#023 私の好きなレクチャー8”Waltz” by Marcus & Karen Hilton

投稿者: | 2020年4月5日

2008年に行われたイタリアのキャンプ(Happy Training Italy)でマーカス&カレン・ヒルトン(Marcus & Karen Hilton MBE)がワルツのレクチャーをしました。このレクチャーの内容を書き起こし、「私のダンスノート(&日常)」で2013年6月から7月にかけ10回にわたり紹介したことがありますが、今回は書き起こし部分を増やし、映像と共に記録として残します。

 

サークル活動をしているだけだと、なかなか世界のトップダンサーのレクチャーに触れる機会はないと思いますので、この資料が参考になればと思います。でも、皆さんの中には「レクチャーは競技選手対象だし、雲の上の世界チャンピオンの話しだから自分のレベルに関係ない」と考えている人はいませんか? 

決してそんなことはないことをありません。確かに私たち趣味のダンサーより参加者のレベルは少し(笑)上ですが、やることは同じです。拙書「社交ダンスがもっと好きになる魔法の言葉」(白夜書房)の最後の最後に「基本の考え方」というコラムを書きましたが、このこと、即ち「やることは同じ」なのです。

 

今回もレクチャーの書き起こしを読み返したり追加したりしていると、背筋をピンと伸ばしている自分がいました。

  • 私が書き起こししていない部分でご大切と思った所は、ご自身のノートに記録しておきましょう。(カッコ)内は、話の流れが分かるようにした私の補足です。
  • 音声は日本語が入っていますが、英語も聞き取れるレベルになっています。
  • 映像はこのブログ内のみでの閲覧として下さい。コピー使用をしないようお願いします。

 

HAPPY TRAINING ITALY 2008
WALTZ
by Marcus & Karen Hilton MBE

出典:HAPPY TRAINING ITALY ISCHIA-CAPRI OPEN 2008 / STUDIO HIMAWARI
Transcript, Translation, Voice-over by Makoto Kammoto

 

※このレクチャー映像はYouTubeで限定公開設定にしてありますので、ここだけでご覧ください。
※Enjoy this video only in this blog. Do Not Copy and Upload in YouTube or other SNS.

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HAPPY TRAINING ITALY 2008
WALTZ (テキスト)
by Marcus & Karen Hilton MBE

 

Marcus:  今日のレクチャーは競技会で最初に踊るワルツです。(ワルツには)レントラー(Lendler)、ラングスマー(Langsamer)、ボルタ(Volta)、色々な呼び方がありますが、観衆に、パートナーに、さらに重要な点として審査貫に対し(最初の踊りとして)最初に与える印象なのでとても重要ですから、正しい形を見せる必要があります。沢山お話ししたいことはありますが、今回は理解すべき点を明確にし、後ほど皆さんと一緒にそれを実践してみたいと思います。

 

ワルツは美しい踊りなので、美しさを作り出すのが主要な点になります。とてもシンプルな踊りですから、シンプルに踊ります。分かりやすい音楽と、すっきりとしたシェイプ、奇麗なフットワーク。そして、細かな点に気を配りましょう。例えば膝の使い方や足首の使い方まで気を配ります。ヒップライン、ヒップシエイプ、アームポジション、ボディポジション、足の閉じ方、脚部の閉じ方。そうしたすべてが美しいワルツを作るのに大切です。

 

3つの大事なアクションをあげるとすると、一番目はローテーションでしょう。回転なしのワルツは踊れません。2番目はスイング。スイングなくしてアクションはありません。スイング、そしてターンが起こります。

 

ワルツでは当然ウェイトを集めなければなりません。その最も簡単な方法がライズすることです。床に落ちた状態では両足閉じてウェイトを集めるのでは、まるでミスター・ビーン(*映画)。とても困難です。彼の踊りは見たことがありませんが・・・奥さんは誰だろう? ま、それはともかく・・・3番目はライズ・アンド・フォールです。私はライズ・アンド・フォールは、ひとつのアクションとして捉えています。ライズとロアーの二つと考える必要はないでしょう。

 

