「ダンサーのためのメンタル・トレーニング」(マッシモ・ジョルジアンニ著/神元誠・久子翻訳/白夜書房 原書名:DANCING BEYOND THE PHYSICALITY)を紹介します。
第2章 ニーズ
Needs
人間は自らのニーズ(必要性)を満たす必要があります。個人においては、人生の目標を見つけることが最終目標になりますが、それは、ニーズが満たされたときに叶えられると言えます。ここにおけるニーズとは、例えば、食べ物、水、休養といった基本的なものに限られるものだけではなく、愛情、確かなもの、満足感、多様性などのような精神的なものも含まれます。
一例を挙げると、生まれたばかりの赤ちゃんには愛情が必要ですが、それが満たされなかった場合、一般的に、成長時における健康への影響が現われることが実証されています。このことから、私たちの人生において、単なる物的な必要性が満たされるだけではなく、むしろ、精神的に満たされることが大切だということが分かります。同時に、肉体的要求と精神的要求は相互に影響を及ぼしあっていますので、肉体的な健康は精神状態にも反映され、精神的な健康は肉体面にも反映されるため、自分は調子が良いと感じれば、それは健康にメリットをもたらします。
では、この事実をダンスにおけるカップルの行動に置き換えてお話ししましょう。まず、指摘しておきたいのは、多くの場合、ダンサーたちは肉体的なトレーニングのことばかりを考え、精神面でのトレーニングや精神面を充実させることを完全に見落としている点です。一般的なトレーニングがダンスで効果を出せない理由の一つがここにあります。なぜなら、精神的な面の方がダンスの創造性との結びつきが深いからなのです。
1954年、心理学者のアブラハム・マズローはニーズ(必要性)のリストを作りそれを欲求階層と呼びました。彼の研究は新しい概念に引き継がれ、そこでは、人間一人一人にみる積極的な手段、および、成長の可能性に重きが置かれました。
マズローは人間の欲求をピラミッド型に積み上げ、上の段にある欲求を満たすには、その下の段の欲求を先に満たす必要があるとしました。下の段の欲求が満たされると、そこでの不安が消え去り、次の段へと進むことができるのだと。
― 人間にとって、自らの欲求を満たすことは必要なことである。
― 肉体的、精神的両面での欲求が満たされるべきである。
― 人は、自らの欲求を満たすべく行動に駆られる。
アンソニー・ロビンズはマズローの理論を更に次の6段階に分けました。
- 確実性の欲求
- 多様性の欲求
- 重要性の欲求
- 愛情の欲求
- 成長の欲求
- 貢献の欲求
マズローとの違いは、ロビンズはこれらの6つを階層に設定せず、欲求は人によって異なること、また同じ人の中でも、その時々で変わるものとしたことでした。しかしその上で、そうした欲求を満たすというゴールはある、としました。では、その6つの欲求を詳しく見ていきましょう。
「MT06 第2章 ニーズ」
MT05 第1章 ①イリュージョニスト/意図 <<< >>> MT07 第2章 ニーズ/①確実性