「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」(白夜書房/神元誠・久子翻訳/2011年)を公開します。原書は2009年に英国のDSI社から出版された”THE IRVINE LEGACY” (Oliver Wessel-Therhorn)です。
書籍「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」」
第6章 スウェイしよう!
We Sway
ボールルーム・ダンスを美しく見せるには、スウェイは欠かせない要素です。スウェイはスイングする中で、バランスをコントロールするために、また、タイミングをコントロールするためにも使われます。正しいスウェイを使うことは、ダンスの表現を創りだすのに素晴らしい助けになるばかりか、ダンスに華を添えてくれます。では最初に、スウェイとは何か、そして、それは如何に創り出されるかを見てみましょう。
― スウェイの定義 ―
スウェイを定義するならば、フロアに対する骨盤の向きと言えましょう。スウェイをすると、骨盤の片側は反対側よりフロアに近くなります。別の表現をすると、片方のヒップは下へと動き、その分もう片方は上に上がること、と言えます。スウェイができるのは、両膝、両足首が支えてくれているからで、スウェイの大きさはスタンディング・フットに対する脛骨の角度で決まります。また、スウェイで傾く方の体側は、縮まるのではなく、本当はストレッチされているのです。
― スウェイの種類 ―
スウェイには3種類あります。
1.ムーブメントと反対方向に作られる一般的なスウェイ
2.ブロークン・スウェイ
3.ムーブメントと同じ方向に作られるスウェイ
一般的なスウェイは、スイングで生まれる遠心力をコントロールするために使われますので、通常は回転の内側に向けて使われます。スウェイが始まるのはこの瞬間、即ち、フリー・ヒップが加速してスタンディング・レッグのヒップがロアーする瞬間です。
ワルツのナチュラル・ターンを例に取ると、スウェイは一番低い所、即ち、カウント1の終わりで始まります。そこでは、男性の右足脛骨の右足に対する角度が変化して行き、膝が僅かに緩み、右ヒップが下がって行き、同時に左ヒップが同じ分だけ上がって行きます。
“スウェイは骨盤から下で!”
スウェイを強調しようとしてボディまで曲げてしまうと、バランスを崩します。しかも、上半身は、もはやバランスの取れた垂直なラインではなくなっていますから、倒れないようにするために筋肉を不要に緊張させることになります。
ワルツ同様、スロー・フォックストロットのフェザー・ステップでもスウェイは1歩目の終わりに始まります。しかしそこは、スイングの一番低い所ではなく、フェザー・ステップが持つスイングのカーブの一番高い所なので、そこがワルツのナチュラル・ターンの場合とは異なっています。このようなスウェイは、タイミングをコントロールするために必要とされるため、フィガーの中でスウェイが自然と必要とされるタイミングで使われるべきなのです。
例を挙げましょう。バイクでラウンダバウトを回っているとすると、ドライバーは自然に円の内側に体を倒しますが、傾け加減はカーブの大きさとスピードによって変わります。ダンスにおけるスウェイのかけ方でも、同じ原理が働いています。
“必要なだけスウェイを使って良い。しかし、できるだけ控えめに!”
ライン・フィガーにスウェイは欠かせません。ライト・ランジを例に説明すると、スタートでは男性の左脛骨が僅かに左足のインサイドにかかってきます。体重が右足に移ると左脛骨の仕事を右脛骨が引き継ぎ、やはり、右足のインサイドの方に角度を変えて行きます。この時には両足の上に両ヒップが乗り、ライト・ランジとして正しいスウェイがかかり、ラインができあがります。
次はブロークン・スウェイです。これは、もう一つの形のスウェイですが、そう呼ばれる訳は、一般のスウェイの時よりも、肋骨の一番下から骨盤の間でのスウェイが大きいからです。ブロークン・スウェイは、スロー・フォックストロットのチェンジ・オブ・ダイレクション、あるいはワルツのヘジテイション・チェンジなどで使われます。
ムーブメントと同じ方向に作られるスウェイは滅多に使われることはありませんが、あることはあります。典型的な例としてはホバー・フェザーがあります。このフィガーでは、男性は左への進行方向に対して左スウェイを使いながら始まります。
3つのスウェイについて説明してきましたが、スウェイを忘れて楽しく華やかなボールルーム・ダンスを踊ることは絶対できません。スウェイには踊りに表情を与えてくれるだけではなく、バランスをコントロールする働きもありますから、誤ったスウェイの使い方をするとバランスを崩すだけではなく、踊りの魅力も消し去ってしまいます。
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ボビーとタンゴを踊る私