IL13 第8章 踊りのヒント(前半)

投稿者: | 2020年5月1日

「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」(白夜書房/神元誠・久子翻訳/2011年)を公開します。原書は2009年に英国のDSI社から出版された”THE IRVINE LEGACY” (Oliver Wessel-Therhorn)です。

 

目次

書籍「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」

 

 

第8章 踊りのヒント
Dancespecific Tips and Tricks

 

ワルツのヒント

スロー・フォックストロットのヒント

 

 

 ◆ワルツのヒント◆ 

ワルツは回転をしながら横へスイングするダンスです。そこがこの踊りの基本的な特徴です。そのボディ・スイングの軌跡が正しくなければ、3歩目で脚を閉じるのはギャンブルのようなものです。自然な足の形、ゆったりとした動きで脚が閉じられていれば、そのダンサーは本当に正しいアクション、正しいバランスで踊っている証拠です。

 

― プレッシャー・ライズとスイング・ライズ ― 

他のボールルーム・ダンス同様、テキストからライズやロアーのタイミングを学ぶ事はできますが、残念ながら、その方法については書かれていませんので、ビルの教えを書いて行きましょう。

 

まず生徒に両足を揃えて立たせ、片足の指でフロアをプレスさせます。次に、両足の指でプレスさせます。プレスすることで足の靭帯が活性化するからです。そして足の靭帯が活性化すると連鎖的に足首、そして脚の下部の筋肉も活性化します。この下方へのプレスがボディを持ち上げることをプレッシャー・ライズといいます。

 

ライズの二つ目のタイプとしてスイング・ライズがあります。これは音楽の1拍目の終わりで、フロアを圧縮している脚からボディを開放することで得られます。この時のフロアを圧縮することを「インプット」、続く解放を「アウトプット」という事もあります。フロアに対する下方へのプレスから生じるライズはプレッシャー・ライズですが、スイング・ライズの2拍目から3拍目にかけても、このフロアへのプレスが使われています。

 

ライズだけではなくロアーの体の使い方やボディ・ウェイトのコントロールも非常に重要です。ロアーのアクションはトウから始まり、次に足首、そして膝で圧縮して行きます。コントロールの利いたロアーをすることは必須で、ダンサーのバランス、タイミング、そして筋肉のコントロールなど、全体的なことに影響を及ぼします。

 

“ロアーから計算してステップ、そしてスイングせよ!”

 

同様に重要なのがダウンスイングの捉え方です。ビルは、ムーブメントの特性は、このダウンスイングから生み出され、正しい方法と正しいタイミングでダウンスイングが行なわれれば、その当然の結果としてアップスイングは起こる、という考えを持っていました。

 

3歩目で足を閉じるフィガーであっても、足を開くオープン・フィニッシュのフィガーであっても、1小節で3歩ステップするフィガーを踊るには、このようなワルツの特性に細心の注意を払うことが絶対に必要なことなのです。

 

 

 

― ペンジュラム・スイング ― 

さて、誰でもワルツにペンジュラム・スイングがある事は知っていますが、このペンジュラム(振り子)とは、ある高い地点から次の高い地点へスイングすることです。ペンジュラム・スイングはゆっくりとしたダウンスイングから始まり、加速し、一番低い地点で最も速くなります。そこから減速が始まり、アップスイングに変わります。

 

では、ダンスにおけるペンジュラムは、一体どの位の重さであるべきなのでしょう。骨盤付近の重さだと言われることもありますし、いや、重心の重さだ、なんだかんだと言われたりもしますが、実際の所はカップルとしての全体重 ― 二人で天井からぶら下がっている場面を想像してみて下さい ― これがペンジュラムの重さと考えられます。よって、私たちが踊る時、決して自分達の垂直なラインから外れて踊ってはいけないことがはっきり分かって頂ける事でしょう。

 

“このルールに例外はない!”

 

スイングで必要なことは、最初のステップを錨のようにしてフロアを捉えることです。そうすると反対のサイドが自由になり1歩目を通り越してスイングしていけます。西部劇で見かける酒場のドアを思い浮かべると良いでしょう。ドアの片側はしっかり壁に取り付けられていますが、もう片側は自由にスイングします。ダンスでも同じ事が言えます。具体例を示すと、ナチュラル・ターン前半では男性は右足をフロアに固定し、左サイドが自由にスイングできるようにするのです。音楽の観点からお話しすると、各小節の1拍目を前もって考えておくことが不可欠です。それをしておけば、1拍目でタイミングを外すことなくステップすることが可能になるでしょう。

 

 

 

― シャッセ・フロム・プロムナード・ポジション ―

最近では、シャッセ・フロム・プロムナード・ポジションで足をきちんと閉じているカップルを見る事が稀有になってしまいました。なぜなのでしょう? アレックス・ムーアの本(ザ・ボールルーム・テクニーク/以前のリバイズド・テクニックを指す)にはっきりと書かれているではありませんか ― (男性は)両足を壁斜めに向け、LODに沿って踊る ― と! 

