MT08 第2章 ニーズ/②多様性

投稿者: | 2020年2月21日

「ダンサーのためのメンタル・トレーニング」(マッシモ・ジョルジアンニ著/神元誠・久子翻訳/白夜書房 原書名:DANCING BEYOND THE PHYSICALITY)を紹介します。

 

■目次

 

第2章 ニーズ/②多様性
Variety

ここで、完璧に安全な生活を頭に描いてみましょう。つまり、いつ何が起こるか事前に知ることができる、あるいは、新しいことも、予期せぬことも、何の変化も起こらないような生活を想像してみてください。何が起こるかが事前に分かってしまい、予想通りのことしか起こらず、来る日も来る日もそうなのだとしたら、そんな生活は、私には死ぬほど退屈でしょうがないでしょう。

 

なぜ、退屈なのでしょう? ここで出てくる二つ目の欲求、それが多様性なのです。

 

多様性とは暗に不確実性も意味し、不安をもたらす可能性があります。その一方で、何か新しいものを連れてくるので、次なるモチベーションや興奮、あるいは、新しい経験をしてみたいと思う、そうしたことも運んできてくれます。多様性とは、私たちを日ごろの習慣や、ルーティン化されたこと、あるいは、「いつものこと」の枠の外に連れ出してくれるものなのです。ダンスにおいて、この多様性の必要性に注意を払うことが絶対に不可欠です。

 

練習中に同じことを繰り返しているところを想像してみましょう。同じ音楽をかけ、同じコンビネーションで踊り、踊るダンスの種目も同じ順番。いつまでも同じ言葉、同じ動きの繰り返し ― それでいて、時々違うことをしたいと思う自分に驚いたりしませんか? 驚く理由は簡単です。なぜなら、そう思うことの方が自然なのですから。それは、単に多様性の欲求のひとつであって、それをダンサーたちが経験しているだけなのですが、残念なことに、ほとんどの人たちは納得するまで行なっていません。

 

その欲求は、すでにお話ししたように、確実性の欲求と対立しています。だからこそ、両方を理解する必要があるのです ― 確実性と多様性の両方を。何が違うかを知り、自分の根底にある動機の違いに気づき、それを意識した上でどちらを選ぶべきかを選択するのです。気づく、気づかないにかかわらず、私たちは1 秒毎に変わり続ける変化の中に置かれており、それを止めることはできません。この、少しずつ変化し続けることは、自然の一部であって、私たちの意志でどうにもなりません。

 

しかし、私は心の底で、そうした『変化し続けていること』に対して、わくわくした気持ちでいます。何の変化も起きない世界なんてつまらないじゃないですか。周囲は変化もなく、いつも、いつまでも同じであり続けたり、昼か夜かのどちらか一方になったり、季節がなくなり、自然にも人々にも変化が起きないなんて。

 

どうして、つまらないのでしょう? それは、変化があるからこそ、何かに対して、あるいは、その反対のことに対しても、ありがたく思えるようになるからなのです。

 

あなたは、今後ダンサーとして仕事をしていく上で、いくらでも細かく計画を立てることができるでしょう。しかし、今後遭遇するかもしれない様々な困難を乗り越えていく上で、実際にあなたの後押しをしてくれるものは、将来の不安に対する処方箋ではないかと私は思います。なんの失敗もせず、どうやってあなたはアーティストに成長できるのでしょう? もし、誰かに自分のやることすべてを決めてもらったとすると、自分の成長はあるでしょうか? そんなことをしたら、全くリスクを冒さないダンサーの踊りになってしまい、成長はないのです。

 

時として、私のダンスはあまりにも革新的過ぎると非難されることもありました。なぜなら、私のダンスは協会によって指示された規律に沿わなかったからです。正直に告白すると、私はそのことを誇りに思っていました。時勢に逆らったからではなく、根底にあった自分の意志に対して誇らしく思ったのです。つまり、自分を満足させるべき欲求に応えたからです。

 

グレッツ教授* の言葉です ―

「…、なぜなら、人には自己保身という本能があり、それが私たちの脳に向かい、もっとも融通のきかない保守主義を押し付ける傾向があるからです。当然、この本能を完全に軽視することはできませんが、その限界を打ち破るには大胆さしかないのです。少なくとも、大方の環境の下では」

* グレッツ教授(Prof. Grets):ブラジルの自己啓発講師。大企業とクローズイベントでセミナーを開催、過去30 年間で4,000 以上の講義をしている。

 

 

ダンスをエキサイティングにしているのは多様性であり、意外性である。
(M. ジョルジアンニ)

 


(「MT08 第2章 ニーズ」つづく)