G051 昭和の本が紹介するクイックステップ

投稿者: | 2020年5月11日

「社交ダンスの踊り方」(玉置真吉著/大泉書店/弐百円/昭和33年(1958年)発行)がどのようにクイックステップを紹介していたかが興味深く、記録として残しておこうと思います。(ほぼ原文のまま。漢数字は英数字に変えています)


 

クイックステップ QUICKSTEP

クイックステップという音楽はありません。これは、英国ではフォクストロットの曲で踊るダンスのうち、テムポのゆるい曲に合せて踊るものを「フォクストロット」または「スロウ・フォクストロット」Foxtrot, Slow Foxtrot(フォックストロットという場合の方が多い)と称し、速い曲に合せて踊るものを「クイックステップ」という習慣になっています。フォクストロットは英国でも競技会に用いられ、ダンスを楽しみにする人やパーティ・ダンスには用いないのと、その技巧がむつかしいので、本書では略して、グイックステップだけを説明します。

フォクストロットの音楽とダンスとは同時に世間にひろまったものではありません。1900年の初めから1912,3年にかけて南部の黒人の奏していたジャズがだんだん北に伝わり、ちょうど1913年頃ニューョークで流行しかけていたフォクストロットのダンスの伴奏をつとめるようになり、白人の音楽家もこれを奏するに至り、いつのまにかジャズ音楽はフォクストロットとなってしまいました。 1914年第一次世界大戦が始まり、 1917年4月アメリカは連合軍に参加、多数の兵士が欧州にわたり、そのためフォクストロットのダンスと音楽は欧州全体に流行するようになりました。

 

英国のおもなオーケストラの奏するバンドはスロウは1分間28~32小節、クイックは1分間48~50を基準としていますが、アメリカは標準テムポが無く、色々な速さに演奏します。そして、アメリカ人は遅い曲は遅いなりに、速い曲は速いなりに、自由なステップを使って、半ばステップを楽しみ、半ば音楽を楽しみます。

 

レコードは沢山出ていますが、いまそのうちから練習にやさしい、すこし標準よりゆるいものを2,3御紹介しましょう。標準テムポのものは、そのような銘を打ってでていますから、すぐ分かりますので省きます。

•コロムビア、M 665 マスカット・ラムブル (45)
•コロムビア、M 462 オー・ベイブ (42)
•コロムビア、M 478 マホガニー・ホール・ストムプ (45)
•コロムビア、M 648 国境の南 (40)
•コロムビア、L  42 メランコリイ・ラプソディ (45)
•コロムビア、M 586 そんなのないよ (40)
•コロムビア、M 278 ワン・オクロック・ジャムプ (42)
•コロムビア、M  73 リンゴの木の下で (46)

 

 

音楽は4/4拍子に奏しますが、ブルースよりは大分速いので、膝を伸ばし、歩幅をずっと小さくして踊ることが必要です。このダンスの標準テムポは1分間50小節前後となっていますが、本をたよりに研究するには音楽が速すぎるので、右に選んだレコードは44小節前後のものばかりにしました。このテムポは“スウィング・テムポ”と一般に称し、アメリカ人など最も喜ぶものであり、著者が初心者の講習に使って一ばん効果のあったものばかりです。

 

ブルースと同じくQは1拍、Sは2拍に取りますから、SQQでもQQSでも1小節の音楽を費やします。

 

(「社交ダンスの踊り方」(玉置真吉著)より)


 

本書で紹介されているフィガーは次の通りです。

  1. クオーター・ターンズ(この項にはコンパクト・シャッセ、ヒール・ピボットの解説があります)
  2. ナチュラル・ターン(この項では「ヒール・プル」の説明をしつつも、「技術的に難しく、競技選手などもヒール・プルを使わないので、本書のナチュラル・ターン後半はブルースのナチュラル・ターン後半にしている」との説明があります)
  3. シャッセ・リバース・ターン
  4. クロス・シャッセ
  5. プログレッシブ・シャッセ
  6. フォワード・ロック・ステップ(「クロス・ステップ」の別名もあるとの説明があります)

必要に応じてCBMP、OP(アウトサイド・パートナー)、PO(パートナー・アウトサイド)の説明がきちんとされています。

 

それにしても、こうした古い本を開く度(数冊しか持っていませんが)、著者の溢れるばかりの情熱が感じられます。同時に、幅広い知識に驚くばかりです。

ハッピー・ダンシング!