MT25 第5章 言葉の力(前半)

投稿者: | 2020年3月5日

「ダンサーのためのメンタル・トレーニング」(マッシモ・ジョルジアンニ著/神元誠・久子翻訳/白夜書房 原書名:DANCING BEYOND THE PHYSICALITY)を紹介します。

 

■目次

MT25 第5章 言葉の力(前半)
The Power of Words

 

言葉は私たちに大きな影響を及ぼしています。言葉によって気分が変わったり、落ち込んだり、混乱したり、興奮したりします。肯定的な自分でいられるとか、否定的な自分になってしまうとか、私たちのあり方は使う言葉が持つ特徴の影響を受けています。

 

日ごろ自分自身に話しかける言葉や、他の人に話しかける言葉には、心の状態に影響を与えるほどの力がありますから、心の状態が変わることで行動も変わります。それほどの力を持っているのですから、私たちは何を言葉に表わすか、どう話すか、いつ話すかということに、非常に注意を払わなくてはなりません。

 

言葉は単に、ある感情を創り出すだけではなく、心の中の会話も生み出します。その会話は、私たちの振る舞いとなり、行ないとなり、行動となるのです。今までの人生を振り返ると、誰もがこうしたことに思い当たるのではないでしょうか。言葉は心の中の会話として、そして、外に出ていく言葉としても重要な役割を果たしています。


さあ、あなたの心の中に、いますぐ注意を向けてみましょう。今、どんな会話が心の中で繰り広げられていますか? 一番多く使う言葉は何ですか? 習慣的に断言している言葉は何ですか? それは肯定的な意味合いですか、それとも、否定的な意味合いですか? それはあなたに力を与えてくれる言葉ですか、それとも、あなたを躊躇させたり、やる気をなくさせたりする類の言葉ですか?

 

あなたが習慣的に使う言葉のリストを作りましょう。もしそこに、私が役立たずの言葉と呼んでいる「力を奪うような」言葉が大半を占めていたなら、今すぐ、そうした言葉を使うのを止めなさい。頑張って、そうした言葉を自分の中から消し去りなさい。そして、別の建設的な言葉に置き換えなさい。

 

昔から「人は、自らが考えたようになる」と言いますが、私はその通りだと思います。そして、それは、心の中の会話ではないかと思います。ですから、次のような言葉から使うようにしましょう。つまり、自分に役立つ言葉を選ぶのです。そうしていると、やがて、その言葉から実りがもたらされることでしょう。何よりもまず、あなたにもっとも近い人 ― あなたのパートナーとのかかわり合い方から変化が起こることでしょう。

 

努力して自分を勇気づけるような言葉を使いなさい。例えば、素晴らしい! そうだね! 見事! ファンタスティック! そう、それでいいんだ! 今日は気分が良いね!― などと。

 

激励は、ゴールへの入り口と覚えてください。それなのに、例えば、練習会で思ったようにうまくいかないからといって、状況を更に悪化させるような言い合いをする人がいます。否定的な状況を増大させたり悪化させたりしたがるのはなぜなのでしょう? 

 

そんなことをせず、なぜ前もって、肯定的に考える習慣をつけないのでしょう? もっと頻繁に肯定的に考えるよう訓練をしておくと、同じ状況の中から何か良いところを見つけることができるのです。グラスに半分入った水を見て、半分しか残っていないと考えることもできますが、まだ半分もあると考えることもできるのと同じなのです。

 

何でも否定的な見方をするダンサーは、競技をしている間中、無意識に間違いとか難しいことばかりに気がいってしまうので、その結果、間違えたり、うまくできなかったりしてしまうことでしょう。例え本当は確実にできる能力があったとしても。

 

いいですか、ジャッジも観衆もあなたが何を考えているか、何を感じているか、そうしたあなたから発散されるエネルギーを感知しているのです。あなたの考えや感じ方はあなたの目の中に映し出されるのです。レオナルド・ダ・ビンチが「目は心の鏡だ」と言ったように。

 

あなたが自分に対して使う言葉は感情に真実味を与え、あなたが内に抱えるものを表現させます。だから、確信を持って話す言葉や心に響く言葉は、あなたの心の状態そのものなので、あなたの目に現われてくるのです。現実の事柄は無意識のうちに記録されています。イメージは視覚表示(V)となり、音や声は可聴周波数(A)となり、感情・感触・味覚・嗅覚は運動感覚(K)となって、無意識のうちに知覚を通して記録されています。聴いたこと、見たこと、経験したことを他の人に伝えるには、こうした(V)、(A) 、(K) の産物である言葉を使いますが、言葉はむしろ、私たちの中で生産された産物と言えるものなのです。

 

使う言葉を変え、表現を変えると、その結果として、それは私たちに影響を与えてきます。従って、言葉は私たちの経験を変えることができるのです。先程の「グラスに半分ある水」の話を思い出してみましょう。半分しかないと思うか、半分もあると考えるかは完全にあなたの捉えかた次第です。ですから、どう表現するかもあなた次第なのです。このことをうまく表現しているのが、この氷山の写真です。

 

この一枚の写真が示すように、言葉は海面に現れる氷山部分ですが、一方、私たちの感情は海の上には見えない、隠れたところにあります。

 

私たちが自分の経験を表現するのに使われる言葉は、最終的には、自分の経験そのものとなります。例えば、「私は絶対決勝に行けない」という文章と、「決勝に行くには何をすべきだろう」という文章を比較するとき、それぞれの文章に、大きく異なる感覚が湧いてくるのが分かります。すると、当然ながら、心の状態も次に取る行動も変わってきます。

― 言葉は私たちそのものに影響を与える。

― 言葉は私たちの心の状態や行動に影響を与える。

― 心の中の会話が行動を決定づける。

― 意味のない言葉を使うのは、やめなさい。

― 私たちは、自分が考えたようになるのです。

― あなたが心の中で自分に語りかけることは目に現われます。

― 言葉には、自分の中にあるものが表現されます。

 


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