G041 質問25 シャドーについて教えてください

投稿者: | 2020年3月30日

シャドーに関する複数のQ&Aを纏めてみました。最後にシャドーに関する外人コーチャーの記事と動画を入れました。

 

 

 

質問と回答

 

質問1
パートナーと遠距離なので一人で練習することが多いのですが、シャドーが苦手です。そこにパートナーがいるような感覚をつかめず、上手く踊れません。シャドーのポイントは何でしょうか? (山梨県 男性)

 

▼スタンダードの場合で、お勧めのシャドー練習法を書きます。

①ルーティンをホールドしないで普通に歩きます。アラインメントや顔の向きの確認になります。

②次に少し歩幅を広げ、1歩1歩のフットワークを口に出して歩きます。両足が開いたところで止まり、両足のフットワークとライズ&フォールを確かめる作業をしましょう。今度パートナーと組んだとき、きっと驚かれることでしょう。

 

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質問2
シャドー練習でイメージトレーニングをした後にリーダーと組むと、イメージとはまったく違う感覚になりいつも戸惑います。シャドーの仕方が悪いのか? それともこれが普通なのか? シャドーの仕方が悪いならポイントをご教授ください。女性(神奈川県 A・S)

 

▼お便りの持ち級にスタンダードC級とありましたので、スタンダードとして考えを述べさせていただきます。シャドーは自分のバランスとタイミングで動きますが、パートナーと組めばカップル・バランスとリードのタイミングで動くことになりますから、その違いではないでしょうか? もし、「全く違う感覚=踊りにくい」意味でしたら、実験として、一度自分の踊りをすべて忘れ相手のことだけ考えて踊ってみてください。何か発見があるかもしれませんよ。

 

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質問3
パートナーと遠距離になり、一人で練習する時間が増えてきましたが、シャドーですと何だか捗らず、練習できたという手ごたえをつかめません。シャドーの大事なポイントとは何でしょうか。(スタンダードC級男性 愛知県 モリ像)

 

▼1回のシャドーで「何もかも注意して」と思うと、出来ないところばかりが気になりマイナス思考になります。「今回はこれ。他は気にしない」と目標を一つに絞るのは良い考えと思います。また、早い段階から理論の勉強をしましょう。白夜書房から出てる「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」や「ダンサーのためのメンタル・トレーニング」には生涯使えるアドバイスが詰まっていてお勧めです。

 

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質問4
一人で練習するときは映像を見たり足型図通りに動いてみて覚えたりしているが、いざ女性と組んで踊ると、頭の中の想像と違ったりして上手く動けない。身体が自然に足型を覚えてくれればいいのだが、歳もあるのか思うように動けない。このギャップを解決するにはどうしたものか? (千葉県 男性 匿名希望)

 

▼それはあなただけではなく、また年齢に関係なく、他の人もみんな同じように悩んでいる問題だと思います。その上で一案として、シャドーでは女性と踊っているイメージで練習してみましょう。また、使えないステップは無理に使わなくて良いのです。昔、世界チャンピオンにインタビューしたとき、「(競技会では)うまくできないステップは使わない」と話していましたよ。

 

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質問5
シャドーだとヒール・ターンできますが、リーダーと組むと足が上手く揃わないときがあります。二人のバランスを保ちつつ綺麗に回るコツは何ですか? (東京都 A・K 女性)

 

▽シャドーができたら第1段階クリアですね。男性とヒール・ターンに入るときは、「これですね」と「踊ってあげる」のではなく、男性の一つひとつのアクションに対して「これですか?」と聞く気持ちで踊ってみてください。すごく上手く踊れますよ。

 

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質問6
女性もシャドーで練習することは大事なのでしょうか? 私の先生は「二人のバランスの方が大事なのであまりしなくていい」と言うのですが。(千葉県 シルキーレイ 女性)

 

▼段階によって目的は異なると思いますが、シャドーで1歩1歩のフットワーク、バランス、回転量、体重移動などをチェックすると上達するのは明らかです。動きがクリアになった上で、二人で踊るときの「化学反応」を最大にして行くのが望ましいと思います。以前のダンスファンの記事で、(確か)ロシアのコーチャーがこう話していました ― 「死ぬほどシャドーしなさい」と。

 

 

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シャドーの練習方法

 

シャドーは特定のパートナーがいない人や、サークルのような団体レッスンの中で上手になりたいと思っている人には不可欠の練習法です。勿論、常に一緒に踊るパートナーのいる人にもとても優れた練習方法です。なぜなら、自分のバランスを見つけることができますし、一歩一歩のフットワークが明確になりますし、フィガー単位の動きが理解できるからです。そこで、私がお薦めする、サークルでのシャドーの練習法を紹介します。

あるルーティンを習ったとしすると、

 

