G056 昭和の本「社交ダンス獨習」(カサニ著)

投稿者: | 2020年5月15日

「社交ダンス獨習」(カサニ著・瀧本二郎訳補/歐米旅行案内社/ 昭和5年(1930年)発行/定価2円50銭)をざっと眺めただけだが、この時点で興味深く思った点を記録しておこうと思う。

 

 

❶サントス・カサニ (Santos Casani) Who? 

氏の名前は「ボールルーム・ダンシング」(ビクター・シルベスター著)の次の一文の中に一瞬だけ出ている。その彼が書いた本の翻訳本が手に入って、とても嬉しい。

「1928年は風変わりな踊りの年でした。どれをとっても成功したものはなく、フォックストロットとクイックステップでは様々なバリエーションが紹介されましたが、どれも一時的に興味を引いたものばかりでした。ダンシング・タイムズはダンス協会と共同で、全英プロフェッショナル選手権を組織しました。この選手権ではマクスウェル・スチュワートがパット・サイクスと踊り優勝しました。

 

この選手権の予選は、ウェスト・エンドの人たちの興味を引こうと、当時人気の高かったダンスホールではなくホテルで開催されました。この目論見は結果的に失敗に終わり、競技会は大赤字になってしまいました。同年、そして翌年には、コロンビア・グラムフォン・カンパニーを代表してサントス・カサニが重要なアマチュア競技会をロイヤル・アルバート・ホールで開催したのでした」。

 

■参考映像:著者サントス・カサニ氏の映像です。

 

 

原書の範囲が分からない

翻訳者瀧本二郎氏は序言の最後で「本書は只だ原書を訳することを以って足れりとしないで、原著の他に難易多数のデサンを補足しましたから、社交ダンスをはじめて稽古する方にも、また、上達者へもご参考の効果が多大であると信じます」と述べています。「デサン」の意味が分かりませんが、原書と補足部分の範囲が明示されていないので、少々困惑。

 

 

❸クオーター・ターンを踊ってみる(下のPDF)

原書 (Self-Tutor of Ballroom Dancing)が発行された1928年当時のブルース、クオーター・ターンの写真と説明文。 今のクオーター・ターンと違うのが興味深いです。興味のある方は踊ってみましょう。

santos blues and waltz

 

 

❹ワルツのナチュラル・ターンを踊ってみる。

「右回転は6歩で完結します」の説明と足型図。(上のPDF)

この当時ナチュラル・ターンもリバース・ターンも6歩で1回転(360度)、つまり男性はLODに面して始め、LODに面して終わる踊り方をしています。この1回転360度の概念を変え、ナチュラル・ターンを壁斜めに始めて中央斜めに終わり、リバース・ターンを中央斜めに始めて壁斜めに終わる踊り方が現れたのが1927年。この革命的な踊り方は「ダイアゴナル・ワルツ」と呼ばれ、今、私たちが踊っているワルツです。

 

 

❺ワルツの解説が興味深い

次のように紹介されています。

santos waltz

 

 

❻用語解説というべき所で見つけた興味深い説明

1.ターンとは何か。

ターンと云えば完全な一回転でありまして360度をくるりと回転して最初の向きと同一の方向に向き還るのであります。この点を充分明瞭に記憶することが肝要であります。多くの人は半回転、即ち180度回転して反対方向に向くのが全回転であるかの如くに考えて居ますが、之は大いなる誤解であります。

 

2.矛盾運動

 (前略)社交ダンスのテクニックの説明に移る順序になりましたが、其の前に今一つ説明し置かねばならない重要なことがあります。其れはコントラ・ムーブメント即ち矛盾運動であります。之は単調な運動ではありますが、非常に重要な動作ですから、辛抱強く十分に練習して自動的動作となるまでにしなければなりません。

コントラ・ムーブメントが明瞭に認められるのは回転の場合でありまして、左右何れかの足を踏み出しても必ず、其の反対側の肩が前方に出ます。右へ回転しようと思ふて右足を前へ辷らし出せばそれと同時に左肩も前へ出されて、左肩が右足の上に置かれてあるかの様に右足の回転と同じに回転するのでありまして…(後略)。

 


 

なんか、楽しいです。 ハッピー・ダンシング!