 

これが絶対必要なことなのです。なぜなら、女性は男性を通り過ぎて行く必要があるからで、それを間違って、男性が壁斜めに進んでしまうと、男性は女性の通り道を遮ることになり、女性は間違いなくつまずいてしまう事でしょう。足を閉じるには、横にステップするアクションが必ず必要です。そして、足を閉じたなら、次のステップは少し前に出して(壁斜めに)進行方向を変えます。この足は距離を稼ぐためのものではありません。単に、次に起こるロアーをコントロールするために、体重を乗せるだけで良いのです。

 

 

 

― フォックストロットからの応用 ― 

ワルツには、スロー・フォックストロットのフィガーから応用されているフィガーが入っていることも知っておきましょう。良い例として二つあります。ひとつはオープン・ナチュラル・ターンで、もう一つはランニング・ナチュラル・ウィーブです。両方とも、もともとの踊り方ではクローズド・ポジションからスタートしていました。

 

スロー・フォックストロットで踊る場合、初めの部分で女性は男性を通すためにヒール・ターンをします。こうしたヒール・ターンはスロー・フォックストロットの特色のひとつとなっている訳ですが、それがワルツで使われるとなると、ワルツの特色であるスイングを作り出さなくてはなりません。プロムナード・ポジションから始める場合は簡単です。ヒール・ターンをしないからです。しかし、最近の振り付けは、こうした簡単な基本のルールを無視しがちで、プロムナード・ポジションではなくクローズド・ポジションで始めたにも拘らず、ヒール・ターンをせず、ワルツのスイング・アクションだけに専念しているのです。その結果、力ずくの回転となり、常に雑な足運びになってしまっています ― 少なくとも、女性側はそうなります。

 

他のダンスからのフィガーを転用する場合には、元のフィガーの特徴を最大限に尊重しつつ、踊ろうとするダンスの特徴に変換していかなければなりません。

 

 

 

― アウトサイド・スピンの秘訣 ― 

次の秘訣は、アウトサイド・スピンの足の使い方についてです。これを充分理解するには、まず、テキストに書かれている説明は、一つのアクションが終わった後の足のポジションだという事を知っておかなくてはなりません。つまり、足を置くときは、必ずしもその通りではないという事です。

 

オープン・ナチュラル・ターンの3歩目からアウトサイド・スピンに入る場合、男性はオープン・ナチュラル・ターンの3歩目右足の上でコントロールしながらヒールをおろし、次にアウトサイド・スピン1歩目をステップして左ヒールを下ろします。そのとき、右足の上に体重を下ろして行きながら回転し、その回転の間に、徐々に左足に体重を移します。そうした動きの中で、この一種のスイッチ・ムーブメントが行なわれます。

 

1歩目左足の回転が終わる時点で左足は右足より少し後ろにあり、次の右足は、右回転を継続しながら、小さく前方にステップします。この回転が継続していることを忘れないで下さい。右足のフットワークはHT(ヒール、トウ)で、僅かなライズが含まれています。また、この足はスピン・ターンの1歩目(ナチュラル・スピン・ターンの5歩目)と同じ動きですから、次の左足の置く場所は、ボディの下、僅かに横方向になります。

 

女性の踊り方を見てみましょう。オープン・ナチュラル・ターン3歩目で、男性のロアーに合わせて、左足の上にロアーします。当然次の右足は(その前の左足にロアーしているので)ヒールから出ます。フットワークはHT(ヒール、トウ)です。そして、必然的に右回転が継続する中でアウトサイド・スピンの2歩目左足を右足に閉じるようにステップします。左足はトウで回転していますから、次の右足は当然トウ・リードになります! トウで出てからヒールがフロアに下りていきます。

 

こうした作業は複雑に聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。是非、1歩1歩確認しながらやってみてください。

 

 

 

― フォーラウェイ・リバース&スリップ・ピボットの秘訣 ― 

フォーラウェイ・リバース&スリップ・ピボットはとても人気がありますので、これについても秘訣を書いておきましょう。

 

フォーラウェイ・リバース&スリップ・ピボットではフットワークも良く間違われます。これを踊る際にとても重要な事は、男性は自分のウェイトをしっかりトウの方に持って行くことです。男性が2歩目に入る所をこんな風に想像してみてください ― 男性の右足トウの下にはコインがあります。そのコインを3歩目から4歩目のスリップ・ピボットまで引きずっていくのです。そうすれば、2歩目右足のヒールを下ろすばかりか、トウまで上げてしまうという、そうした広く行なわれている間違いを避けることができるでしょう!

