「ダンサーのためのメンタル・トレーニング」(マッシモ・ジョルジアンニ著/神元誠・久子翻訳/白夜書房 原書名:DANCING BEYOND THE PHYSICALITY)を紹介します。
MT20 第3章 信念/④意見・信念・確信
Opinions, Beliefs, Convictions
ある意見を聞いて「確かに」と感じることがありますが、それは一時的なものです。なぜなら、意見とは簡単に変わりうるものだからです。先にテーブルの話をしましたが、意見とはがたつく脚のようなもので、多少の参考にはなるかもしれませんが、容易にぐらつきます。例えば、あるカップルが頻繁にダンスのテクニックを変更したとしたなら、それは自分たちのバッグに色々な人の意見を入れるようなものです。それと比べると、信念はより強く、より変わらないものです。
確信とは信念よりも更に一段高いところに置かれているもので、その脚部はたくましく、かつ安定しているため、容易に打ちのめすことはできません。ですから、確信を持っている人は安易に変更したりはしません。安心感を抱きつつ自分自身の中に根を下ろしています。強いのです。これを一言でまとめると、〝確信している人/納得している人〟なのです。
ダンスに関して、私は経験から学んだことがあります。それは、自分がどう踊るかということについて、様々な信念(確信に至らないまでも)を育くむことは良いことだ、ということです。そうした姿勢は進歩の過程に加速をつけ、なおかつ、それを明らかにするからです。ですから、何を信念とするか、勇気を持ってその選択を行ない、そこからあらゆる長所を手にしてください。その過程の中では失敗は当然つきものですが、変えてはいけません。
自分のすることに確信を持てば持つほど、
他の人たちをより納得させることができるでしょう。
(M. ジョルジアンニ)
これは確かだという感覚を育てていくと、考え方がはっきりしてきます。朝の目覚めは、素晴らしい一日をスタートさせたいというポジティブな感覚と共に訪れます。なぜなら、頭の中がはっきりしているので、物事に対してモチベーションが高まるからです。
何年もの間、私が強く思っていることがあります。それは、ダンサーの中に踊りはすでに宿っているということです。それを目に見える形にできるかできないかの違いは、それを確信するかしないかの違いなのです。成功した人とは、姿勢で、行動で、そして考え方において、人とは違うものです。
あなたも、他の人たちと同様に、両親や学校や友達や社会の影響を受けて育ってきました。その環境はあなたの選択の仕方に非常に大きな影響を与えていることでしょう。しかし、これからはあなた次第なのです。共に成長してきた考えと今日も一緒に過ごしつつ、それを良しとするのか、それとも、自分にとって本当に正しいと思われる考え方を選び、それに喜びを与えるかは。
私が確信していることを教えましょう。
「不可能はない」
「情熱は幸せへと導く道である」
「人に従うのではなく、自分で決定せよ」
「自分らしいとは、人とは違うということだ」
「人に与えれば与えるほど、多くを得ることでしょう」
「自分の考えを口にする勇気を持て」
「自分のスタイルを探し求めよ。他の人の真似ではなく」
「必要ない人は誰もいない」
「必要なものはすべて、すでに自分の中に持っている」
― 信念にも二通りある。力を与える信念と、力を奪う信念の。
― 意見、信念、確信には違いがあり、それぞれ異なるものである。
― ダンスをするには、より大きな確信を必要とする。
― あなたの一番好きな信念はなにか、それを選びなさい。
以上に書いてきたことから、確信を持つことの重要性についてお伝えできたと思います。確信を持つことで態度が変わり、態度が変わると必然的に結果が変わるのです。あなたが持ったそうした確信を他の人と分かち合うこと自体は悪いことではありません。しかし大切なことは、確信があなたを自信で満たし、夢に向かっているあなたが自分に対して気持ちよく、建設的に感じられるようにすることです。
自分が変わりたいなら、最初に信念と確信を変えることです。何かをできると確信しても、できないと確信しても、あなたが無意識のうちに信じたことが起こることに気づきましょう。その上で、最初に、あなたの目的(どのような状態になりたいのか)を、それから、どういう考えをするのが目的達成の可能性を育んでくれるのかを真剣に考えて決定しなさい。そして、目的に邁進し、途中で出くわす様々な障害を懸命に乗り越えて行きなさい。
心の中で信じているものが、
自分の外側に現われる。
(引用元不明)
エクササイズ
― あなたの力を奪うと考えられる信念を五つ書き出しなさい。次に、それを、今まで説明してきたようにして違う言葉に変えてしまいなさい。
― あなたの中にある、力を与える言葉を五つ書き出しなさい。
― これから持ちたいと思う信念を五つ書き出しなさい。
注意
― 目に見えるものを信じるのではなく、信じることを見るようにしなさい。
― 自分のことや自分の可能性についての確信を積極的な方に変えると、成長が始まります。
― 最悪なのは、自分を規制してしまう考え方です。ダンスで自分の限界を決めてしまうと、何らかの形で、それが形となって現われてしまいます。
― 確信することは、学習できます。
まとめ
1, 自分の夢をしっかり確認した上で、その未来を心に描きなさい。
2, 困難なことを心に描くのではありません。成果を心に描きなさい。
3, 夢が実現したところを心に描きなさい。失敗したところではありません。
4, 夢を実現するために、何でもする覚悟をしなさい。
5, 強い信念を持つと自分が強くなれます。
6, 確信は振舞い方を変え、成果を左右します。
7, 何を信じるかは自分で決めなくてはなりません。
8, 外的要因は私たちに影響を与えるものではありません。外的要因の捉え方が、私たちに影響を与えるのです。
9, 競技会の後では二通りの考え方ができます: 「ジャッジが悪い」と考えるか、「もっと上達するには何をすべきだろう?」と考えるか。
10, 信じ切ったことに従うのは、信じたものを手にしたのと同じである。
11, 力を与えてくれる信じ方もあれば、力を奪う信じ方もある。
12, 意見、信念、確信には違いがあり、それぞれ異なるものである。
13, ダンスをするには、より大きな確信を必要とする。
14, 自分が最も好ましいと思う信念を選びなさい。
「MT20 第3章 信念/④意見・信念・確信」
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