AT16 自分を世界の中心に置く

投稿者: | 2020年2月1日

これまでのジェレミーさんの説明を読んで、「そんなこと初めて聞いた」という部分もあったかと思いますが、そうした知識との出会いが自分の中の自分の踊りを「遥かに上手くしてくれる」秘訣になるのだと思います。闇雲に練習を繰り返すことより、ひとつの正確な知識の方が遥かにダンスを上手にしてくれるのですから。

 

私とダンスとアレクサンダー・テクニークと
AT16 自分を世界の中心に置く

ボディ・チャンスの7つの原理

1. すべての動きは相互依存の関係にある。
2. 有害な動きは概ね知らないうちに行われている。
3. 動きは健康や精神状態に大きな影響を及ぼす。
4. 頭部の動きは脊椎運動を支配する。
5. 動きは古い感覚に支配されている。新しい考えで動くことはまれである。
6. 動きは緊張を減らすことで変わる。増やしてではない。
7. 私たちの運動感覚は体内で調整される。

       7つの古典的な誤り

誤1.悩みの部分のみを考え、全体を見ない。
誤2.困った悩みだというが、実はあなたのベストフレンドです。
誤3.無意識のうちに自然な動きに反している。
誤4.どのように動くかは、何を食べるかと同じくらい重要だということを認識していない。
誤5.原因と勘違いして、症状を直そうとする。
誤6.前より頑張っても得る物が少なく、結果もついてこない。
誤7.「いい感じ」と思ってしていることが、実際には体を害していることに気づいていない。

 


ダンス――遥かにうまくなるための秘訣(3回目記事より)


子ども達はいろいろな癖を使う中で字を学習している訳ですが、そうした癖は後々に肩こりや首の痛みを誘発し、放置しておくとRSI(反復性ストレス障害/Repetitive Stress Syndrome)やOOS(職業的過度使用症候群/Occupation Overuse Syndrome)を引き起こす可能性があり、最悪の場合は書くことができなくなるケースさえあります。

これと似た体験をしているダンサーをご存じではありませんか?

腕に痛みがあると思ったら、それが徐々に首や背中に広がり、痛みがひどくなりすぎて、大好きなダンスの時間を減らし、遂には止めてしまった人を…。

 

もし、他の人と同じようにしているにも関わらず、自分にだけいろいろ問題が起こるようでしたら、そこには、それ相当の要因があると捉えるべきです。

そうです――その要因とは、「どのように」自分全体を踊りの最中に調和させているかなのです。

 

「誤2.困った悩みだというが、実はあなたのベストフレンドです」というのは、そういう意味で、自然の設計に反した動きをしている限り仕方ないのです。

問題が起こるのは、ダンスの「しかた」に十分注意が払われていないからで、そうした問題には必ず前触れがありますから、次のチェック項目から該当するものがないか調べてみましょう。

l.新しいアマルガメーションを覚えるのに時間がかかる。
2.自分が気づいていないようなことを、先生やパートナーから言われたことがある。
3.同じようなミスを繰り返す。
4.ダンスの後で特に疲れや痛みがでる。
5.スタンダードのホールドをするのにすごく努力が必要で、腕が痛くなる。
6.踊りの最中、体の中に凝りや痛みがにじみ出る。

 

どれも当てはまらなければラッキーです。「どのように」踊るかを学ぶ上で、こうした症状は必要ありませんから、あなたは踊りの質を高める方法に専念していけば、見ている人は、上達したあなたの美しい踊りを今以上に楽しむことでしょう。それでも、ボディ・チャンスの原理1と2を理解しておくことが大切です。

 

原理1.すべての動きは相互依存の関係にある

これは、何を学ぶ際にも学び方に注意を払うことが重要という意味です。何か新しいことを学ぶとき、体のいろいろな部位の使い方を考えるのは自然なことですが、個々の部位をバラバラに考えては体全体の動きを掌握することはできません。なぜなら、どこかひとつの動きというものは、その一カ所だけで起こっている訳ではないのです。脚部を動かせば頭部にも背骨にも、腕の動かし方にさえ影響を与えているのです。ですから、どこを動かすにも全体に注意を払うことが重要になってくるのです。では、全体に注意が向くようにするにはどうすれば良いのでしょう。

最初にすべきことは、自分のボディの中にも、パートナーとの間にも、はたまた、あなたを取り巻く環境との間にも意識の境目を作らないようにすることです。

 

今日からこの練習を始めてください。

スタートは、注意の向け先をひとつにまとめるところからです。

私たちは何かを意識するとき、自分の「内」と「外」に分けて考える傾向がありますが、「内」と「外」はお互いに相手を包み込んでいるものなのです。自然はそのように創られているのです。自分の「外部」に意識を向ける行為は自分の「内部」で起こる訳ですから、「意識が自分の周囲に出ていく」とは考えず、「自分の周囲に対する意識が自分の中に入ってくる」と考えるようにします。

