日本のどこかで「より良い、より質の高いダンスを自分の中に見つけたい」と模索している人たちがきっといるに違いありません。そうした人たちにこの「私とダンスとアレクサンダー・テクニークと」が役に立つことを願いつつ、話を進めていこうと思います。
私とダンスとアレクサンダー・テクニークと
AT02 潜入調査開始!
実際にアレクサンダー・テクニークを習いに行くようになったのは2009年4月です。当時、ダンスウイングという隔月発行誌に深く関わっており、その中でアレクサンダー・テクニークを連載記事として取り上げようと密かに計画していました。
しかし、ジェレミー・チャンスさんが言うように本当にアレクサンダー・テクニークはダンスに役立つのでしょうか? 役立つにしても「どの程度」役立つのでしょう。それを体験して実感しなければ記事にはできません。
そうした思いで妻と通い始めることしましたが、正直、最初の頃はよく分かりませんでした。
私たちが通ったのは目黒の「ボディ・チャンス」です。
そこには、入門者はこれ、初心者はこれという決められたプログラムはなく、毎回、「何を知りたいか」「どんなことをしているときに体がどう辛いか」というようなことをこちらから出し、それについて考えていくのでした。
そこで毎回、目黒に向かう電車の中で「何を質問しようか」と頭を悩ますことになりました。
与えられるテーマがない形式は案外しんどいものでしたが、最終的には自分の体を見つめるにはこれが最善の方法と納得することになります。
数年後、”Dancing Beyond The Physicality”(マッシモ・ジョルジアンニ著/邦書「マッシモ・ジョルジアンニが教えるダンサーのためのメンタル・トレーニング」白夜書房) を翻訳しているとき、アレクサンダー・テクニークとの共通点を見つけました。
教える側と教わる側のことがこう書かれていたのです。
私は習いに来る生徒に、私のところに来るきっかけは何だったのかと必ず尋ねます。生徒たちの目的は何か、何を成し得たいと思っているか、それを知らなくてはならないからです。
ですから、誰かがレッ スンに来て、「えーと、スロー・ワルツをお願いします」と言ったとすると、6小節も踊らないうちに止めて、助けを乞うような目つきになることを私は知っています。
このような若者の、はっきりしない態度は理解できないこともありま せんが、一人前のダンサーの取る態度としては受け入れられません。
む しろ、私に向かって
「あなたのレッスンを受けるというより、私たちの踊りを見て頂き、その上で、私たちに欠けているものを教えて欲しいのです」
と言われるほうが好きです。
多くの場合、あなたがレッスンで何をしたいかを理解していれば、目的に到達することができるからです。
それが肉体面で直ちには可能にならないかもしれませんが、その後のレッスンを通して、目的到達のため 何をすべきか理解できるようになるのですから。
(つづく)
「私とダンスとアレクサンダー・テクニークと」目次
- AT01 不思議な出会い
- AT02 潜入調査開始!
- AT03 ショッキングな体験
- AT04 筋肉を意識的に解放する
- AT05 パートナーは二人必要?
- AT06 動きの原理を知っていますか?
- AT07 あらゆる動きはどこかに影響を与えている
- AT08 原理2と3
- AT09 頭部の動きは脊椎運動を支配する
- AT10 私も魔法を手に入れました!
- AT11 良く出来たときは案外変に感じる
- AT12 頑張らなくていい
- AT13 頑張らなくていい例文
- AT14 当てにならない感覚
- AT15 7つの古典的な誤り
- AT16 自分を世界の中心に置く
- AT17 内なるダンスに向けて
- AT18 協調運動
- AT19 動的な動き
- AT20 力まないダンサー
- AT21 さあ、実験!
- AT22 背骨の可動範囲
- AT23 失われた第6感
- AT24 判断基準が自分にある危険性
- AT25 最終話 難しいのはあなたの古い習慣
- AT26 ダンサーのためのアレクサンダー・テクニーク