ビクター・シルベスターのモダン・ボールルーム・ダンシングから「21.パソ・ドブレ」をお届けします。
第二章 実習
21.パソ・ドブレ
The Paso Doble
イギリスでパソ・ドブレの人気がでてきたのは、この踊りがプロモーターたちにより競技会に加えられるようになってからの事です。一般に踊られることはまれですが、ベーシックの簡単な動きは混雑したボールルームやレストランで踊るのに適していますし、パソ・ドブレは大陸、特にフランスでは長い間人気を保っています。パソ・ドブレはスペインの踊りで、女性はケープで、男性は闘牛士の動きを象徴的に表わしています。
●音楽
通常行進曲の2/4か行進曲の6/8拍子で演奏され、気持ちを奮い立たせるような音楽です。3/4拍子で書かれているパソ・ドブレもありますが、メダルテストや競技会で使われるのは2/4拍子です。テンポは1分間に60小節の速さです。
音の長さ
2/4の場合:一般的に1拍に対し1歩
3/4の場合:一般的に1拍に対し1歩
6/8の場合:一般的に3拍に対し1歩
これから出てくる説明の中のカウントは2/4小節を前提にしています。
●ホールド
パソ・ドブレにおけるホールドは英国スタイルのダンスのホールドに似ています。両腕は幾分高めに上げますので、その結果として二人のトップが近めになる点が異なるでしょう。プロムナードやカウンター・プロムナードで踊るフィガーではボディ・コンタクトは失われ、女性は男性から30~45㌢離れるようにリードされます。男性はしばしば両腕でパートナーをリードし、結果として腕を使った動きが出てくるため通常のダンスホールドを保ったままでいる事はできません。しかし、そうした動きはオーバーにしてはいけません。パートナーがプロムナードやカウンター・プロムナードで動いているとき、男性の左手と女性の右手は腰の少し上の高さまで下げ、腕は緩やかなカーブを描くようにします。男性は右手のホールドを緩め動きに自由を与えるようにしなければなりません。
●フットワーク
シュール・プラスやシャッセのようなベーシック・ムーブメントでは、体重はボールを少し超える辺りにおき、ヒールは床に軽く触れるか触れないかの所におきます。前進の行進するような動きのときはヒールから出ていきます。
ベーシック・ムーブメント
Basic Movement
男 性・女 性
一般的に男性は右足から、女性は左足から1拍に対し1歩踏みます。小幅の一連のステップで前進や後退(直進、あるいは、右か左にカーブして)をし、時膝は軽く緩めながら1歩ごとに(ボールの上で)体重の移動を行ないます。ステップは床にプレスを掛けて行ないます。
シュール・プラス
Sur Place
男 性・女 性
この動きはその場で何歩か体重の移動を行なうものです。両脚、両脚、両足首が近くにあるようにします。回転あり、なしのどちらでもできますが、回転を入れるときには右か左に徐々に回転するようにし、足と足首は時として僅かに離れます。
シュール・プラスはパソ・ドブレにおける基本の動きで、すべてのフィガーの前後に使う事ができます。
片足のボールから他方の足へと体重の移動をするとき足首からの動きが僅かに起こり、膝も僅かに緩め、床に押し込むようにステップします。
右足からスタート(通常男性は右足から、女性は左足から)カウント1
もう一方の足に体重が移動するとき カウント2、など
■ステップの説明頁(PDF2つ)を読みましょう。以下のステップが出ています。
- 左へのシャッセ
- 右へのシャッセ
- 左へのシャッセでのエレベーション
- エレベーションズの別の踊り方
- デプラスマン
- デプラスマンの別の踊り方
- ユイット(または8)
- アペル
- シックスティーン
- セパレーション
- フォーラウェイ・エンディング・トゥ・セパレーション
- プロムナード・リンク
MBD304-309
MBD310_316
(この項おわり)
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「モダン・ボールルーム・ダンシング」
(ビクター・シルベスター著/神元誠・久子翻訳/白夜書房)
2005年12月出版
原書名:Modern Ballroom Dancing (Victor Silvester)
世界で60万部以上の販売実績を誇る、ボールルーム・ダンス本のトップセラー。1922年の第1回世界プロフェッショナル・ボールルーム・ダンス選手権のチャンピオン、ビクター・シルベスターがダンスの歴史を遡り、スタンダード・ダンスの起源と発達を語る。実習編では、初心者にも適した踊りから上級者向けまで詳しく解説。
ビクター・シルベスターは楽団を率いていたことでも有名ですし、同様に、ストリクト・テンポを確立した人としても名が知れ渡っています。私がダンスを始めた時にも、イギリスからビクター・シルベスター・グランド・オーケストラのLPを何枚も買い求めていましたので、そのように著名で偉大な人が書かれた本の翻訳をさせて頂く機会を得たことは、この上なく光栄でした。
神元誠・久子