ボディ・チャンスに通い始めた私たち夫婦は、日常生活の中で常に「自分の体や動きを洞察すること」「自分自身について学ぶこと」を実行するようになりました。そして、互いに気が付いたことを知らせ合いました。既に誰かが気づいていることなのでしょうが、自分たちには「発見」なので楽しい気持ちになります。
例えば、
- 立っている状態から「片足を上げる」場合、「足」を上げようとするより「腿」を上げようとする方が楽に足が上がる。
- 高い所に手を伸ばす場合、「手だけが上がって行くと思う」と楽。
この気づきがあるまでは、手を上げるとき、無意識に「肘と肩」も一緒に動き出していた自分に気が付きました。ところが、「肘も肩」も静かにしたまま「手」だけが動き始めると、それまでよりも高い所に手が届くのです。「肘や肩」は意外と動きを邪魔しているかもしれないと考え始めると、「同じようなことをダンスの動きの中でしていないだろうか」と観察するようになりました。
「足よりも腿を上げようとすると楽」とか「手だけを上げる」など、たわいのない発見が自分たちのダンスの上達に繋がるとしたら、ちょっと素敵だと思いませんか? 物凄い努力をすることなく上手くなるかも知れないのですから!
お喋りはこの位にして、今回からダンスウイング53号で掲載された3回目の記事を見て行きます。
私とダンスとアレクサンダー・テクニークと
AT15 7つの古典的な誤り
ダンス――遥かにうまくなるための秘訣(3回目記事より)
1~ 2回目で、アレクサンダー・テクニークに基づく「ボディ・チャンスの7つの原理」の概要を見てきましたが、今回は最初に、そうした原理に直結する「悩み(問題・痛み・苦痛)に関する7つの古典的な誤り」を見て行きましょう。
7つの古典的な誤りとは、
誤1.悩みの部分のみを考え、全体を見ない。
誤2.困った悩みだというが、実はあなたのベストフレンドです。
誤3.無意識のうちに自然な動きに反している。
誤4.どのように動くかは、何を食べるかと同じくらい重要だということを認識していない。
誤5.原因と勘違いして、症状を直そうとする。
誤6.前より頑張っても得る物が少なく、結果もついてこない。
誤7.「いい感じ」と思ってしていることが、実際には体を害していることに気づいていない。
では、ボディ・チャンスの原理1と2を用いると、どのようにして誤1と誤2が解決・治癒されるのでしょう。
ボディ・チャンスの7つの原理 1. すべての動きは相互依存の関係にある。 |
“どのように”の重要性
新しいステップは「どのように」習いますか?
あなたのレベルが上がるにつれ、新しいフィガーやアマルガメーション、あるいは、踊りの質を高めるためのボディの使い方を習ったりしますが、そのとき、一般的には 「すること」、即ち、「新しい動きは何か」、「手足のすべきことは?」ということに考えが行きます。
それは自然なことですし必要な思考プロセスですが、同時にもうひとつ、ダンス上達に必須の秘密の工程が行われています。何だと思いますか?
それは、「何をするか」ということと「どのようにするか」ということです。
一例を挙げると、下の写真のように、字を書く練習をしている子どもの姿を見たことはあると思いますが、一人一人の形はまるで違います。
写真右の子は字の形に全神経を集中させていますが、左の子はもっと幅広いところに気を向け、力が抜けて見えます。このように、同じ書く作業でも二人の考え方は全く違っています。
ダンスでも同じで、動きと体をどのように調和させるかという点が、しばしば見落とされています。ワルツを踊っている人達は、全員が同じではありません。同じベーシックを踊っていても、見ていて楽しいと思う優雅な踊りの人もいれば、堅くて、そんなに見ていたいと思わない人もいます。
この違いこそ、(「何を」 と 「どのように」) の繊細な調和の取り方の違いであり、当然ながら、足型の違いではありません―― みな同じフィガーを使っているのですから。でも、美しく踊りたいと考えるとき、多くの人は使いたいフィガーやアマルガメーションに考えが行きがちで、美しく踊る方法までは考えていません。
あたかも写真右の子のように、踊りがこわばって見えるダンサーがいるとすれば、それは調和の取り方が希薄、かつ、不必要に緊張を増す動きをしているからで、それはボディ・チャンスの原理2、「有害な動きは概ね知らないうちに行われている」に当たります。
そうしたことが行われていることに、踊りの最中に気づいているでしょうか?
(「ダンス――遥かに上手くなるための秘訣」第3回記事から)
「全神経を集中させている」自分を観察するとき、首に力が入っていることがあります。そして、首に力が入っている状態を更に観察すると、目にも力が入っていることがあります。
そのような自分を分析できたとき、「原理4.頭部の動きは脊椎運動を支配する」話から、「いま固めている首や目が自分の動きたい動きを阻害している」ことが分かってきました。
演出として「首に力を入れる」「目に力を入れる」はあると思いますが、そうでなければ、集中することで力が入り、その結果、ダンスの動きが邪魔されては何もなりません。
「背骨が頭の後ろの方についているイメージを持っていた」私は、アレクサンダー・テクニークで背骨のてっぺんは「両耳の高さの中間部、鼻の奥の方」にあることを教わり、ひっくり返りましたが、頭が背骨の動きを支配していることを教わったことで、実に日々の生活の中で、そして、ダンスの中でそれが実感できるようになりました。
そのころお会いしたボディ・チャンスのスタッフひとり、バジル・クリッツァーさんが、自身のHPで次のことを書いていました。
・頭がラクに動けているとき、全身もラクに働きます。
・頭が固定または動きにブレーキがかかっているとき、全身も硬くなります。
これは脊椎動物すべてに備わる動きの仕組みです。
と、説明し、頭を固定しておいて、
・肩の感じはどうか?
・腕をあげると上げやすいかどうか?
・歩いてみるとどうか?
と、かんたんな実験を提唱しています。
実際にやってみると、頭を固めるていると確かにあらゆる動作がしにくくなるのが分かります。
バジルさんは楽器演奏家のために書いてますが、そのままダンスに応用できる有難い情報も含まれています。彼の現在(2018年11月)のHPは「バジル・クリッツァーのブログ」になっています。訪問すると、あなたのダンスにも役立つ情報に出合うかも知れません。
(つづく)
「私とダンスとアレクサンダー・テクニークと」目次
- AT01 不思議な出会い
- AT02 潜入調査開始!
- AT03 ショッキングな体験
- AT04 筋肉を意識的に解放する
- AT05 パートナーは二人必要?
- AT06 動きの原理を知っていますか?
- AT07 あらゆる動きはどこかに影響を与えている
- AT08 原理2と3
- AT09 頭部の動きは脊椎運動を支配する
- AT10 私も魔法を手に入れました!
- AT11 良く出来たときは案外変に感じる
- AT12 頑張らなくていい
- AT13 頑張らなくていい例文
- AT14 当てにならない感覚
- AT15 7つの古典的な誤り
- AT16 自分を世界の中心に置く
- AT17 内なるダンスに向けて
- AT18 協調運動
- AT19 動的な動き
- AT20 力まないダンサー
- AT21 さあ、実験!
- AT22 背骨の可動範囲
- AT23 失われた第6感
- AT24 判断基準が自分にある危険性
- AT25 最終話 難しいのはあなたの古い習慣
- AT26 ダンサーのためのアレクサンダー・テクニーク