G023 1歩 ( Step) の定義

投稿者: | 2020年3月5日

60才を過ぎても70才を過ぎても、幾つになっても確実に自分の中で上達し続けることは可能です。これはサークル活動を通じて日々、実感していることなので断言できます。そして、年齢に関係なく上達し続けるための最大の要因に、「1歩に対する理解を深める」ことがあると思います。

 

G023 1歩 ( Step) の定義

 

「それにしても」と、思うことがあります。それは、私が読んで来たダンス書籍には1歩の定義、即ち、「1歩とは何か?」「何が1歩か?」に出合った記憶がありません(読み落としている可能性は十分ありますが…)。そんなことを考えていたある日、アレックス・ムーア氏の “Ballroom Dancing” の中にその説明があることに気づきました。

 

この本は私がダンスを始める前から読んでいたのですが、すっかり忘れていた部分です。いいえ、私自身「一歩」の大切さを考えなかった証拠なのかも知れません。そこで、備忘録として原文と私なりの訳文を付けて記録しておくことにします。

 

Step (from “Ballroom Dancing” by Alex Moore, Page 34  )

 

This usually refers to one movement of the foot, although from a “time value” point this is incorrect. In the case of a walk forward or backward for instance, the time value of the step is not completed until the moving foot is drawn up to the foot supporting the weight, ready to commence another step. Thus, when instructed to rise at the end of a step the dancer should not commence to rise until the moving foot is passing the foot supporting the weight of the body.

 

ステップ(1歩の定義)ステップは、通常1歩の動きを指しますが、「タイムバリュー(時間価値)」の点からは正しくありません。 例えば1歩前進、または、1歩後退する場合、その1歩のタイムバリューは、1歩出た足がサポーティング・フット(軸足)になった足に、次のステップに出て行く足、即ち、ムービング・フット(振り足)が寄せられてくるまでは、1歩は完了していません。したがって、「ステップの終わりにライズする(例:1の終わりでライズ)」ように指示されたとき、ダンサーはムービング・フットが体重を支えているサポーティング・フットを通過する前にライズを開始すべきではありません。

 

 

1歩に対する考え方が分かってくると、例えばワルツのオープン・インピタス・ターンでPPになった所からウィーブ・フロム・PPを踊るとすると、オープン・インピタス・ターンの最後で、男性左足、女性右足をPPでステップしますが、このとき、「まず、この最後の1歩をきちんと終わらせる」ことに集中します。すると、続くウィーブ・フロム・PPの踊りはとても楽に、綺麗に踊れる可能性が高まります。

 

しかし、「1歩とは何か」が分からず、あるいは、「1歩とは片足が出ること」と思っていると、オープン・インピタス・ターン3歩目の途中から直接ウィーブ・フロム・PPの1歩目に入ることになります。そうすると、ウィーブ・フロム・PPでトラブルが発生します。

 

ウィーブ・フロム・PPがうまく踊れないと感じた場合、まず、その前の、このPPで出た足の1歩を完了することを考えてみましょう。そして、その1歩をきちんと終わらせたら、次のウィーブ・フロム・PPの1歩目も「きちんと処理する」ことを考えます。

 

1歩の定義を知るか知らないかで、踊りに大きな違いが出ます。自分の踊りも含め、綺麗に踊れるかどうかは、こうした「1歩」の踊り方の精度をいかに上げるかにあると思います。

 

2019年だったと思います。ウィリアム・ピノ(William Pino)のルーマニアで行われたレクチャー動画(英語/すでに削除されています)を見たことがあります。ジュビナイルからユースと思われる位までの競技選手を前に、ピノが全員に対して等しくレクチャーしていたのが「1歩(ステッピング)」と「体重移動(ウェイト・チェンジ)」の違い、そして、正しいフットワークについてでした。極論すれば「1歩とは何か」を語っていた訳ですが、彼の説明は上述したボールルーム・ダンシングに書かれていることと全く同じでした。

 

そして、彼曰く、「ほとんどの競技ダンサーもできていない」 ―― いかに多くのダンサー達が1歩を終わらせずに踊っているかを指摘する興味深いレクチャーでした。

 

ハッピー・ダンシング!