G024 ホールドの話

投稿者: | 2020年3月5日

「正しいホールドはない」と考えています。なぜなら、もし唯一の「正しい」ホールドがあるなら、それを覚えた入門者は世界チャンピオンと同じホールドをしていることになります。本当にそうなってるでしょうか?

 

#024 ホールドの話

 

 

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正しいホールドはない

私の中に「正しいホールド」はありません。でも、「適切で綺麗なホールド」はあります。

 

ホールドで私が考えることは、

  • ホールドは、その人の踊りのレベルと共に進化し続ける。
  • ホールドがその人の踊りを引き上げることがある。
  • ホールドはその人の踊りを邪魔することがある ―― などです。

 

あるとき、遠方の知人から質問のメールが寄せられました。

「サークルの先生から受けたワルツのホールドの説明がしっくり来ない。正しいホールドはどうすればよいのでしょう?」

 

拙署「魔法の言葉」の中に「ダメな踊りはない」と書きましたが、それと同じで、私の考えの中に「正しいホールド」はありません。「正しい」と表現すると、「唯一無二」で「それしかない」イメージを持ちますが、ホールドは変化するものです。レベルにより変化し、トップ・ダンサーのホールドでさえ、時代とともに変化していますから、「そこにはその人の動きに最適のホールドがある」と考えるのが適切な気がします。

 

この質問の返信に、次の話を加えました。

 

▽先日、仕事の関係であるスタジオを訪問すると、世界チャンピオンのミルコがレッスンをしている真っ最中でした。レッスンを受けているのは日本の有名なトップ・ダンサー。驚いたことに、ミルコがホールドの注意を何度か繰り返したことです。

 

▽男性左手のグリップ、右手の形と当て方。しかし、それを直すと、カップルの踊りがグーンと音を立てて良くなったのです。流石です! トップ・ダンサーであっても、ホールドを直されると、より美しく、動きに結びつくホールドに変わる。しかも、動きも激変!

 

それ程、ホールドは大切なのですね。

 

この日本人カップルのように、世界のトップ・ダンサーのレッスンを頻繁に受けられる人たちは幸いです。常に最高のレッスンを受けられるのですから。同じ環境にいない私たちはどうしたら良いのでしょう? 大丈夫です。工夫次第で同じような環境を得ることが出来ます。それはチャンピオン達のレッスン・ビデオの活用です。

 

レッスン・ビデオの中でホールドの説明に出合ったら、「知ってる」と済まさず、10回も20回もよーく観て、「このチャンピオンはプロも対象に語っている筈なのに、ホールドのような基本的な話をする理由は何故だろう?」と考えてみることです。そして、チャンピオンの形を研究すればマンツーマンに限りなく近い収穫が得られる筈です。

 

また、ビデオのカバー写真一枚も無駄にはできません。プロのカメラマンが撮り、厳選された何枚もの中から、ダンサー自信も納得したものが使われているのですから!

 

 

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ホールドは案外踊りの邪魔をする

実は「ホールドは案外踊りの邪魔をする」ことがあります。それを実験で試してみましょう。

 

  • いつものように踊り、踊りやすさ/踊りにくさを観察します。
  • 次に、ホールドを小さめにして踊り、先ほどの踊りと比較します。

 

もし動きが改善されたなら、それは、それまでのホールドが動きを邪魔していた証拠。つまり、それは「動きに連動する適切なホールドでなかった」ことになります。

 

 

“The Irvine Legacy” (邦題「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」)の中で著者のオリバーは次のように書いています。

 

よく見られる興味深い現象は、プラクティス・ホールドで(ちょっと抱き合うように)踊っている時には、色んなステップがうまくできているにも拘らず、普通のホールドになるとうまくいかなくなるケースがあることです。

 

原文を紹介しましょう。

Quite an interesting phenomenon is often seen: when dancing in practice hold – more of an embrace – many steps work quite well, whilst they often fail to do so in a regular hold.

 

 

以上、ホールドを考えるときの材料になれば幸いです。

 

ハッピー・ダンシング!