MT07 第2章 ニーズ/①確実性

投稿者: | 2020年2月21日

「ダンサーのためのメンタル・トレーニング」(マッシモ・ジョルジアンニ著/神元誠・久子翻訳/白夜書房 原書名:DANCING BEYOND THE PHYSICALITY)を紹介します。

 

■目次

 

第2章 ニーズ/①確実性
Certainty

 

確実性の欲求は、すべての人の中に先天的に存在します。ここでの確実性とは広義の意味で使われており、例として、危険がないところで平和に暮らすことがそれにあたります。また、新しい環境に入ることはストレスになるので、それを回避することも、当惑するような状況から逃げ出すことも、リスクを負う状況を避けたり新しいことや予期せぬことを避けたりすることも広義の確実性の欲求といえます。そうしたことはすべて、個々の人間が確実性を求めている現われです。ストレスや緊張を持つ可能性があると、あなたが大好きな快適ゾーン(=肉体的にも精神的にも快適に感じる環境)の中でも、「大丈夫」という風には感じられません。

 

人によっては、現状から変化することに極端に否定的になる人がいます。なぜなら、「よく馴染んでいる今の心地よい場所」を奪われるのではないかと考えてしまうからです。そうした人たちは、行動することを好まず、同じところに留まり、どんな新しいことにも、意外性のあることにも挑戦するのを嫌がるのです。即ち、確実性の欲求自体には否定的な意味合いはなく、快適な状態が減速したりブロックされたりする場合に否定的になるのです。

 

まさに、あらゆる生活環境においてもそうであるように、私は、この根本的な欲求は個人の物理的な整合性にとって非常に重要ではあっても、ただそれに打ち負かされるのではなく、それを分析し、対処するという実用的な考えが必要だと思います。ダンス界でこの確実性に対する感覚が満足いくものになれば、能率は高まり、実り多くなることは間違いありません。

 

一例を挙げると、私の場合、パートナーのアレッシアがいること、そして彼女は私を完全に尊重してくれていたので、非常に心強く思われ、彼女がダンサーとしての私を好きだと分かっていたので、ハードな練習でも、「次のイベント」を可能な限りシミュレーションする際でも、そのことが大きなエネルギーとなり、自信となりました。

 

また別の例として、私は燕尾服を着ての練習は動きの邪魔をされるので好きではありませんでしたが、あえて燕尾を着て練習するようにし、汗をしっかりかくことで、燕尾が自分の体の一部に感じられるように努めました。そうして、燕尾が自分の体に馴染み、体の一部となってくるに従い、気持ちが落ち着くようになっていったのです。

 

私たちが初めてアマチュアの世界大会で優勝してから、ずいぶん時が流れましたが、あのときの鮮明な記憶はそのまま残っています。その中でも決して忘れられないのは、5種目を連続で踊ったとき、なんの恐れも感じなかったことです。何度も何度も練習を繰り返してきたので、本番では、あたかも秘密兵器を持っているように思えました。私は確信していたのです。しかも、その感覚はすでに体の一部となっていたのです。

 

このような「違いを作り出すもの」は、私たちが直面する状況の中にあります。そうした状況は、すべての人たちが満たしたいと感じている基本的な欲求ともある種のつながりを持っていますので、こうした私たちの経験は、とても小さな一例でしかありません。また、どのように違いを作るか、そして、どのくらい大きな違いを作るかは人によっても異なりますので、成功のカギは、そうした環境の中で「何が自分にとって安心と思えるか」ということを明確にすることです。それができれば、あとは、安心と思える感覚が自分の体の一部となるまで練習すれば良いのですから。

 

「問題が解決されたら安心できる ― そう思えるすべての問題点と向き合いなさい」

 

確実性というものが、もし、すでに学習したことや確かな経験からもたらされるとしたら、その反対の不確実性というものは、人間が強く感じているもう一つの必要性 - 多様性(バラエティ)の欲求 ― からもたらされると言えるでしょう。次に、そのことについてお話ししていきましょう。

 


(「MT07 第2章 ニーズ」つづく)