(ということで、3つの大事なアクションは)ローテーション、スイング、そしてライズ・アンド・フォールの3つです。スウェイが出てこないと思った人はいませんか? スウェイもアクションだと思いましたか? スイングとローテーションがスウェイを作りますので私の考えでは、スウェイはアクションではなく、リアクションと思います。

 

ナチュラル・ピボット&スピンの場合、ワルツらしくしたいですから、タンゴ見たくはしたくありません。フラットに踊るのも嫌です。たとえ12&3とシンコペートさせても、l&でわずかなライズ&フォールを起こし川の流れのように捉えています。ここイスキアの海の様に、荒れていません。漂うだけ。海流の流れに沿って流れているだけ — スピンもそんな感覚です。足は閉じないので高くライズはできませんが、回転はしています。回転しながらライズ・アンド・フォール。

 

 

ここで、私が嫌いなことをお話ししましょう。それは良く見かける様々なフットワークとかシェイプの問題で、このようにスピンしているときの嫌いな点は、男の子たちが間違った方向へ足を使うことです。スピンしながら、プッシュしているのです。

 

ナチュラル・ターンのこの時点ではスピンの準備はまだで、後退するときに右足トウを床から離します。そしてピボットへと。でも、スピンを継続する時、右足トウを離すのは次の足に体重が移ってからです。でも、今日、実に多くのカップルが、右足ヒールでプッシュしています。練習するときに見てみてください。ほとんどの人がそれをしているはずですから。ヒールでプッシュしてると、「パワーがついてる」と感じるかも知れません。ワルツらしいじゃないかとも。しかし実際には相手の中心から離れ、ロック・アクションを引き起こすことになります。

 

ここでは男性は前進し、左足を通してのローテーションでピボットしますから、ボディ・ウェイトを女性の方に、そして、その足に女性のウェイトを乗せるようにします。だから足でプッシュはしませんん。ナチュラル・ターン終わりの感じとしては、後退ではトウを床から離しますが、今は足の前を使い、ボディ・ウェイトをカレンの方へと移動させています。

 

悪い方をやりますが、こっちが良いって言わないでください。これが蔓延しているやり方です。大した問題じゃないと思っているかも知れませし、いまのも、さっきのも、両方よく見えたかもしれませんが、トップレベルの人たちをみるとシェイプにしても、ダイナミックさにしても、アクションにしても違うのが分かります。フットワークが違い、フロアーに対するコネクションが違うのです。いいですか、床に一番近いのは足です。そこからのアクションが正しくなければ、その上で違うことが起きてしまうのです。すると体に力が入り、ストレスがかかります。しかし、ボディ・ウェイトはいつでもリラックスした感じでいたいのです。

 

今日もレッスンで話をしていたのですが、両腕の形は、先から水が滴り落ちている感じなのです。バレエでも同じように教わると聞いたことがありますが、ボールルームでも全く同じで、私のシェイプは自分のボディとバランスが取れていると同時に、彼女ともバランスが取れてなければなりません。

 

内緒ですが、今日はランチを中断するはめになりました。カレンが突然、 「ねえ、あなた」って迫ってきたからです。そのときの一言一句を話すとカレンは怒るだろうけど、話しちゃおうかな。

 

二人で用意ができた時、カレンは「ホールドが小さすぎ」と言うんだ。「それは君がたくましいロシア人やイタリア人と踊っていたせいだよ」、と言うと、「前よりも枠が小さくなっているもの」と。

 

年を取るとどこもかしこも縮まるって本当だね。けれど、腕は縮まない。カレンは、私の右腕が彼女にとって広さがないと言うのです。支えられないと。カレンはいつでも積極的な私の右腕を求めているのは、そのフレームから彼女のシェイプが作られるからです。それなしに、毎日、何時間練習をしてもカレンはハッピーでないでしょう。

 

