前のステップでは何もしないのでしょうか? いいえ。男性がすることは、前のステップでスタンディング・レッグの筋肉の緊張を解放することです。すると、女性は受け身になった男性を通り越し、左カーブの中に先に入って行くことができるのです。男性はサイド・リードを使って女性に着いて行き、フリー・サイドを通して1歩目の最後で回転が起こるようにします(後退する人は、フリー・サイドを後方へスイングします)。この通り越す瞬間のことを専門用語で“コントラリー・ボディ・ムーブメント(CBM)”と言います。
女性にとり左回転で特に難しいのは、自分の右サイドが男性の方に入らないようにすることです。いつでも男性と並行にいる意識を持っていなくてはいけません。リバース系フィガーは複雑で難しい作りになっています。実際、“リバース(反対)” は“ナチュラル(自然)”の反対ですしね。ナチュラル系フィガーでは積極的に回転を起すのに対し、リバース系では回転が起きるのを待つ感じです。そのため、ナチュラル系を“アクティブ(積極的な)・ターン”、そしてリバース系“パッシブ(受身の)・ターン”ということができます。
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ハッピー・ダンシング!