G045 サンバの歴史

投稿者: | 2020年4月20日

今まで調べたサンバの歴史を記録しておきます。

 

「熱心なダンサーへ贈る読むダンス用語集」より

ラテン種目のひとつ。音楽は4/4拍子で強いダウンビートのあるブラジル音楽で、1小節に48~56小節くらいの速さで演奏されます。基本のリズムは(1a2、1a2)。ブラジルで発生し、国の踊りになっています。リオのカーニバルではサンバの様々なバージョンが踊られます。本来のサンバの特質を出すには、明るく、いちゃいちゃした、喜びに溢れた表現をします。今日の社交ダンスのサンバに使われている多くのフィガーではペルビック・ティルト・アクション(腰を傾ける動き)を用います。

◆サンバ(あるいはメセンバ)はブラジル、バヒア地方のアフロ・ブラジリアンの踊りで「祈る」という意味です。異なる人種のステップや動きが混ざり合い、1885年には『優美なブラジルの踊り』と称されたZemba Quecaとなり、その後Mesembaとして知られ、1900年代になりマシーシ(Maxixe)と混ざり今日のサンバとなりました。サンバは「南米のワルツ」のニックネームを持ち、 ボサノバはサンバから派生したものです。(Street)

◆語源辞典で調べると上の説明とは少し違っていましたのでそれも紹介します  ― 「アフリカ起源の踊りZembaでポルトガルの踊りのひとつZambacueca の名前が短くなったもので、この踊り自体は、グロテスクな踊りの意味の Zambapaloから変形したものと思われます」。

◆サンバ発祥の地ブラジルの国名は現地に生えていた木、ブラジルウッド(Brasilwood、和名ブラジルボク)に由来します。ブラジルはポルトガル語で「赤い木」の意味で、それは、この木からは赤い染料となる紅色色素(ブラジリン)が取れるからです。それがそのまま国名になりました。

 

 

❷昭和の本が紹介するサンバ

「社交ダンスの踊り方」(玉置真吉著/大泉書店/弐百円)。昭和33年(1958年)発行のダンスの本が紹介するサンバが興味深いので記録として残しておこうと思います。

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  サムバ THE SAMBA

サムバはブラジルの国民舞踊であります。このダンスは1905年にはマシシ Maxixe という名で同じラテン語系の言葉を話すパリに伝わりましたが、この頃は社交ダンスというよりも、展示用ダンスとして持てはやされていました。アメリカではやはりその頃マシシが一部の人に踊られていたらしく、 ニューマンの1913年版の書物にその踊り方が記されています。1920年世界大戦の終った直後マシシよりはリズムの強いサムバというダンスが欧州に流行し、昭和の初年我国にダンス・ホールができ初めた頃パリ帰りの人達はよくサムバを踊っていました。

音楽は 2/2に奏され各拍に強いアクセントを持っていますが、テムポはすこし速いので、S歩が多いという特色があります。音楽は1小節を2拍子に数え、多くはSSとカウントしますが、稀にはSQQとカウントすることもあります。

ブラジルは南米大陸の東北部に位する世界第3の大国で、面積は850万平坊キロ (わが国の23倍) で南米大陸の半分を占める大国であるのに人口は僅か5,700万でわが国の6割しか住んでいないという人口の稀薄な国で、国土の大部分は密林が多く北部のアマゾン川沿岸は人跡未踏のセルバが大部分を成している。南部はやや開け、首府リオ・デ・ジャネイロは人口240万の大都会であり、その南方のサン・パウロ (人口240万) など、その他大小の都市も散在していて、文化も開けています。

国がこんなに広くても密林や山地が多く、北部のアマゾン地域の中心は赤道が中央を貫いていて人口がすくないので、交通も不便であるから、全国的なダンスなどというものはありません。サムバもこの国の代表的なダンスとはいうものの、地方によって大分ちがっているのです・