それはちょうど、光が目から入り、音が耳から入り、臭いが鼻から入ってくるから脳が認識するのと同じように、体の意識も機能しています。人の体の中には様々な種類の受容器があり、そうした感覚受容器を経由して脳の意識の中心に到達するのです。このように、「外」からの情報は私たちの「内」からの情報と全く同じ方法で認識されています。

 

このように考える練習をすることで、物事を分けて考えるのではなく、意識をひとつにすることができるようになります。自分自身を世界の中心に置くと、体とその周囲で発生する物すべてがひとつのまとまった意識となってきます。私たちが素晴らしいダンサーに引きつけられる理由のひとつがこれで、これが、あなたが全身を使ったムーブメントを起こし、パートナーとのコネクションを感じる踊りにするための第1歩です。これができたら、2番目の原理に入って行きましょう。

 

2.有害な動きは概ね知らないうちに行われている

有害な動きの原因は、例えばステップだけのように、部分に気持ちが囚われ、全体を見失ってしまうからです。そうした人は、今から数週間、次に示す練習法でそうした習慣を正しましょう。その方法とは、

踊りながら、「これをしている間、自分の体全体は何をしているのだろう」、「総体的に、動きの質はどうだろう」、「自分自身をプツシユしていないだろうか」、「自分の体に何かを無理強いさせていないだろうか」と自問することです。

 

かつて、私の先生がこう話してくれたことがあります―― 「生徒達は思ったように体が動かないと文句を言いますが、あなたが指示した通りに体は動いているのです」と。自分の体に語りかけている、その方法に気づくことが大切で、もしかすると、あなたは自分の体にちょっと意地悪しているかも知れません。自分を叱ると、イライラしながらも、きちんとしようと無理してしまうのですが、そうすると、ぎすぎすした魅力を欠いた動きになってしまうものなのです。そんなことをしないで、ちょっと別のアプローチをしてご覧なさい。まず、自分自身に対して親切で寛容になりましょう。これだけでも、見ている人をもっと魅了する、綺麗で優雅な踊りになることでしよう。

 

次に、自分の踊りを思うときの、その考え方に注意を払ってみましょう。もしかすると、あなたはいつも体の一部から一部へと狭い範囲の中だけで考えを巡らし、全体との関連に目を向けていないかも知れません。

次の方法はそういう人にお薦めします。これは自分を納得させるのに有効な手段で、ダンスに対する全く新しい方法に目を向けてもらうことができると思います。

まず、自分の踊りをビデオに撮ります。次にビデオを見ながら、「自分で気づいていない動きや、意識していなかつた動きをしていないか」自問します(「何を」ではなく「どのように」に注意を払います)。そこで気づいたことを直ちに直そうとする前に、そこには直すべき理由があるという事をしっかり認識することが大切なのです。ダンスの中で随分と知らずに行なわれている(知らずに放置しておけば、数限りない問題を起しかねない)現象に注意を向けるようになることが、この記事の目的なのですから。

汚い踊りと魅力的な踊りの、そうした違いを生む鍵もここにあります。このことに気づき、動き全体に注意を払う練習をして行くと、あなたのダンスは劇的に向上することでしょう。他の人に自分の踊りがどう見えるか意見を求める方法もありますが、気をつけてください。その意見が正しくないかも知れませんから。

この方法を数ヶ月試してください。勿論、アレクサンダー・テクニークのレッスンを受けるのが最も早く効果的ですが、強い意志があれば一人でできないことはありません。アレクサンダー自身はアレクサンダー・テクニークのレッスンを受けていないのですから。自分でやってみようと思う人は、全体に注意を向けるところから始め、それから、自分のしている事に注意を払う、その払い方に意識を向けていってください。

 

次号ではボディ・チャンスの原理の3と4から、自然が人間の動きをどのように纏めているかを見ていくことにしましょう。それを理解することにより、何を踊るかより、どう踊るかの方が遥かに重要―― その考えに至る工程が分かりやすくなることでしょう。

(「ダンス――遥かに上手くなるための秘訣」第3回記事から)

 

 

 

 

「少しずつ何かが分かりかけてきた」 ― そんな感じを持ちながら読まれていませんか? しかもそれが、「ダンスだけではなく、生活の中でも」と。そうであれば、この記事の企画はすでに半分成功したようなものです。また、このダンスウイング連載にはプロの先生達も随分興味を持たれたようで、当時の編集部に、直接・間接的に問い合わせが届くようになってきました。 

 

第3回記事をPDFで!

新しい発見を感じながら読んでくださっている人が一人でもいるとうれしいです。

  • Dance Wing Vol. 53に掲載されたこの記事をPDFで通して読むことができます。
  • 英語の原文も紹介しています。読まれる方はPDF最後のページから逆読みしてください。
  • English text is also available in PDF attached herewith. Read from the last page in reverse way.

 

(つづく)

 

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