ビクター・シルベスターのモダン・ボールルーム・ダンシングから「14.フォックストロット」をお届けします。
第二章 実習
14.フォックストロット
The Foxtrot
現代のボールルーム・ダンスの技術の多くは、このフォックストロットから生み出されました。そうした技術の充分な知識を持つことは、向上心に富む人、競技会に出る人、あるいはダンスを専門職にしようとする人たちには不可欠のことです。
あなたがもし、この踊りに充分な時間を費やす事ができない場合、もっと簡単なスロー・リズムを踊ることをお薦めします。
本当のフォックストロットとは踊りの上手な人向けで、かなり広いスペースを必要とします。ダンスホールのように大きなフロアがある所では良く踊られますが、レストランや小さなナイトクラブのような所では余り踊りません。ですから、初心者の人、あるいは、充分なスペースがない所ではスロー・リズムの方が適しています。
フォックストロットはとりわけ「滑らかな」踊りで、ムーブメントは流れるように、ボディ・ウェイトは絶え間なく移動し続け、途切れのない動きの中でスローとクイックのリズムがブレンドされ、完全にリラックスし、かつコントロールの効いた踊りでなければなりません。それゆえに、先にお話したように、ゆったり、かつ完璧なコントロールで踊れる力量を備えた経験者のための踊りなのです。
フォックストロットの基本の動きはウォークとスリー・ステップにあり、すべてのベーシック・フィガーはこの二つの動きから成り立っています。
● 前進ウォーク
ヒップから振り出す大きな歩幅のステップからなり、足は床を掃くように出て行きます。
まず、両足を揃えた所から始めましょう。どちらかの足に体重を乗せ、もう一方の足を前方に静かに大きく出します。まっすぐ前方へヒップから出します。前方への足は体重が乗っている足のつま先を通り過ぎるまでボールが床の上を滑っていき、そこを過ぎてヒールになります。この時点で後ろになった足のヒールが徐々に床から離れます。前方の足(ムービング・フット)は歩幅一杯になるまでヒールで出て行きます。今、ボディ・ウェイトは両足の中心、即ち前足ヒールと後ろ足トウに立った中心にあります。次に前足のトウを速やかにフロアに下ろし体重を乗せます。次に、後ろ足を前方に引き寄せますが、トウからボールを使い前足の横に持ってきます。そこから次の前進運動が繰り返されます。
● 後退ウォーク
後退の足もヒップから振り出し、床の上をボールからさげ、次にトウになります。まだ体重は前の足の上にあります。つぎに前足のトウを床から離しますが、後ろ足のヒールは床から上がっているようにします。前足ヒール、後ろ足トウで立った、この時点での体重は中間にあります。軽くヒールで押しながら前足を後ろに引き寄せます。後足トウの上に体重をのせ、引き寄せてくる足が後足を通過するまでヒールが下りないようにします(通過の時点で軸足はフラットになります)。これを交互に繰り返します。こうしたウォークのステップは2拍を要し、「スロー」とカウントされます。
MEMO
ウォークのステップは単独で使われることはありませんが、すべての前進するスロー・カウントのステップは「前進ウォーク」の要領で行ない、すべての後退するスロー・カウントのステップは「後退ウォーク」の要領で行ないます。
良いバランス、ムーブメントやタイミングを作りあげるには、こうした前後のウォークを練習し、それができるようになってからフィガーの練習を行なってください。
■ステップの説明頁(PDF2つ)を読みましょう。以下のステップが出ています。
- フェザー・ステップ
- スリー・ステップ
- ナチュラル・ターン
- リバース・ターン
- リバース・ウェイブ
- チェンジ・オブ・ダイレクション
- インピタス・ターン
- テレマーク
- オープン・テレマーク
- ナチュラル・テレマーク
- ホバー・テレマーク
- ホバー・フェザー
- ナチュラル・ツイスト・ターン
- トップ・スピン
- アウトサイド・スイブル
- ウィーブ
- ナチュラル・ウィーブ
- オープン・インピタス・ターン
- ウィーブ・フロム・PP
MBD_138-156
(この項おわり)
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「モダン・ボールルーム・ダンシング」
(ビクター・シルベスター著/神元誠・久子翻訳/白夜書房)
2005年12月出版
原書名:Modern Ballroom Dancing (Victor Silvester)
世界で60万部以上の販売実績を誇る、ボールルーム・ダンス本のトップセラー。1922年の第1回世界プロフェッショナル・ボールルーム・ダンス選手権のチャンピオン、ビクター・シルベスターがダンスの歴史を遡り、スタンダード・ダンスの起源と発達を語る。実習編では、初心者にも適した踊りから上級者向けまで詳しく解説。
ビクター・シルベスターは楽団を率いていたことでも有名ですし、同様に、ストリクト・テンポを確立した人としても名が知れ渡っています。私がダンスを始めた時にも、イギリスからビクター・シルベスター・グランド・オーケストラのLPを何枚も買い求めていましたので、そのように著名で偉大な人が書かれた本の翻訳をさせて頂く機会を得たことは、この上なく光栄でした。
神元誠・久子