どこかの誰かのダンスに役に立つことを願い、拙書「社交ダンスがもっと好きになる魔法の言葉」を公開中。今回は最終章「知って得するあんな話こんな話10話」です。
MA59 第6章 知って得するあんな話こんな話10話
(第6話)感動するブルース
ダンスを始めた当初、私はブルースをバカにしていました。なにせ、私がダンスを始めた理由は、1973年頃に生で初めて見たアンソニー・ハーレイ&フェイ・サクストン(Anthony Harley & Fay Saxton)組のスローが印象的で、それを踊りたくて始めたのですから。
でも、時が経つに連れ、ブルースにはダンスの本質があると分かるようになりました。そこで、ブルースのお話です。
以前の仕事の関係で、英国の三大大会に何度か行く機会がありましたが、そこで見た限り、ジェネラル・ダンスで一番踊られていたのがブルースでした。つまり、ブルースを覚えておけばジェネラル・ダンスに参加できると言えるでしょう。
ロイヤル・アルバート・ホールで行なわれるインターナショナル選手権で見た、狭いフロアの中でギューギュー詰めで芋の子を洗うように踊っているジェネラル・ダンスのシーンは、なんとも良い感じがしました。失礼を覚悟で言うと、ある意味、競技会より感動を覚えました。自分が楽しみ、そして、相手と楽しむ。これこそがダンスの本質だと思えました。そして、このシーンは昔の小さなパーティーを思い出させたのでした――――。
◇ ◇ ◇
かつて住んでいた街に「公民館祭り」と言う行事がありました。ある年、その委員長を任命された私は、少し離れた公民館のダンスパーティーを見学に行きました。
扉を開けると聞こえてきた乗りの悪い音楽。10名足らずのお年寄りがブルースを踊っています。
「あ~あ・・・・・・」。
失望です。でも、すぐに帰るのは失礼と思い、少し見学していると、なぜか分かりませんが、次第に感動を覚える自分を発見したのです。感動する踊りとは、レベルも関係なければ、ものすごく動くことでもないと、そのとき知りました。
見る者にさえ感動を与える最初のダンスが、ブルースだと思います。
写真は私が撮影したロイヤル・アルバート・ホールのジェネラル・ダンス風景。フロアは、配られた帽子をかぶり、思い思いの踊りを楽しむカップルで溢れ返っていました。
客席に残された人たちは実に寂しそうです。私も含めて・・・・・・。このときは仕事でしたので、最前列で荷物番をしていました。
するとそこに一人の美しいイギリスの女子高生が近づいて来て、物語のような会話が起こりました。
「ねえ、あなたは踊れないの?」
「(クールに)踊れるよ」
「じゃあ踊って! だって、見ていると感動的なんですもの!」
「(クールに)でも、荷物番なんだよ」
「(少し飛び跳ねるように)じゃあ、この辺だけでいいから!」
「(クールに)じゃあ踊ろう」(心の中はニタニタ)
・・・・・・なんて、一瞬の良い思い出もありましたが(笑)、でも、彼女が話したように本当に感動するシーンでした!
「アルバートホールのジェネラル・ダンスは絶対踊りたい!」
行ったことのある人は、そう思っているに違いありません。
(「第6章 知って得するあんな話こんな話10話(第6話)感動するブルース」おわり)
ハッピー・ダンシング!