❶ ただ歩いて進行方向を確認

スタンダードで比較的スペースのあるフロアで踊る場合、あるいはラテンのサンバやパソで移動する踊りの場合、そのルーティンの進行方向を、ただ歩いて確かめます。前進のステップをするときは前向きに、後退のステップをするときは後ろ向きに動きますが、壁斜めや中央斜めなどのアラインメントを守って歩きます。全体の流れと進行方向を確かめるのが目的なので、歩数や回転の仕方等、なんら細かなことは気にしなくて良いです。

ただ歩くだけですが、ナチュラルな目線が分かりますし、足のナチュラルな軌跡が確認できる利点もあります。入門・初心者には特におすすめします。

 

 

❷ ルーティンの分割

次にルーティンを分割します。例えばフォックストロットで「予備歩 ~ フェザー・ステップ ~ リバース・ターン ~ スリー・ステップ ~ ホバー・クロス」を含むショート・ルーティンを一度に習ったとします。そうした場合に、どこからどこまでがフェザー・ステップで、どこからどこまでが次のリバース・ターンかという風に分割します。

ラテンでも同じです。例えばサンバのショート・ルーティンを一括して教わったとしても、どこからどこまでがサンバ・ウィスクで、どこからどこまでがシャドー・ボタ・フォゴで、と言うように分割します。分からないときは迷わず先生や周囲の人に聞きましょう。

この分割作業をすると、分からない動きを抜き出して効率よく練習することができます。加えて、なぜかメリハリのついた踊りになります。日常生活でも朝は何を食べ、昼は何を食べ、そして夜は、という風に区切りのある食事をしていると思いますが、ルーティンを一つの動きと捉えて練習するのは、朝から夜までだらだら食べ続けているようなものになる ―― 個人的にはそんな風に思っています(笑)。

 

 

❸ フットワーク確認

分割作業を終えたら、フィガー毎のフットワークの確認です。これも分からないときは人に教えてもらうか、テキストに出ているフィガーの場合は自分で調べて確認しましょう。先程のスローのルーティンの場合だと、男性は各フィガーの1歩目が(HT)になっていることに気づくでしょう。すると、その前の足ではロアーしていなければならないことも分かります。女性の場合は各フィガーの1歩目は後退ですが、リバース・ターンの3歩目が(TH)でロアーすることが分かると、4歩目はヒールからでなければいけないことも自ずと分かってきます。

ラテンの場合でもフットワークの確認をしましょう。フットワークを間違えると、つぎの動きがガラッと変わることもありますから。

 

 

❹フィガー名、フットワーク、カウントを言いながら

1. まず最初のフィガーのフィガー名を声に出します。

2. 次にそのフィガーの1歩目のフットワークとカウントを声に出してからステップします。

3. 同じ要領で2歩目3歩目と続けてひとつのフィガーを終わらせます。

4. 同じ要領で、教わったルーティンに含まれる全部のフィガーもやります。

5. 正確にできるようになったら、ゆっくりと、小さな歩幅で踊ります。

ここで大切なことは、声に出すことです。声に出すことでやるべきことがはっきりしますが、声に出さないと「自分で自分を胡麻化して」しまうことがあります。間違えたら正せばよいことですから、必ず声に出します。

 

 

❺パートナーをイメージして

最後に、踊りの速さで通してシャドーします。パートナーがどこにいるかをイメージしながら、あたかも二人で踊っているようにシャドーします。パートナーをイメージしているのですから、OP(アウトサイド・パートナー)、PO(パートナー・アウトサイド)、CBM、などあらゆることを考えて練習します。この練習では小さな歩幅から始めましょう。小さな歩幅でバランスが崩れないのを確認できたら、少しずつ歩幅を広げていきましょう。一気に大きく踊り、バランスを崩して自信を無くすと意味がありません。

 

 

シャドーは素晴らしい上達法です。誰と争うわけでもありませんが、特に団体レッスンでは「シャドーした者、勉強したもの勝ち」です。しかも②~④は自宅でも出来ちゃいます! ひとりでシャドーが出来るようになりましょう。

 

一人で動けないのに上手に踊りたいと思うのは、かなり身勝手な考え…と思いませんか?

 

踊りの上手な人でもシャドーの出来ない人は見たことがありますが、シャドーが上手にできる人で踊りの下手な人は見たことがありません。

 

 

 

「死ぬほどシャドーしなさい」
(ダンスファン2012年1月号より)

(質問6に書いた)「死ぬほどシャドーしなさい」の記事を見つけました。ロシアダンス議会理事/プロリーグ会長のレオニード・プレトネフ(Leonid Pletnev)氏の「女の自立、男のフォロー」。シャドーを考える、とても深い内容です。インタビュー&テキストは Meiri Marimo さん。

2012DF01Pletnev

 

 

 

 

 

参考動画

 

目の保養に、YouTubeで見つけたスタンダードのシャドーの動画を添付します。

 

 

 

ハッピー・ダンシング!