IL08 第4章 継続的な上下運動

投稿者: | 2020年4月27日

「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」(白夜書房/神元誠・久子翻訳/2011年)を公開します。原書は2009年に英国のDSI社から出版された”THE IRVINE LEGACY” (Oliver Wessel-Therhorn)です。

 

目次

書籍「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」

 

 

第4章 継続的な上下運動
A Continuous Up and Down

この章ではダウンスイングとアップスイングを理解して貰うために、ライズとロアリングに触れて行こうと思います。

 

― ロアリング ―
スイング・ダンスにおけるロアリングには幾つかの目的があります。それを知るために、ロアリングとは何かという定義とその機能からスタートしましょう。

 

ロアリングすると足に対する脛骨(けい骨)の高さは縮まり、フロアに対するプレッシャーが増すことで静的エネルギーが蓄積されます。この静的エネルギーが放出されると運動エネルギーに変わり、私たちは空間に動き出して行けるわけですが、そのためには、ボディが体重を運ぶ足の上にきちんと垂直になければなりません。足の上から外れていてはいけないのです!このロアリングは膝を曲げることと良く混同されますが、二つは全くの別物です! 効率的に力を使って動くには、膝の曲げ方と筋肉の関わり具合を知っておく必要があります。試しに、車のアクセルのような感じで脛骨を前に押し出してみましょう。できるだけ長く膝は曲げないようにしてください。膝を曲げないでも脛骨を倒して行けないわけではありませんが、限界は概ね膝頭がトウの上に来る辺りでしょう。

 

膝をどんどん曲げていくと、膝の筋肉では支えきれなくなって筋肉組織の通常機能が失われると、腿の筋肉が体重を支えにかかります。その結果、脚部の筋肉は通常よりも締め付けられるため、自由なスイングが妨げられてしまいます。膝が自然な範囲で曲げられているときは膝の窪みに反応を感じるでしょうが、それ以上に曲げていくと、その反応は自動的に消えていきます。

 

 

つまり、解剖学的に見ると、ロアーには紛れもなく最大値があるということで、もう少し明確に表現すると、膝を曲げるには限界があるということです。ですから、もっとロアーしなさいと言うアドバイスを受けた場合、一般的には、もっと深く膝を曲げる事ではなく、もっと長くスタンディング・フットの上にいて、できる限り長く静的エネルギーを蓄えられる状態にいなさい、という事なのです。

 

高い状態からロアーしようとする場合、最初の仕事はスタンディング・フットのヒールを下ろすことです。その次にスタンディング・レッグの膝を曲げて行きます(第3章も参照のこと)。要約すると、高い状態からロアーするには2段階あり、(1)ヒールをフロアに下ろす、(2)次に膝を曲げる。その両方とも、その場で行います。

 

 

しかし、このロアーのアクションにも二つの例外があります。

 

例外1.ウィスク・ポジションでのロアー

男性の左足(女性の右足)がウィスク・ポジション(足をクロスした状態)にある時は、普通の時のようなロアーするスペースが無いため、スタンディング・フットのヒールがフロアにタッチし、その場で膝を曲げることができません。その代わり、膝を曲げ始めるときには既に、体は次のポジションへと動き始めます。

 

例外2.シャッセからクイック・オープン・リバース・ターンに入るときのロアー

シャッセとクイック・オープン・リバース・ターンをつなぐ1歩のステップは、アウトサイド・パートナーにヒール・リードで出て行きますが、このステップはスイングしてどんどん進む目的のものでもありません。シャッセの最後で男性の左足ヒールがフロアに下りますが、この時は、レベル0の形(「第3章 君の足は大丈夫」参照)ですから、次にアウトサイド・パートナーに出て行く繋ぎのステップ(男性右足)はヒールからになります。この右足の上で段階2のロアリング、即ち、膝が曲がり始め、通常のスイングが続きます。

 

 

 

― ライズ ―

基本的にライズには次の3種類があります。

①スイング・ライズ
②プレッシャー・ライズ
③ボディ・ライズ

 

 

①スイング・ライズ

通常のスイングによって自然に生み出されるライズ(例:ワルツのナチュラル・ターン、スロー・フォックストロットのフェザー・ステップ)。こうしたフィガーでは、正しいスイングの動きを通して、ライズがいつ起こるか、また、どの位の大きさのライズが起こるかも明確に分かります。ワルツのナチュラル・ターンをもう少し詳しく見て、ライズに関する幾つか技術的なことをクリアにしましょう。

 

ダンスのテキストには「1の終わりでライズを始める」などと書いてありますが、いったい、1の終わりとは何でしょう? テキストにはそうしたことが1歩1歩について書かれていますから、そうした手順をすべて理解しておく必要があります。また、一つのフィガーが技術的に何を指すのかも知っておきましょう。テキストにも書かれていますが、一つのフィガーの定義は、足が揃ったクローズド・ポジションから始まりクローズド・ポジションで終わる動きのことです。

 