サムバの踊り方については色々なものが紹介せられていますが、ここにはわが国でいちばんよく使われているものを記しておきます。このダンスは西印度列島のダンスと違った性格を持っています。その特色を箇条書きにして見ると次のようになります。

 

バウンス(Bouncing movement )
バウンスとはテニスのボールが地面に落ちてはね上るような運動であります。このダンスのステップは始めに膝を曲げて全身を床に近く沈め、次に膝を伸ばして上体を高くすること、丁度テニスの球が地面に落ちてはね上る様子に似ています。これはすこしむつかしいけれども、このダンスの重大な特色ですから、充分練習して自由にこなすように心掛けることをお薦めします。

 

スウィング(Swinging movement) 
次の重大な特色は身体を時計の振子のようにスウィングすることであります。このスウィンギング・ムーヴメントは、足が前方にステップしたときは全身を後にスウィングし、足が後方にステップしたときは全身を前方にスウィングしてその特色を表現します。そしてこのスウィングは腰のところで折れることなく、全身が真直ぐのままで前にも、後にもスウィングすること、ちょうど時計の振子のような形に行うのです。

 

スウェイ
これは廻るときに用いるものですが、その特色は腰から上を、ステップした足と反対の方向に傾けるもので、ナチュラル・ロールとリヴァース・ロールのときに主として用いられます.

以上はサムバの特色ではありますが、これをあまり極端に用いてはいけないので、どのムーヴメントもただこのダンスの性格を表現するに足る程度にすべきものです。

 

組み方
男女はお互にどちらにもずれないように正しく向き合い、胸の間を掌(手首から指先まで)の間だけあけてPalm span 男子の右手は婦人の左側からすこし背に廻し、婦人は左手を男子の肩と肘との中間に置きます。男子の左手と婦人の右手は、二人とも肘を直角に曲げ、肘から掌までを密着し、お互に肘を肩の高さに張出し、掌を頭の上まで上げます。ブラジルの踊り手は男女とも肘を直角に曲げ、肘から掌までをピタリと附けあい、掌もピタリと並行につけて踊ります。私の経験ではブラジルの組み方は非常に性格的でよいかわりに、変化のあるステップをするとき二人の手が離れる不便があります。しかし社交ダンスとして簡単なフィガだけを続けるなら、この方が地方色豊かになってかえってよいと思います。

(以上「社交ダンスの踊り方」より)

◇ ◇ ◇

 

 

❸マシーシ/マシューシュ(Maxixe)

別名ブラジリアン・タンゴ。1870 年代にリオデジャネイロで生まれ、サボテンのとげからその名がつきました。ポルカやハバネラにルーツを持ち、マシーシの原型はツー・ステップとある種のタンゴのステップを混合し、それにつなぎのパターンが入っていました。キャッスル夫妻は自称ブラジリアン・マシーシを踊り、それはサンバに似たものでしたがタンゴのように踊るダンサーもいました。マシーシを踊るには、頭と腕を静かにし、特にバウンスをしないよう注意が払われました。

 

■ Maxixe ‐ Samba(ユーチューブより)

サンバはマシーシから発展しましたが、この動画は1914年頃のマシーシを再現し、そこから今日のサンバに繋げています。最初に流れる音楽の曲名はサンバのフィガーにもある「コルタ・ジャカ」で、踊りに合うようにテンポなどをアレンジしているそうです。

 

■初期の Maxixe or Samba(ユーチューブより)

(現時点で)撮影年代不明の映像。投稿者 Richard Powers 氏は40年以上ダンスの歴史を教えていますが、彼の説明によると、「この映像はマシーシにも似ているしサンバの要素も入っている。女性の格好は1914年頃に思えるが、マシーシがパリに伝わった1912年当時のマシーシの資料にある踊り方とは合わない。この映像について知っている人がいたら教えて欲しい」と書いています。サイレントの映像に、リチャードさんがオリジナルのマシーシの音楽を合わせたそうです。

 

ハッピー・ダンシング!