 

◇ ◇ ◇

 

三笠宮殿下との晩餐会で。ビル&ボビーは日本でも非常に人気がありました。

 

 

 

◆スロー・フォックストロットのヒント◆

スロー・フォックストロットについてのヒントは、第4章の中でライズ・アンド・フォールという形でたくさん書いていますので、そちらも再度読んでみてください。

 

― タイミングについて ― 

最初にスロー・フォックストロットの基本的なタイミングについてお話ししましょう。ベーシックのリズムは“QQS”なのです! 試しに、普通にホールドして“SQQ”と歩いてみると、非常に難しいと感じますが、今度は“QQS”で歩いてみると、この方がずっと楽に動けるのが分かります。それはスロー・カウントの所に入っていくときにボディ・スピードが落ちていくからです。理論的な話をすると、スロー・カウントの終わりから次のクイックにかけてスピードを増して行かなければなりませんから、スローのステップの前に加速しておいて、クイックにかけて減速するのは理に適いません。

 

第1Qは加速のステップで、スローの後の第1Qとして自然に行なわれます。実際にカップルが第1クイックを小節の1拍目に合わせて踊っているのを1960年代の映像の中で見る事ができます。ところが、今日のスロー・フォックストロットでは最初の2拍を“S”で踊るため、60年代のチャンピオンの踊り方を見て「音楽的に合っていない」と批評する人が沢山いますが、それは、勿論、正しくはありません。今の若い人達は、1小節の前半(最初の2拍)が“S”としか知らないからなのですが、アクセントが置かれるのは第1Qのステップだと分かると、以前の人たちの踊り方が容易に理解できることでしょう。

 

テキストに書かれたフェザー・ステップの説明を見みると、そこには歩数が4歩あります! しかも、4歩目のフットワークが“HT”ではなくて“H”になっていますが、それはどういうことか、そのことについてお話しましょう。

 

まず、フェザー・ステップの男性の1歩目は右足前進から始まります。この足の上に体重が乗り切った時点で膝は伸びています。次に、早めのライズを起こし、回転が加わる中で加速が始まり、そのスピードが最も速くなるのは第1Qです。そこから、第2Qを通ってスイングが終わる所までボディ・スピードは徐々に落ちて行きながら、次のスロー・カウント前半に入って行きます。先ほど、「4歩目のフットワークが “H”になっている」と書きましたが、その理由がここにあります。つまり、ダンサーが次にリバース・ターンに入る時は、このフットワークは“H”から“HT”になり、足裏を転がしながら次の加速が始まるのです。

 

ワルツでは、ロアリングと加速が同時に起こります。ところが、このワルツの特徴がスロー・フォックストロットの中でおかしな形で使われ、スイングのイメージが歪められてスロー・フォックストロットの特徴であるロールス・ロイスのような動きが失われています。ワルツ同様に、ボディの片側を錨のように止めてスイングを行なう ― これが絶対に必要なことなのです。この原理はすべてのスイング・ダンスのスイング・アクションに適用されます。

 

この原理を守って踊ると、フェザー・ステップ ~ リバース・ターン ~ スリー・ステップは楽に踊れることでしょう。右サイドを固定して左サイドをスイングし、左サイドを固定して右サイドをスイングする。再び右サイドを固定して左サイドをスイングしたなら、最後に左サイドを固定して右サイドをスイング。これが秘訣です。

 

“ステップしたらスイングして、そのまま流れていけ!”

 

訳者のノート:

「フェザー・ステップが4歩」というのはISTDのテキスト(かつてのリバイズド・テクニック、現在のザ・ボールルーム・テクニック)を指しています。そのテキストでは、男性のフェザー・ステップは、①右足(HT)、②左足(T)、③右足(TH)、④左足(H)となっており、この4歩目は後続フィガーの1歩目と重なって書かれているため、フットワークは次にくるフィガーで変わります。次がリバース・ターンだと本文にあるように(HT)になり、次がスリー・ステップだと(H)になります。

 

 

― コモン・フォールト ― 

フェザー・フィニッシュ2歩目の置き方に関するコモン・フォールトを見てみましょう。

 

❶男性はリバース・ターン4歩目で右足を後退(この時、上半身を左回転させません)したなら、次に左脚部はボディの下をスイングし、右脚を通り越して壁斜めにポイントします。ここでコモン・フォールトが起こります。つまり、この左足は単にポイントするだけなのです! 完全に置いて体重を乗せてしまうと、女性はスイングして男性を通り越せなくなります。男性が壁斜めに踊って行ってしまうと、女性をブロックしてしまうからなのです。注意しましょう。

 