クローズド・ポジションからナチュラル・ターンの1歩目が始まり、左足が再び右足の横に揃った時点が「1の終わり」で、そこからライズが始まります。この時の脚部の動きに関する技術的なことについては第3章で触れています。1歩目の終わりに両膝が緩むと、次に行なうべき事は「レベル0」の状態に戻ることですが、スタンディング・フットのヒールはまだフロアから離れていません。

一方、ボディは、二歩目の左足(親指のインサイド・エッジでフロアを捉えに行こうとしている)に向けての動きを開始しており、この左足に全体重が乗るとスイングは完了し、左足でのライズは両足が揃うまで継続します。これが「2と3でライズを継続」の意味です。

 

1歩目のヒールがフロアから早く離れてしまうと、ライズが早く起こるため、スイングの大きさが大幅に制限されてしまいます。スイングの曲線は短くなり、ワルツで求められるペンジュラム・スイングの流れが遮られてしまいます。

 

スロー・フォックストロットのフェザー・ステップでは、ステップ1の終わりで脚部は既に伸びていなければなりません。その時点で膝がまだ緩んだ状態だとすると、それは技術的には「1の終わりでライズを始める」になってしまいます。それとは異なり、フェザー・ステップにおけるライズは「1の終わりでライズ」なのです。この違いは大きく、当然、動きにも大きな違いが生じます。フェザー・ステップの男性3歩目右足はヒップからスイングして行きますが、この足が左足を通過する時、左足はボディを更に進行方向へと運んでいます。そして、体重が移ろうとするときの右足は「伸びて」います。


 

②プレッシャー・ライズ

これはその場で行なう足のライズの事で、ナチュラル・スピン・ターンやインピタス・ターンで行われています。プレッシャー・ライズは、また、女性にヒール・ターンのリードをするときの男性のリーディング・ステップでも使われます。男性は女性にヒール・ターンさせる時点で、自分の体重は足裏を転がってボールへ移動しており、かつ、次のステップはスタンディング・フットの隣に来ています。つまり、その場でライズしているのです。このアクションは女性にとって、それ以上後退しないというメッセージとなって伝わります。別の例としては、ホバー・コルテがあります。ホバー・コルテで行われるプレッシャー・ライズは、このフィガーでの見せ場なのです。

 

プレッシャー・ライズの控えめな例としてはワルツでのシャッセ・フロム・プロムナード・ポジションが挙げられます。シャッセのライズは基本的にはスイング・ライズですが、実質的なスイング・ライズは両足が揃った時点で完了していますから、そこから男性は右足の上で僅かなプレッシャー・ライズをして左足を横へ押し出します。両足が開いた時点では、まだ、左足に体重は乗らず、フロアを軽くタッチしている感じです。それから左足に体重を移してロアーのアクションに入ります。ここで使われるプレッシャー・ライズは、ダンスを見ている人には、スイング・ライズとしか写りません。

 

シャッセの2~4歩目の継続的なライズをビルは次のように表現していました。

 

“上がり・続・ける!”

 

 

 

③ボディ・ライズ

説明するのが難しいのですが、ボディ・ライズとはスイング・ライズやプレッシャー・ライズを伴って体の中心(インナー・マスル)が伸びて行くことです。感覚的には息を吸い込む感じに似ていますが、勿論、それとは関係ありません。

 

おへそのすぐ後ろに感じられる場所を「スポットX」とすると、その「スポットX」を引き上げるイメージです。しかも、胴体は持ち上げずにです!

 

ボディを高いビルに見立てると視覚化しやすいかもしれません。「スポットX」はエレベーターで、それがビルの中を上下する感覚です。

 

このボディ・ライズの要素なくしてスイング・ライズもプレッシャー・ライズもあり得ません。例えば、フェザー・ステップでの女性はボディ・ライズのみ使いますが、これは女性が後退のウォークしかしておらず、この1歩から次の1歩へ移るときは、前足のヒールと後ろ足のトウがフロアに着いた状態にあるからです。このため、男性のライズ・アンド・フォールにも制限がかかり、“1の終わり”の最も高い位置であっても、スタンディング・フットのヒールはフロアから僅かに離れている程度に過ぎません。ですから、フェザー・ステップでは男性もボディ・ライズを意識しなくてはならないのです。

 

良いボディ・ライズの必須条件は、フロアに対してボディ・ウェイトが強くあることです。したがって、プロムナード・ポジションになろうとするときは、垂直なボディ・ラインをスタンディング・フットの親指の真上に持っていくことです。そして、トウでフロアを押し付け、「スポットX」をライズさせます。

 

“伸び上がるために立て。進んで行くためにではない!”

 

ビルのこの説明は、隣の写真からはっきりと見てとれるでしょう。それだからこそ女性も、カーブを描いた自分のボディの中でボディ・ライズすることが可能になるのです。

 

 

(左)ボビーと私の仲を表す写真 (右)競技会の感想を私に伝えるボビー

 


(「第4章 継続的な上下運動」つづく)