そうそう、皆さん、ダンサーでも先生でも競技選手でも、ホールドをすごく美しく見せるようにすることですよ。世界で一番美しいようにすることです。カレンと私は長いこと練習をして来、有意義に過ごすことができました。みなさんも辛抱強く、そして、いい感じになるまで練習し続けなければいけません。そこで、私は最初に完璧なポスチャーでまっすぐに立ち、左に傾いたりはしません。「左に大きなシェイプを作れ」と言う先生もいましたが、左でも右でもなく真っすぐです。女性は真っすぐに立った男性のボディから形を作りますが、それは男性からそうするようにとの情報を得てからです。

 

二人でプロムナード・ポジションになる場合でも、腕をまわすのではなく、ボディの別の所を使います。そして強調しておきたいのは、シェイプとフレームはいつでも積極的だと言うことです。自分の情報源ですから。男性は、腕はパートナーのために、そして彼女が正しいポジションと分かる形にしておかなければなりません。

 

ローテーションでは足の使い方が大切ですが、自分がイメージしているのは、まず靴の中の足を感じ、床から回転を起こす、そんな感じです。つまり、靴の中の足を回すと、それに対してホディがリアクションします。靴を回すのではありません。腰でもありません。肩も違います。頭でもありません。足を回すのです。「そんな馬鹿な、あほらしい」と聞こえるでしょうが、靴の中の足の回転を感じるとボディがリアクションし、靴の中の回転をする程に、上半身に溶け込んで行きます。実際に私がカレンに向けてボディの回転をすると、頭にそれを感じます ー 想像できますか? 私の足の回転がカレンのヘッド・シェイプを作ります。

 

シェイプの作り方ですが、靴の中の足を回してカレンに情報を与えようとします。ただ上半身を回転させると、両サイドが回ってしまいます。右サイドを前にまわしてしまうと、カレンを倒してしまう。よって、ボディを回転させるには靴の中の足を回します。ここは分かりましたか?  すごく足を使うと、すごく臭くなりますから、よく洗って下さいね。よって足が臭い人はダンスがうまい(笑)。

 

 

ライズ・アンド・フォール

かつて、とても有名なコーチャーのベ二一・トルマイヤー(Benny Talmaye)に教えていただいたのですが、砂が詰まったリュックを背負っている感じなんだと言うことを話されていました。陸軍の人たちが背負って走る訓練をしていますね。そんなイメージです。つまリ、ロアーでは背中の重みをフロアに下ろすようにするのです。ヒップや膝を下げるのでもなく、上の方にあるものが重力のように降りて行くのです。

 

私としては、ロアーは上から起こり、それに対するリアクションを足首に感じます。それがロアーして映るのです。カレンとスイングしているときも同じです。つまり、スイングの深さは肩から来ているのであって、「ロアー」と、こんな風にしている訳ではありません。例えばフォーラウェイ・リバース&スリップ・ピボットでこの形になり、すでにロアーが集約されているのに、そこから更にロアーして次に出て行こうとする人が沢山いますが,決してダウンから更にダウンとか、ロアーから更にロアーすることははありません。何につなげようと、このよう再びロァーはしません。いったんロアーしたら、それでお終い。すでにスイングできる形になっているので、ライズします。

 

ワルツには二つの特徴的なライズがあり、ひとつはプレッシャー・ライズ。オープン・インピタスのように両足をそろえ床をプレスするタイプで、フット・プレシャーを通してライズします。床から自分の体を離して行くとか、床の中にボディを押し込むとか、いろんな形で表現されていますが、どのような表現方法をとろうと、ライズというものはリアクションです。なぜなら、床に対して行うプレスがアクションだからです。もう一つ、ナチュラル・ターンやウィーブのように、スイングしてライズするスイング・ライズがあります。ボディのスイングやアクションがスイングからライズして行くのを助けてくれるのです。

 

次に強調したいのはスイングです。スイングではボディの総てが関わってきます。眉毛にまでも。どこもかしこもスイングするのです。私はワルツを踊るときは単純にブランコを連想するようにと説明することがあります。ワルツでは総てがスイング・アクションです。ロアーでプレスして、あるいは、ライズしてプッシュしてスイングを感じるとかではないのです。

 

