MT09 第2章 ニーズ/③重要性

投稿者: | 2020年2月21日

「ダンサーのためのメンタル・トレーニング」(マッシモ・ジョルジアンニ著/神元誠・久子翻訳/白夜書房 原書名:DANCING BEYOND THE PHYSICALITY)を紹介します。

 

■目次

 

第2章 ニーズ/③重要性
Importance

 

私は、この重要性こそが人間が最も必要とする欲求のひとつだと思います。自分自身が誰かにとって、あるいは、何かに対して重要であると感じるのを嫌がる人はいるでしょうか? 自分が特別であると感じたり、自分に価値があると感じたりすることを嫌がる人はいるでしょうか?現役時代、私が競技会やショーで踊り終えると、人々はいつも賞賛してくださいました。今日、世界中で教えたりレクチャーをしたりしても、同じように賞賛してくださるので、私は、自分が認められている、理解されていると感じ、満たされます。

 

「他の人からどのように言われようと気にしない」、という人がいるとは思えません。なにも、自分の意見や個性を他の人に合わせなさいというのではありませんが、誰かがあなたのことを高く評価してくれたなら、それを素直に受け入れるべきでしょうし、喜ぶべきことです。程度の差はあれ、誰もが他の人を喜ばせたいと思う欲求を持っているのですから。私にはレオナルド(Leonardo)とガブリエル(Gabriel)という子供がいますが、二人ともそれと同じことをやっています。何かをするなり、すぐさま、「今の見ていた? どうだった?」と聞いてきます。私たちが、良かったねと思いやりを示すと、嬉しそうに、「良かった? 良かったでしょ?」と言ってきます。

 

誰かが何かをしたときには、それを認め、喜ばせてあげることが重要です。大小を問わず、ご褒美をあげるとか、いつも応援することで、その人がゴールへと向かう自主性を高めていくことができるからです。とりわけ重要なことは、この自主性があると、ゴールへ向かう途中に必ずやってくる失敗や困難に立ち向かうことができることです。

 

ダンス界では、失敗とか、思ったように競技会で伸びないということが、しばしば非常に重く受け取られがちです。誰でもいいですからダンサーの話を聞いてみると、彼らは、今までやってきたことの全てを否定され、もはやなんの打つ手もないように感じ、その結果、競技会ごとに戦術も焦点も変えてしまうのです。そうした人たちは、訳の分からないままダンス歴の最後を迎えることになるでしょう。なぜなら、自分たちが持っていた真の可能性に対して妥協を許し、あまりにも頻繁に変更をしてきたがために、本当に成し遂げたかったことの半分にも到達しないまま終わってしまうでしょうから。

 

また、私たちは自分自身の中に持つ「素晴らしいもの」に目を向けなくてはなりません。そうしなければ、フロアで踊っているとき、無意識のうちに自分たちの本当の良さを消しつつ、自分たちの弱点と会話を交わしてしまうからです。自分たちの持つポジティブな面に光を当てることが必要不可欠で、それにより、観る者の目にとまり、高く評価してもらえるかもしれないのです。ですから、踊るときには次のように考えてください。あなたは、ムーブメントと呼ばれる製品のプレゼンテーションをしており、商品の最も素晴らしい特徴を強調するのです。商品の欠陥や悪いところではありません。それと同時に、あなたの踊りは他の人たちの踊りとどう違うのか、その点に気づいていなくてはなりません。

 

自分に尋ねてみましょう。

 

「なぜ、ジャッジは他の人よりあなたを選んだのでしょう?」

「人から、自分のことをどう言ってもらいたいですか?」

「自分が大切と感じることは何ですか?」

 

こうした質問に答え、それに基づいて行動していくことが、「本心から望むこと」を実現するのに役立つでしょう。とりわけ、自分にとって何が重要か、そこに気づくことが大切なのです! 例えば、私の場合、踊りで観衆にアッと思わせることが好きでしたし、また、音楽の内容にぴったり合った瞬間を選び出すことも重要なことのひとつでした。人がやったことのない動きを最初にすることもそうです。そういう思いが私の力となり、誰もやったことのない新しい動きを探求したり、音楽性に溢れる動きで感情を引き出したりすることができました。

 

しかし他のダンサーにとっては競技会で優勝することが重要に思われるかもしれません。またあるダンサーにとっては、ひとつのパフォーマンスを創造することが重要に思われるかもしれません。

 

ここで私たちが話をしているのは、どのように行動するかを「理解しているか」についてです。自分の欲求を満たすために行動するわけですが、そのときの理解の仕方、そして何を重要と感じたいかです。当然ながら、目的の選択が重要です。なぜなら、それは今後の行動の取り方にも関わってくるからです。

 

 


(「MT09 第2章 ニーズ」つづく)