コモン・フォールトの中でも最も許し難いのは、女性がウィーブ・エンディングで犯すフットワークの間違いです。実に多くのカップルが、距離を伸ばそうとする余りウィーブの3歩目でロアーしますが、そのために、女性は4歩目左足をヒール・リードしてしまうことです。ウィーブ・エンディングとフェザー・フィニッシュは似ていますが、両者の間には重要な違いがあります。フェザー・フィニッシュは‘SQQ’と踊るのに対し、ウィーブ・エンディングは‘QQQ’ですから、ウィーブ・エンディングでのロアーはありません。従って、女性の4歩目のフットワークは‘T’でなければなりません。

 

所で、フェザー・ステップとフェザー・フィニッシュの違いは理解していますか? 非常に分かりにくいと思いますので、ここで説明しておきましょう。フェザー・ステップには右回転が含まれていますが、フェザー・フィニッシュは左回転です。アウトサイド・パートナーで終わる点は共通しています。もう一つお話しておきましょう。プロムナード・ポジションからのフェザー・ステップはありません。それはフェザー・フィニッシュになります。

 

❸ビル&ボビーが大好きだったバリエーションの一つに、エクステンディド・リバース・ウェイブがあります。これはリバース・ウェイブ(の6歩)にバック・フェザーとバック・スリー・ステップが加わったものですが、これが色々な問題を引き起こします。問題が起きてそれを解決しようとするとき、ダンサーは回転方向をしっかり理解しておくことが大切です。そして、そこが小節の変わり目だという事も。また、バック・フェザーでは右回転しますが、バック・スリー・ステップは左回転です。第5章で学習できていると思いますが、回転というのは常に同じタイミングで起こるわけではなく、バック・フェザーの右回転はその前のステップで始まりますし、バック・スリー・ステップの左回転はその1歩目の終わりに始まります。前者は積極的に、後者は消極的に行ないます。

 

エクステンディド・リバース・ウェイブでは男性がよくフットワークの間違いを犯しますので、間違わなくて済む大切なアドバイスをしましょう。男性は第1Qのステップではトウに踏みとどまります! 

 

女性が男性のフェザー・ステップとスリー・ステップを踊るときのフットワークは男性のフットワークと変わらないのに、なぜ男性が女性のフェザー・ステップとスリー・ステップを踊るときは女性のフットワークと同じではないのでしょう? 簡単なことです。女性には高いヒールがあるからです。高いヒールは体重を常に前方へと運んでくれますが、男性が女性と同じフットワークにしてヒールを使ってしまうと、ポイズが後方へ動いて行ってしまい、女性の前進を難しくしてしまうからなのです。

 

訳者のノート:

エクステンディド・リバース・ウェイブは、(1)リバース・ターンの3歩(SQQ)、(2)バック・スリー・ステップの3歩(SQQ)(ここまではリバース・ウェイブの1~6歩目です)と、(3)バック・フェザーの3歩(SQQ)、(4)バック・スリー・ステップ3歩(SQQ)から構成されています。

 

男性は(2)と(4)で女性のスリー・ステップを、(3)では女性のフェザー・ステップを踊りますが、オリバーは男性に向かって、「第1Qのフットワークは女性と同じTHではなくて、Tですよ」、とアドバイスしてくれています。女性は(2)と(4)で男性のスリー・ステップを、また(3)では男性のフェザー・ステップを踊るわけですが、男性が踊る時と同じフットワークで踊ります。

 

 

❹ もう一つ気になるのはチェンジ・オブ・ダイレクションです。テキスト的な話をすると、このフィガーへ入る方法はひとつしかありません。フェザー・フィニッシュだけです。つまり、チェンジ・オブ・ダイレクションの前に来るのは前進のステップという事です。それゆえに、テキストで述べられているチェンジ・オブ・ダイレクションの踊り方は美しく動きが繋がっていいます。

 

では別の入り方はできないのでしょうか? 例えばフォーラウェイ・リバース&スリップ・ピボットはどうでしょう。これを使った場合、チェンジ・オブ・ダイレクションの前には、左回転するピボットがきますから、チェンジ・オブ・ダイレクションのアクションに変化をつける必要が出てきます。通常チェンジ・オブ・ダイレクションの1歩目が前進する所を、(男性)左足のリバース・ピボットに代えてしまうのです。つまり、チェンジ・オブ・ダイレクションをリバース・ピボットで始め、回転が終わる所で右足をボディの下に置くと、チェンジ・オブ・ダイレクションの効果が得られます。でも、厳密には、チェンジ・オブ・ダイレクションとはいえません。

 

◇ ◇ ◇

英国、米国で放映のTV番組「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ」の人気ジャッジ、レン・グッドマン氏とアービン夫妻

 


(「第8章 踊りのヒント」つづく)