6年半前に私たちにヘンリーという男の子ができました。彼を公園に連れて行き,ブランコに乗せて押しているときにスイングの理解が深まったのです。一定の深さがあり、スピードがあるのです。ゴルフのスイングもそうです。ゴルフは下手でしたが……。スイングは、前進している時は後ろから、後退しているときは前からやってきます。スイング・アクションはとても重要です。

 

さて私の嫌いなもの。次はワルツでのサイド・ロックについてです。ここでもライズに関するお話で、ランニング・スピン・ターンからサイド・ロックに入ったりしますが、女性はトウをとても強く使います。ヒール・リードから強いトウの使い方を。このアクションがスイング・ライズで、男性の役目はそのスイング・ライズのパワーを吸収することです。ここで私が嫌なのは、男の子たちが(倒れるように動いて見せ) ―― これはひどいです。体重は後ろに落ち、それを女の子が追いかけ、ひどいものです。サイド・ロックではしていけないことです。

 

同じ現象がとても人気のあるタンブル・ターンでも見られます。バウンス・フォーラウェイを踊りますが、ここでもカレンからのスイング・ライズを吸収します。見て下さい,こんな風な踊りを。近頃見かける最悪なのは、競技選手のこんな姿。冗談ではなく、本当に、こうして、こんな風にやっている男性を見かけるのです。 もし私が審査していたら、チャンスはないでしょう。他のジャッジも取らないでしょうから,そんな冒険はしないことです。君たちも。

 

ちょっとおふざけもありましたが、ワルツで私たちが重要視していることの幾つかを理解していただけたと思います。細かなことに気を配ること。フットワーク、シェイプ ―― とても大切な点です。それから、(立った時は)両足をキチンと揃えましょう。 胃のあたりに左手をおいて、右手は後ろ。背骨の上、両肩甲骨の間くらいに置きましょう。

 

膝は柔らかく。ボールルーム・ダンスでは膝を伸ばし切ることはありませんよ。次に自分の胃を背骨に向けて押します。ちょっとだけでいいですから背骨に向かってプレッシャーをかけます。右手でも背中を少しだけ押しましょう。頭はリラックスして。次に両手を体の両側にぶらりと下げ、フロアーをプレスしてトウに上がりましょう。下に押してアップしたなら両手を(目の高さ位に)上げ、両肩からのウェイトを下に持っていく感じを持ちます。気をつけて欲しいのは、両足のインサイド・エッジにウェイトを乗せることです。

 

他にもやりたいことはたくさんあったのですが、時間が足りません。ですが、今日の(ワルツに見られる)シンコペーションやアクションは、本来の123のワルツの踊りを損ねている気がします。経験豊かな競技選手やジャッジ、トレーナーの皆さんにお聞きすると分かりますが、誰も,最も速く、シンコペーションを多用し、変わった振り付けの踊りを見たがっているわけではありません。彼らが求めているものは、美しく、勢いよくスイングするベンジュラム・アクション(Pendulum Action)です。両足が閉じられる所、完肇なバランス、二人のシェイプ、ウェイトの乗せ方、勿論、ダイナミックなものは求めています。1920年代や30年代、50、60、70、80、90年代に戻したいと思っている訳ではありません。

 

今はその先にいる訳ですから,過去を語ることで将来を否定している訳ではありません。ダンスのこれからは肯定的なもので、こうしたプログラムに参加されている皆さんのような人たちに委ねられています。私たちジャッジ、教師、あるいはコーチャーがフロアーを駆け回るような速いワルツを望んでいる訳ではないと知り、こうしたイベントを敬遠するかしないかも皆さん次第です。(敬遠したい)最たるものはシンコペーションで、見たいのはワルツです。

 

どの踊りにも特徴があるべきです。ワルツでは勢いあるスイング、細かな所,そしてバランスが最も重要だと私は思います。

 

出典:HAPPY TRAINING ITALY ISCHIA-CAPRI OPEN 2008 / スタジオひまわり制作
 翻訳/アフレコ:神元誠

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楽しんで頂けましたでしょうか? 翻訳ミスがありました時はご容赦願います。

 

ハッピー・ダンシング!